悔しい。最近、私の胸の中はその思いで一杯だった。シアさんや楓さんが選ばれるのなら納得できた。シア
さんも、楓さんも魅力的な女性だったし、わたしは彼女らに比べて一歩踏み出すことが出来なかったのもある。
わたしが選ばれなかったのは仕方が無い。だが、その二人ではなく、よりにもよって、アレを選ぶなんて納得
出来ない。アレより劣っているなんて考えたくもない。
そんな想いを引きずりながら、急ぎ足で教室を後にする。あの、でしゃばり女に会いたくなかったからだ。
「今帰り?」
「ええ。」
少し出遅れたせいで、この女と遭遇してしまった。おかげで今日一日最低な気分ですごさければならない。どうしてくれる?
「あっれ〜、機嫌悪い。もしかして、放送部うまくいってない?」
「そんなことありませんよ。うまくいってます。」
なんて頭の悪い喋り方だろう?それに、馴れ慣れし過ぎる。だいたい何、その髪型は。受け狙いのつもり?
この女の全てが気に入らない。そもそも、放送部に入った理由は、あなたと会う時間を減らしたかったから
なんですけど。これを口に出せれば、どれだけ気持ちいいだろう。
「本当に?良かった。でも、他に何かあるってことだよね。よかったら相談してよ。」
「いえ、特に無いですよ。それでは、急いでいるので失礼しますね。」
それだけ言って、逃げるように私はその場を去った。ああ、本当に煩わしい。殺してやろうか?その気にな
れば三秒で灰にできる。どうせばれないし、ばれても揉み消せる。しかし、稟様が悲しむのだけは避けたいし
・・・。なんだ、結局私はなにもできはしない。