- 962 名前:絶稟のお料理万歳! 四日目[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 22:24:19 ID:mQ1Za6zQ
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楓と餅つき?を愉しんだ翌日の夕暮れ、土見稟は噴水前のベンチで一人黄昏ていた。
「…昨日の俺はどうかしてた。どこぞの国王のように奇声をあげたり悪代官になったり、流されるままに楓と肉欲に溺れ、夜中まで楓とひたすらいちゃいちゃいちゃいちゃしているなんて、どう見ても俺のキャラじゃない行動ばかりだ…」
負のオーラを発しながら、頭を振りながら一人ブツブツ呟く稟。
「…そうじゃない、そうじゃないんだ! 俺は、土見稟という男は真面目で朴訥、不器用ながらも誠実で、鋼のような自制心と忍耐力を持った、ちょっぴりお茶目なクールガイだった筈…! そう、そうだよな!? 昨日までの俺は本当の俺じゃなかったんだよな!?」
「……ママー! あそこのお兄ちゃん何してるのー?」
「シッ! 見ちゃいけません!! あのお兄ちゃんは自分にしか見えない妖精さんとお話してるのよ!」
突如として拳を振り上げ立ち上がり、熱弁を振るい始める稟に、遠巻きに眺めていた鼻を垂らした幼児が指差して、母親に注意されていた。
「………と、とにかく、ここ最近の浮かれきった俺にグッバイ! 今日から元の俺に戻っちゃうぜ、HAHAHA! 略すと“今日から俺HA”だ!!」
「…………ママー…」
「見ちゃ駄目って言ってるでしょ、まさと!? 心の病が伝染っちゃうから!」
「………褌マスクーーーーーー!!!!」
「「ぎゃ〜〜〜〜!!??」」
身に覚えの無い罵詈雑言?ばかりに、突然奇声をあげて親子に踊りかかる稟。自己を発現できずに悩む少年の行動はいつも暴走気味です。
………………通報されますた…。 by稟
- 963 名前:絶稟のお料理万歳! 四日目[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 22:25:29 ID:mQ1Za6zQ
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「……もう、帰ってくるんじゃないぞ」
「はい、お世話になりました…」
三十分後、出所のやりとりのような会話をしてようやく稟は交番から離れることが出来た。
「…あれ、目から水が…。これは、涙? ううん、違う! 泣いてない、泣いてなんかないんだからね!? 夕陽が目に染みただけなんだから!!」
ツンデレ風に自分に言い訳しながら涙を拭う稟。もう少し交番にいた方が良かったのかもしれない。彼のためにも、世間のためにも。
だがそんな変質者、もとい稟に声を掛ける人物がいた。
「あれ、稟ちゃん? どうしたの、こんなところで?」
「あ、亜沙先輩? い、いえ、全然、ちっとも、まったく、な、何でも、ないッスよ!?」
中学時代からの先輩である時雨亜沙の登場に稟はどもりまくる。
そんな怪しすぎる稟をジト眼で見つめつづける亜沙だったが、しばらくして溜息を一つついて相好を崩した。
「な〜んか怪しいけど、ま、いっか。…ね、それより稟ちゃん今日これから暇だったりしない?」
「え、今日ですか? 特に用事は無いですけど…?」
「ホントに? じゃ今日ボクん家でご飯食べていかない? 新作料理にチャレンジしちゃおうと思ってるんだ!」
「…………ご飯…料理、ですか…」
ニコニコ笑う亜沙とは対照的に口篭もる稟。引き攣ったままの笑顔を浮かべ、額にはでっかい汗が一筋流れていた。
昨日、二日前、三日前と料理関係で壊れてしまった自分を思い出し、心の警報がけたたましく鳴り響いているらしい。
(……そういや全ての元凶はこの人なんだよな〜)
確かに全ての始まりはシアに“〜の秋”を利用する事を教えた亜沙にあるとも言える。だが少女達の策略に悉く嵌りつづける自分自身の学習能力と節操の無さが最大の原因であることには気付かない振りをしていたい稟であった。
「あ、あ〜、よそ様の団欒をお邪魔するわけには…」
『さっき元の俺に戻るって誓ったばかりだし…』(稟の心の声)
「あ、今日ウチのお母さん達は夫婦水入らずのデート中なので問題なしです! …それによそ様ってもう他人ってわけでもない癖に〜」
後頭部を掻きながら遠慮する稟に対し頬を染めて流し目をくれながら囁く亜沙。
「…ぅぐっ!? いや、でもほら楓がもう俺の夕食作ってるかもしれませんし…」
『あ゛あ゛〜!? 理性が、理性が欲望に卍固めを掛けられて…!? 頑張れ! 頑張るんだ、俺の理性〜!』
「あ、それなら大丈夫! さっき偶然楓に逢った時そのこと伝えたら快く了承してくれたから!」
必殺の言い訳もあっさり破られ、窮地に立たされる稟。
「いや、でも、その…」
「稟ちゃん、そんなにイヤ? ボクのこと、嫌いになっちゃった? ボクの身体、飽きちゃった?」
「そんなことありえません! 何ならこの場で五発でも十発でも祝砲?あげて見せますよ、奥さん!」
『そんなことありえません! 俺が亜沙先輩を嫌いになるなんて世界が崩壊してもありませんから!』
しゅんとなってしまった亜沙に対し、真剣な顔で叫ぶ稟。
だが、叫んだ後でアレ?と首を捻ってしまう。
「り、稟ちゃん、こ、こんなところで、そ、そんな事大声で言われても…!」
「…………ああっ!? つい本音と建前が反対に!?」
真っ赤になる亜沙と頭を抱える稟。つーか奥さんって誰だ。
そんな稟に忍び寄る青い影。つーかお巡りさん。
「貴っ様ー! このような公共の場で女性にそんな破廉恥なことを叫ぶなど、さっきまでの反省の態度はフェイクかー!?」
「ああっ!? そう言えばここは交番の真ん前だった!?」
「り、稟ちゃん、こっちこっち、早く逃げるわよ!」
「待てー! 逃がさんぞー!! 大人しくお縄を頂戴しろー!」
こうして稟&亜沙とお巡りさんの果てしない追いかけっこが始まったのだった。
- 964 名前:絶稟のお料理万歳! 四日目[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 22:26:20 ID:mQ1Za6zQ
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その後、どうにかしてお巡りさんを撒くことに成功した稟と亜沙は時雨邸の玄関にてようやく一息つくことができた。
「もう、稟ちゃんのせいでしばらくあの周辺歩けないじゃない!」
「………はい、返す言葉もございません。本当に申し訳ない」
プリプリ怒っていた亜沙だったが、がっくり肩を落す稟にやれやれと肩を竦め、優しくその頭を撫で始め、呟く。
「……でも、ちょっと嬉しかったな、ボク」
「…えっ?」
「ちょ、ちょっとだけだからね!? ちょっとだけ!」
真っ赤になる亜沙に稟は少しだけ救われた気分になって亜沙を見つめる。
「亜沙先輩…」
「り、稟ちゃん…」
ゆっくりと近づいていくお互いの顔。
だが唇が触れるか触れないかといったギリギリのところで、ぐぅ〜という緊張感の欠片も無い音が稟の腹部から響きだした。
「…プッ! もう、稟ちゃんたら〜! …すぐ準備するからご飯にしよっか?」
「…はい、すいません」
吹き出す亜沙と羞恥に赤く染まった顔で後ろ頭を掻く稟。
「やっぱり最近の俺って本能に忠実すぎる気がするな〜。このままじゃ妖怪食っちゃ寝になっちまいそうだ。………土見稟の名において命ずる! 出でよ、理性!」
亜沙がキッチンに向かうのを見送りながらそんな事を呟く稟。そこまでしないと理性が呼び出せないのは人としてどうなのだろう?
そもそも稟の場合妖怪食っちゃ寝というより、(女を)食っちゃ、(女と)寝、する妖怪なので“淫魔”と言うほうが正しいと思われる。そのうち触手とか出しそうだ。
その後、たっぷりと亜沙の新作料理を堪能した稟はお腹をぽんぽん叩きながらソファーに深く腰を下ろした。
「…いや〜食った食った。余は満足じゃ〜♪」
「どこのバカ殿様ですか、あなたは?」
一人悦に入っていた稟に洗い物を終えた亜沙がエプロンで手を拭きながら可笑しそうにクスクス笑う。
そんな亜沙の仕種に妙にドキッとしてしまう稟。
「……どしたの、稟ちゃん?」
「……い、いえ、何か、こうしてると、その、新婚夫婦みたいだな…と思いまして…」
稟の呟きに真っ赤になって黙り込んでしまう亜沙。稟の方も自分で言った台詞に恥ずかしくなったらしく、同じように赤くなると黙って視線を彷徨わせて頬を掻く。
「……………り、稟ちゃん、アレ、飲んじゃわない? な、何だかそんな気分なんだ、ボク!」
しばしの沈黙の後、亜沙が突如として大きな声をあげ、食器棚のある部分を指差す。
そこには亜沙の父親のものであろう酒類がいくつか並べられていた。
「アレ…ですか? まあ俺は構いませんけど…いいんですか?」
「だいじょぶだいじょぶ! それじゃ、用意してくるね!」
捲し立てるようにそう言いきり、真っ赤な顔のままキッチンへ向かう亜沙に稟はぽかんと口を開けたまま見送る事しか出来なかった。
- 965 名前:絶稟のお料理万歳! 四日目[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 22:27:04 ID:mQ1Za6zQ
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そうして数分たった後、パタパタとスリッパの音をたてて日本酒の瓶を抱えた亜沙が帰ってきた。
「り、稟ちゃん、おまたせ〜」
「あ、亜沙先輩!? そ、その格好は?」
「し、新婚夫婦といえば、やっぱりこれよね〜!?」
口調とは裏腹に顔を真っ赤に染めてぎこちなくはにかむ亜沙。
その身は靴下とエプロン以外何も身につけていない、所謂裸エプロンといわれるものだった。
「あ、あ、亜沙せんぷぁ〜〜い!!!」
そこからの稟の行動は素早かった。一瞬にしてパンツ一丁になると亜沙に向かってダイブしてその身に組み付くと胸に顔を埋めながら床に押し倒したのだ。
「きゃあっ!? 冷たっ!? ちょ、稟ちゃ、待って! ぁん! ちょ、ダメっ! ……いい加減にしなさい!」
手に持っていた日本酒の瓶で稟の頭をどつく亜沙。ゴヅンッという鈍い音を立てて後頭部にめり込む瓶の底に流石の稟も動きを止める。
「イデデデデデ…! 何するんですか、亜沙先輩!?」
「何するんですかはこっちの台詞! まったく、いきなり襲い掛かってくるなんて思わなかったわ」
「すいません。『何て格好してるんですか』と言うはずが、あまりのフェロモンに我を忘れて……」
「……ちょっと効果がありすぎちゃったみたいね。気をつけないと…。それより、まずはこっち!」
そう言ってさきほどの凶器を持ち上げる亜沙。
稟としてはアルコールなど摂取しなくても亜沙の姿だけで充分酔っ払えたのだが、しぶしぶ頷くと亜沙から身を離した。
(…教えてくれ樹、俺達はあと何分耐えればいい? 俺はあと何人美女と美少女を堕とせばいいんだ!? Navelは何も教えてくれない…!)
苦悩の表情を浮かべる稟。ちなみに“俺達”というのは稟と稟の下半身の分身のことである。
そんな稟に亜沙はやれやれと溜息をつき、コップに注いだ日本酒を口に含み、稟に唇を重ねて稟の口内に流し込んできた。
「…んんっ!? んん、ん………」
「…ん……っ! り、ん、ひゃん……」
お互いの口腔内に酒が無くなっても唇を離さずに、僅かに残ったアルコール分を分け合うように舌を絡ませる二人。
「…ぷはっ…! 美味しい、稟ちゃん?」
「……はい。何だかいつもより回るのが早く感じます」
「…じゃあ、もっと美味しく飲む方法教えてあげよっか?」
照れたように笑う稟に亜沙は嬉しそうに、そして悪戯っぽく微笑むと膝をぴっちりと合わせるようにして正座するとエプロンの下をぺろんと捲りあげ、股間の窪みに酒を注ぎ始めた。
「こ、これはもしや……!?」
「わ・か・め・ざ・け…!」
恐れおののく稟に悩ましげな視線で囁く亜沙。
日本酒の中でゆらゆら揺れる亜沙の陰毛にごくりと唾を飲み込む稟。
そして、
「さ、たっぷりと召し上がってくださいね、旦那様?」
「き、きえっ! きええええええええええっ!!!(訳 あ、亜沙! 亜沙ーーーーーーーーーー!!!)」
顔面から色欲の海に飛び込む稟であった。
絶稟の愛の(裸)エプロン 四品目“甘え上手な上級生のわかめ酒” 完食!!
- 966 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 22:29:02 ID:mQ1Za6zQ
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以上です。
相変わらずアフォな文で申し訳ない。しかも今回今までで一番長くなっちゃったorz
当初は前回のあとがきで書いたように稟の暴走を控えめにしようと思っていたんですが、
新スレの>>23氏に先を読まれてしまいこのままではおもしろくない、ということで前回同様稟を壊す事にしました。
真面目な稟のファンの方、ごめんなさい。全部新スレの>>23氏が悪いんですwww
次回最終回のプリムラ編です。