196 名前:楓×プリムラ[] 投稿日:2006/03/18(土) 01:48:46 ID:1PhsceFz
「楓、熱いよぅ。」
 リムちゃんが、潤んだ瞳で、私の顔を見あげている。
「・・・変になっちゃうよ。」
 白い肌は、上気し綺麗なピンク色になり、幼い容姿にもかかわらず、女の私でさえ、くらくらしそうなほ
どの色香を放っていた。
「まさか、ここまで効き目が強いとは・・・。」
 床に捨てられている、飴の包装紙を睨みながら呟く。リムちゃんは、その飴を食べてこうなった。
事の発端は、シアちゃん、いえ、稟くん、もしかしたら、私なのかもしれない。
 とにかく、当面の問題は欲情したリムちゃんをどうするかだ。




「カエちゃん、今日家に来てくれる?」
 放課後、机の中のものをかばんに入れいているとシアちゃんが声をかけてきた。
「ええっと・・・」
「大丈夫、カエちゃんのご主人様の許可はちゃんと得てるから。」
 そう言うと、シアちゃんは、目線で稟くんに合図した。稟くんは、それに対して苦笑しながら、頷く。
「そう言うことでしたら。」
 断る理由もなく、私は頷いた。基本的に稟くんの世話をする以外は暇なのだ。
「じゃっ、行こうか。」
 シアちゃんと一緒に教室を出る。教室では、さっきのご主人様という言葉によって、大勢の生徒達(ほと
んどが男子生徒)によって、稟くんが、死刑の決まった公開裁判を受けていた。

「遠慮しないで入っちゃって。」
 遠慮しないでといわれても、仮にも、神王の家に入るのだ緊張しないわけが無い。私はできるだけ、それ
を隠し、敷居をまたいだ。
「カエちゃん、こっち、こっち。」
「待ってください。」
 シアちゃんは、緊張のあまり歩調が遅れ気味な私に構わず、どんどん先を歩いていく、私はそれを必死で
追いかけた。人様の家で、迷子になんかなったら、一生ものの恥だ。

 しばらくして、それほど距離を歩いたわけではないが、体感的には結構歩いた後、シアちゃんの部屋に着
いた。和風なつくりなのに、ベッドが置いてあるのがやけに印象に残る部屋だ。
 私は彼女の進めるがままに座り、机をはさんで対峙した。
「いきなり本題から入るけど、稟くんと何かあった?」
「えっと、稟くんから何か聞きました?」
 質問を質問で返すのは失礼だとは思いながらも、そうせざるをえなかった。確かに、今、私達の間で、問
題が発生している。しかし、それはあまり、他人に知られたくないことに分類される。
「やっぱりあるんだ。相談してみなよ。」
 シアちゃんは私の言葉から、問題が起こっていることは、察知してしまったようだ。
「・・・、その、あまり言いたくないことなんです。」
「言ってくれたら力になれるかもしれないよ。」
「気持ちは嬉しいですけど、やっぱり。」
「もし、それで駄目になって、後悔しても遅いんだからね。男と女の関係なんて、些細なことで終わっちゃ
うんだから。」
 恋愛に関しては、私のほうが稟くんと付き合っているぶん経験値は上のはずなのに、なんだろうこの異様
な説得力は。私は、だんだん不安になってきた。
 妙な沈黙が部屋を支配する。紅茶をすする音がやけに大きく響く、その沈黙に耐え切れなくなり、私は、
とうとう口を開いてしまった。
「そ、その、エッチのとき、いつも、稟くんが先に逝っちゃうんです。初めのうちは良かったんですけど、
二回目、三回目になると、稟くんが気にし始めて。この前、私が演技で逝っちゃたふりをしたときが致命
傷で、稟くんの自尊心を完璧に打ち砕ちゃったんです。そのときは、たいした事じゃないと思ってたんで
すけど、変に気まずい空気が出来て、最近は、顔が会ったらなんとなく、逸らすようにまでなってしまっ
たんです。」
197 名前:楓×プリムラ[] 投稿日:2006/03/18(土) 01:50:35 ID:1PhsceFz
 言い切って、恥ずかしさと同時に、どこかすがすがしい気持ちになれた。私はそうとう、溜め込んでい
たようだ。
 シアちゃんは、さっきからうんうん唸っている。私のために相当真剣に考え込んでくれているようだ。 
 しばらくして、シアちゃんが、おもむろに口を開いた。
「それは、深刻な問題だね。カエちゃん、早急に手を打たないと取り返しのつかないことになるよ。」
 そういわれて目の前が真っ暗になった。崩れ落ちる私を、大慌てで、シアちゃんが支える。
「大丈夫。任せて。我に秘策ありっす。」
 私を励ます意味もあるのだろう、必要以上に明るい声で、シアちゃんが宣言した。
「今回の場合、解決策は、三つ。一つ目、稟くんの早漏を直す。二つ目、稟くんに女を悦ばすテクニック
を身につけてもらう。三つ目、カエちゃんが逝きやすくなる。」
「どれも無理そうなんですけど・・・。それに稟くんは、早漏じゃないです!きっと、私が逝きにくい体
質なんです。」
「カエちゃん、まさかとは思うけど、そう言って稟くんを慰めた?」
「どうしてわかったんです?」
 その私の言葉を聞いて、シアちゃんが大仰にため息をついた。
「致命打ではないけど、クリティカル攻撃だよ。それ・・・。まぁ、ともかく、今回は三つ目の作戦でい
くっす。」
「どうやってですか?」
「簡単、簡単、やる前に、カエちゃんが、媚薬を飲めばいいんだよ。」
「そっ、そんなの、媚薬なんて手に入るわけ無いじゃないですか!」
 私は真っ赤になって抗議した。
「それが、手に入っちゃうんだよね。確かに、買えはしないけど、じゃじゃん、乙女の味方ねくろのみこ
ん。これさえ有れば作れちゃうんだから。」
 ネクロノミコンってまさか、あの、死霊秘宝?私が、声も出せずに硬直していると、シアちゃんは、や
けに明るい色合いで、かわいらしい装飾がなされた分厚い本を取り出した。それを見て、私は聞き間違い
だと判断した。
「あった、あった、これ見て。材料も血は私のを使うとして、他は全部あるし、OK。」
 シアちゃんは、開いたページを私に向けて押し付けて来た。材料を見ると、一角獣の角、マンドラゴラ、
処女の血(十五歳以上二十歳以下美少女限定)、砂糖、日本酒(芋焼酎がベスト)など、etc。
 さらには、これで意中のあの人も、あなたに欲情、性感帯も冴え渡り、あなたのことが一生忘れられな
くなります。と書かれている。
「すごいですね。でも、この薬、明らかに強力すぎな気がしませんか。」
「ちゃんと薄めて作るから大丈夫。さって、がんばるぞ。」
 シアちゃんは、そう言って台所に向かっていった。
 手伝うと言って、私も台所入ろうとしたが、素人がいると危険といって入らせてくれなかった。


「これ飲めば、すぐ逝けると思うから頑張って」
 そろそろ、夕方になろうかという頃、シアちゃんは、台所から出てくると、笑顔で小さな袋を渡してくれ
た。中を見てみると、かわいい包装紙に包まれた。どうみても、キャンディーにしか見えないものがたくさ
ん入っていた。ためしに一つ開いてみると、桃色の綺麗な色をした丸い飴らしきものがあった。
「完成図では、確か深緑の液体だった気がするんですが?」
「そんな見るからに怪しい薬を飲んでるところを見られたら、稟くんに疑われるかもしれないから、偽装し
といたっす。」
 細かいところまで気がきくなぁ、と素直に感心した。
「ありがとうございます。」
「気にしなくていいよ友達でしょ。」
「最後に一ついいですか?」
「なに?」
「この薬を薄めずにちゃんと作ったものを、私の持ってるこれのように偽装を施して、稟くんに飲ませよう
と思ったことは無いですか?」
 どうしても気になった。あの本に書かれていることが本当なら、そうすれば、稟くんは、彼女の虜になる。
「あるけど、絶対にしないと思う。私は今の、稟くんが好き、欲情して、はぁはぁしてる稟くんはたぶん好
きになれないと思うから。」
「そうですか。もう一度、ありがとうと言っておきます。」
 それから、しばらく世間話で盛り上がり、お互い夕食の準備があり、適当のところで話を切り上げ、家に
帰った。

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