甘ったるい雰囲気を醸し出す二人きりの部屋。しかし、あたしの頭に浮かぶ言葉は
気持ち悪い それだけだった。
「稟くん、稟くん」
「くっ・・・」
嫌悪感、嘔吐感、無力感、+の思考は一切ないのに、あたしは嬌声を上げなが
ら、好きでもない男に身体をゆだねている。
「いいよ・・・膣内にだしても・・・」
あたしは何を言っているのだろう?膣内だって!?冗談じゃない。
しかも、目の前の男はそれを真に受けて、腰の回転速度を上げていく。
「あっ、あああっ・・・・」
あたしは、より、あえぎ声を強めた。よっぽど気持ちいいらしい。口の端によだれを垂
らしながら自分で腰を振り始めた。
「で、でるっ」
情けない声を上げて、稟は射精し、ぐったりとして、あたしの身体に崩れてきた。密着
するからだ。重なる息遣い。もし、あたしが表にいたら視界にある、椅子
で、おもいっきり彼の後頭部を殴り飛ばしている。
(・・・・・ごめんね)
頭の中に響いてくる声。シアの声だ。情事が終わって、私に気を回す余裕が出来たらしい。
(気にしないで)
感情を全て殺した声であたしは答える。
(・・・・・ごめんね)
(あんたが謝るじゃない)
そう、シアに罪はない。所詮あたしは居候の身の上だ。それに、自業自得だ。いくら、シア
のためとはいえ、((私も稟が好きだから気にしないで))こんなくだらない嘘をついてしまったのだから。
本当は嫌だった。キスをするのも、抱き合うのも、今では、顔を見るのすら嫌になってしまっている。
それでも、シアの中にいるいじょう。シアの半身とも言える彼を避けることは出来ない。
(もうすぐだよ。もうすぐ幸せになれるから)
シアは、そう言った。意味がわからなかった。確かに、あたし達は、いつも一緒にいる。しかし、それだけだ。
何一つ相手のことなど理解していていない。少なくとも、私は理解しようとしていない。遠まわしに言わ
れてもわかるはずがない。
(だから、だから・・・・・・ごめんね)
また、ごめんか・・・・。あたしは返事をすることすらめんどくさくなって、ようやく来た眠気に身をゆだねた。
あと一時間早くこうできたら、きっといい夢を見れたのに。それが、今の私の最大の関心だった。