- 730 名前:プレゼント 外伝[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 15:51:31 ID:/ezAoagQ
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控えめなノックの後、しばらくして扉が開けられた。
「………稟………?」
開いた扉の隙間から、部屋の中を伺うようにして薄紫のツインテールの少女が顔を覗かせる。
まだ幼さを感じさせるものの整った顔立ちをした少女、プリムラはしばらく部屋を見渡し、奥のベットの上のふくらみに目を止めた。
ベットの上、プリムラに背を向けるようにして横になっているタンクトップ姿の黒髪の人物を見つけ、プリムラはベットの側へ近づいていく。
「……稟、寝てる……」
ベットを覗き込んだプリムラのアメジストの瞳に、赤い顔をして寝息を立てている土見稟が映しだされた。
その寝息に混じるアルコールの匂いに僅かに顔を顰めるプリムラ。
(…そういえば…稟、さっきの誕生パーティで神王と魔王にたくさん飲まされてた…)
そう、本日は土見稟の誕生日であり、学園が終わってから芙蓉家のリビングでパーティが催されていたのだった。
稟がリビングに入ると一斉にかき鳴らされるクラッカー&『誕生日おめでとう』の大合唱に迎えられ、飾り付け担当のプリムラによる、クリスマスのように華やかに飾りつけられたリビングに唖然とする稟の姿に参加者は皆してやったりの笑顔を浮かべていた。
ちなみに『お誕生日おめでとう』の文字と共に白玉、黒玉、虎玉が描かれた垂れ幕はプリムラの入魂の一筆、会心の出来栄えであり、かなりのお気に入りであった。
皆の評判も良く、他のメンバーの誕生パーティにも是非使おうという意見に、プリムラは照れを含んだ、だがとても嬉しそうな表情で微笑んだのだった。
食卓には料理上手なシア、楓、亜沙、カレハらが腕を振るって作った和洋折衷の御馳走が所狭しと並べられ、食卓の中央には豪華な合作ケーキが鎮座していた。
「最初はここまで凝ったの作るつもりじゃなかったんだけどね〜…」
「皆さんで一緒に作っているとどんどん良いアイデアが出てきまして…」
「気が付いたらウェディングケーキみたいになっちゃったの〜」
「まままあ♪」
苦笑する3人とある単語に反応してトリップする1人。
そうしてパーティが始まると、稟はソファーの真ん中に座らされ、ネリネ、シア、楓、プリムラ、亜沙、カレハに『あ〜ん』と食べさせてもらい、結局一度も自分で箸を持つことは無かった。
そんな稟に殺意と怨みの視線を向ける樹と嬉々として写真を撮る麻弓。
数日後にはその写真とその時の様子が学園中にばら撒かれ広められ、各親衛隊が武装蜂起することになるだろう。
- 731 名前:プレゼント 外伝[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 15:52:12 ID:/ezAoagQ
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そうして和やかに、そして賑やかに楽しまれていたパーティであったが、一時間ほどしてその様子は激変してしまった。
神王ユーストマ、魔王フォーベシィという名の特大の嵐が訪れたためである。
その二人と二人の持ち込んだ大量の酒類により、給仕に徹していた楓とあまり酒を勧められなかったプリムラを除くほぼ全員が壊れてしまった。
例えば、
「り〜んくん! ここあっついね〜!?」
「こ、こら、シア! こんなところで脱ぐなよ!?」
「だってあっついんだも〜ん♪ ね、稟くん、私のスタイル、どうかな? リンちゃんと比べると見劣りするかもしれないけど…」
「い、いや、これはこれで…ってそうじゃなくて! ぅあ、鼻血が…!?」
「………ままままあ♪」
半裸で稟に迫ってくるシア。後ろでは『シア、成長したな』とオイオイ泣いている神王が。
他にも、
「ご〜んべが種蒔きゃ、カ〜ラスがカァ〜♪ 土見くんが種蒔きゃ赤ちゃんがオギャ〜♪」
「…生々しすぎるから止めろ!」
「…え〜!? じゃ、土見くんが種蒔きゃリンちゃんがア〜ン♪」
「変わってねえよ!!! 俺を出すな!! ネリネも期待に満ちた目で俺を見ない!」
「………ままままあ♪」
真っ赤な顔でケタケタ笑いながら調子っぱずれの歌を歌う麻弓。
また、
「稟ちゃん稟ちゃん! ボクの作った料理どうだった?」
「はい。凄く美味かったです、亜沙先輩」
「良かった〜! …ところでどれが一番美味しかった?」
「どれって言われても…。どれも美味かったですし…」
「え〜!? 正直に言いなさい! ……あ、一番美味しかったのはリンちゃんだとか思ってるんでしょ!?」
「ナ、何ヲ、言ッテルン、デスカ!?」
「昨日稟ちゃんはリンちゃん家にお泊りして今日遅刻してしまったらしいです。今日稟ちゃんは何度も何度も腰をさすっていました。今日リンちゃんは妙にお肌がツヤツヤです。…何か反論ある?」
「………………………………………」
「た〜っぷり話を聞かせてね、稟ちゃん?」
「………ままままあ♪」
セクハラオヤジと化した亜沙に冷や汗ダラダラの稟。視線は虚空を行ったり来たりしている。ついでに無意識にまた腰をさすっていた。
- 732 名前:プレゼント 外伝[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 15:52:54 ID:/ezAoagQ
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さらには、
「さあ楓ちゃん! 俺様の胸に飛び込んでおいで! 、シアちゃんにリンちゃんもそんな顔しないで! …大丈夫! 俺様がみんな平等に愛してあげるよ!」
「…樹、観葉植物に向かって何ブツブツ言ってるんだ? とうとう頭がイッたのか?」
「おや、元彼の稟じゃないか? どうしたんだい? そんな悔しいからって分身しても3人はもう俺様に夢中なんだよ。はっはっは…!!」
「……分身…? いや、その前に俺はこっち。お前、完璧に酔ってるだろ?」
「失礼な!? 俺様の眼鏡はブランド物だよ?」
「いや、誰も眼鏡の話なんか…」
「度も合ってるさ! 北斗七星の脇にある星までくっきり見えるしね!!」
「は? 北斗七星の脇に星なんか見えないぞ!?」
「………まぁ……」
意味不明な言葉を口走る樹に?を浮かべる稟。
それからそれから、
「稟ちゃん! 誕生日プレゼントは何が欲しい? パパ、稟ちゃんの為なら何だって用意してあげるよ? 魔界の王位でも核兵器でも何でもどんとこいだよ!」
「……じゃ、じゃあ“俺○ば”をお願いします」
「それは………難しいな…」
「難しいの!?」
「………………………」
沈痛な表情の魔王にショックを隠し切れない稟。カレハまで無言で俯いている。
などなど…。
稟もかなりの量のアルコールを口にしたものの、相変わらず周りに振り回されていたので普段とほぼ変わりがなかった。
そうして一時間ほどしてパーティは終了。
何時の間にか素面に戻っていた神王と魔王により皆が送られた。
稟は片付けをする楓を手伝おうとしたのだが、
「私はそんなに飲んでいないので大丈夫です。それより稟くんはお休みしてください」
という言葉に甘えて部屋に戻ったのだった。
- 733 名前:プレゼント 外伝[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 15:53:37 ID:/ezAoagQ
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相変わらず酒臭い寝息を立てながら眠りつづける稟を前に、プリムラは首を捻っていた。
(楓に様子見てきてって言われたけど…よくわからない…。…顔真っ赤だけど、よく眠れてるみたいだから…大丈夫?)
取り合えず見たままを伝えようと判断し、部屋を出ようとしたプリムラだったが、不意に稟が寝返りをうったのを見て動きを止めた。
「……んが……んむぅ〜……」
仰向けになった稟はだらしなく口を開けて胸の辺りを掻いている。
口の端から涎が見え隠れするその姿は百年の恋も一気に冷めそうな光景であるはずなのだが、シアやネリネ、楓やカレハらが見れば『可愛い』と表現するだろうし、亜沙や麻弓辺りが見れば『もう、しょうがないんだから〜』と呆れながらも優しい目で見つめるのであろう。
プリムラはだらしない稟の姿をきょとんとして見つめていたが、やがて少しだけ表情を崩してクスリと微笑った。
(…布団、掛けてあげよう…)
寝返りをうった時に蹴ってしまったのか、ずれてしまった掛け布団を直してあげようとしたプリムラだったが、稟の下半身を見て動きが止まってしまった。
(…稟…パンツ一丁……)
アルコールによる体の火照りの為か、稟は上着とズボンを脱いでタンクトップとトランクスだけの姿で眠っていたのだった。
年頃の少女二人と共に暮らしている以上、そういった点については普段から注意している稟なのだが、流石に今日は大量のアルコールによる酔いに負けてしまったようだった。
ふとベットの隣の机を見れば、椅子の背もたれに稟のズボンが、そしてその上に上着が重ねられていた。
稟が背もたれに上着を掛けているのはまま見受けられるので、気にしていなかったのだ。
これが床に脱ぎ捨てられていたのならプリムラももっと早く気づいたのだろうが。
「…………………?」
どうしていいかわからずただ稟のパンツ姿を見つめていたプリムラが、ふとあることに気付いた。
稟のトランクスの前から何かが少しだけ見えていたのだ。
(………アレって………)
脳裏に浮かぶ幾つかの単語。
全て同じモノを指す言葉である。
知識としては知っているものの、現実に見るのは勿論始めてである。
(…よく見えない…)
好奇心と心の奥から湧き出してくるなにやらモヤモヤしたものに突き動かされ、プリムラはそっと手を伸ばした。
- 734 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 15:54:56 ID:/ezAoagQ
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とりあえずここまで。
一部文章中に不穏当な表現があったことをお詫びいたします。
よし、これで大丈夫! 怒んないでねNavelさん!
けど実際どうなんだろうね、俺○ば。