741 名前:仮初の代償[sage] 投稿日:2006/08/22(火) 01:10:26 ID:5xLW5rBR
 甘ったるい雰囲気を醸し出す二人きりの部屋。しかし、あたしの頭に浮かぶ言葉は 
気持ち悪い それだけだった。
「稟くん、稟くん」
「くっ・・・」
 嫌悪感、嘔吐感、無力感、+の思考は一切ないのに、あたしは嬌声を上げなが
ら、好きでもない男に身体をゆだねている。
「いいよ・・・膣内にだしても・・・」
 あたしは何を言っているのだろう?膣内だって!?冗談じゃない。
 しかも、目の前の男はそれを真に受けて、腰の回転速度を上げていく。
「あっ、あああっ・・・・」
 あたしは、より、あえぎ声を強めた。よっぽど気持ちいいらしい。口の端によだれを垂
らしながら自分で腰を振り始めた。
「で、でるっ」
 情けない声を上げて、稟は射精し、ぐったりとして、あたしの身体に崩れてきた。密着
するからだ。重なる息遣い。もし、あたしが表にいたら視界にある、椅子

で、おもいっきり彼の後頭部を殴り飛ばしている。

(・・・・・ごめんね)

頭の中に響いてくる声。シアの声だ。情事が終わって、私に気を回す余裕が出来たらしい。

(気にしないで)

感情を全て殺した声であたしは答える。

(・・・・・ごめんね)

(あんたが謝るじゃない)

 そう、シアに罪はない。所詮あたしは居候の身の上だ。それに、自業自得だ。いくら、シア
のためとはいえ、((私も稟が好きだから気にしないで))こんなくだらない嘘をついてしまったのだから。
 本当は嫌だった。キスをするのも、抱き合うのも、今では、顔を見るのすら嫌になってしまっている。
 それでも、シアの中にいるいじょう。シアの半身とも言える彼を避けることは出来ない。

(もうすぐだよ。もうすぐ幸せになれるから)

 シアは、そう言った。意味がわからなかった。確かに、あたし達は、いつも一緒にいる。しかし、それだけだ。
 何一つ相手のことなど理解していていない。少なくとも、私は理解しようとしていない。遠まわしに言わ
れてもわかるはずがない。

(だから、だから・・・・・・ごめんね)

 また、ごめんか・・・・。あたしは返事をすることすらめんどくさくなって、ようやく来た眠気に身をゆだねた。
あと一時間早くこうできたら、きっといい夢を見れたのに。それが、今の私の最大の関心だった。

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