38 名前:絶稟のお料理万歳! 最終日[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:02:29 ID:hMvwBBlh

「………お兄ちゃん、大丈夫?」
「…あ、ああ、全然大丈夫だぞ!? ちょ、ちょっと頭が割れそうなくらいにズキズキガンガンして胃のあたりがムカムカしておまけに立ってるのも辛いほどに腰が痛いだけで…。うん、全然大丈夫だ!」
「それ全然大丈夫じゃないよぅ!」
心配そうなプリムラの頭を優しく撫でながら笑う稟。だがその表情は冬の日本海のように真っ青、というか黒色に近く、生まれたての仔馬のように足元もおぼついておらずにいた。
(うう…昨日調子に乗って飲みすぎ&ヤリすぎた…! 完璧に二日酔い+腰痛だぁ…)
青い顔で前日のことを思い返す稟。
そう、前日時雨邸で亜沙から“わかめ酒”を振舞われた稟は欲望とのシンクロ率400%を達成し、暴走状態となって亜沙を貪り尽くしたのであった。
それだけなら(夜の)汎用人型決戦兵器と言われる稟にとってそこまで深刻な問題ではなかったのだが、稟の身体には二日前の楓、三日前のネリネ、四日前のシアとの連戦による負傷(噛み跡やら爪跡)と共に疲労が確実に蓄積されていたのだ。
全身を襲う筋肉痛と崩壊寸前の腰を抱えた稟の身体はまさに満身創痍という状態であり、そのような状況でこの最後のシ者、もといプリムラとのデートを迎えたのであった。
「だ、大丈夫だって! ちゃんとデートの前にソル○ックとキャ○ジン飲んでサロ○パス貼ってボラ○ノール塗ってきたから!」
「お、お兄ちゃん!? ボラ○ノールって痔のお薬じゃあ………!?」
「あ!? 間違えた! ボラ○ノールじゃなくてバン○リンだった! …な、何だよ、その目は!? ホ、ホントだぞ!? ホントに言い間違えただけだぞ!!」
驚愕の新事実が発覚しかけたような気がするが、彼の名誉のためにこれ以上の追及は勘弁してあげて欲しい。
「そ、それはともかく!! 今日は前から約束してたんだからプリムラが気にすることなんてないんだぞ!?」
「…身体中からシップの匂いさせながら気にするなってのは無理だよぅ…。あとその不思議な踊りみたいなぎこちない動きはやめて。何だか魔力が吸い取られるような気がするから」
「う゛っ!? …あ、ほ、ほらプリムラ! あっちにクレーンゲームがあるぞ!? 行ってみようぜ! な!? な!?」
プリムラの冷静なツッコミと冷たい瞳に言葉に詰まってしまう稟。視線を彷徨わせ、偶然目に付いた雑貨屋の入り口に設置されたクレーンゲームに救いを求めてロボットダンスで駆け寄っていった。
稟のワザとらしい誤魔化しにプリムラは大きく溜息をつくものの、稟に合わせてやる事にしたらしくゆっくりと歩みを寄せた。
「お、一個だけネコのぬいぐるみがあるぞ、プリムラ!」
「あ、本当だ! …ねえ、お兄ちゃん…」
「みなまでいうな! 任せろ!」
クレーンゲームのケースの中には様々なぬいぐるみが積み重ねられており、そんな中で一つだけ灰色のネコ(アメリカンショートヘアー種だと思われる)のぬいぐるみが顔を出していたのだ。
ネコに目がないプリムラは目をハートマークに変えてそのぬいぐるみを見つめ、物欲しげに稟を見上げた。
そんなプリムラの視線を受けやる気になった稟は腕まくりをして財布を取り出し硬貨を入れ、クレーンを睨み始める。
「よーし! いい感じいい感じ! そのまま行けー!」
「あっ! 掴んだ! 掴んだ! …………ああっ!?」
39 名前:絶稟のお料理万歳! 最終日[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:03:17 ID:hMvwBBlh
「…本当にごめんな、プリムラ」
「だからもういいって言ってるじゃない」
噴水前のベンチに座り込んで項垂れる稟に苦笑しながらその頭をポンポン叩くプリムラ。その手の中にはクマを象った小さなぬいぐるみが収まっていた。
先ほどのクレーンゲームで稟はネコのぬいぐるみを狙っていたのだが、惜しいところで落してしまい、どうやってもクレーンが届かない場所にやってしまったのだった。
一応何度かチャレンジしてみたのだがやはり成功せず、仕方がなく取りやすそうな場所にあったこのクマのぬいぐるみをゲットしたわけである。
プリムラはネコの事は残念であったものの、このクマもそんなに悪くないと思っていた。中々可愛らしいし、それに何より稟が自分のために取ってくれたものであったからだ。
だが稟の方はというと、先ほどからずっと気にしているらしく落ち込んだままであった。
「お兄ちゃん、私、このクマさん気に入ったよ? それに、楽しかったし!」
「……そっか? なら、まあいいか。…ま、あのネコにはいずれまたチャレンジだな!」
「うんっ!!」
ようやく元気を取り戻した稟にプリムラも満面の笑みを浮かべる。
「…ところで、そのクマには名前つけないのか? 白玉や黒玉みたいに」
「う〜ん、そうだねえ…。白クマだから〜…………フッくん!!」
「何故?」
そんな楽しい?やり取りをしながら稟とプリムラがそろそろ帰宅しようかと家路へ向かっていると、前方に喫茶店フローラが見えてきた。
「…そういえばここのケーキ美味しかったね」
「ん? ああ、そうだな。……また買って帰るか?」
「うんっ!!」
稟の提案にプリムラは満面の笑みを浮かべて頷き、二人は店内へ入っていった。
「いらっしゃいませ〜」
「…あれ? 今日はカレハ先輩入ってないのかな?」
「…う〜ん。そうみたいだね〜」
顔見知りの先輩の姿を探して店内を見渡すものの、どうやら今日は休みらしくカレハの姿は見つからなかった。
少々残念に思いながらも稟は先ほどのぬいぐるみのお詫びの意味も込めて普段より多くのケーキを買ってフローラを出た。
40 名前:絶稟のお料理万歳! 最終日[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:04:01 ID:hMvwBBlh
「はい、お兄ちゃん。あ〜ん!」
「…あ、あ〜ん」
「美味しい?」
「……あ、ああ、美味いよ。ありがとな、プリムラ」
芙蓉家のリビングで稟はケーキの刺さったフォークを突きつけられ、恥ずかしそうに、だが満更でもなさそうな表情で口を開いた。
プリムラはニコニコ笑いながら稟にケーキを食べさせ、その様子を嬉しそうに眺めていたが、稟がケーキを飲み込んだのを見計らうと無言で瞼を閉じ、口を開いた。
「…? プリムラ?」
「…あ〜ん」
どうやら次は自分に食べさせろと言っているらしい。稟は苦笑しながらフォークを手に取りケーキを一口サイズに切り分けてプリムラの口元に持っていった。
「……あっ!? こぼれた!?」
だがケーキがプリムラの口内へと入る寸前、フォークを深く突き刺していなかった為かケーキが欠け落ちてしまった。
「きゃん!? ちょっと服の中に入ったー!」
地肌に感じる異物の感触に慌てふためくプリムラ。立ち上がって服をパタパタさせ、何とかケーキのくずなどを落そうとするものの中々出てこないらしく躍起になっていた。
その場で踊ってるようにも見えるプリムラの姿に稟は思わず吹き出してしまい、プリムラに睨まれる。
「やっと取れた…。………お兄ちゃん! 今のわざとでしょ!?」
「へ? …違う違う! わざとじゃないよ!」
「ホントに!? ………まさかケーキと一緒に私も食べようとか思ったんじゃないの!?」
「…ぶっ! ………そ、そんなこと考えてねーよ!」
プリムラの言葉に一瞬脳内でリアルにその光景を想像してしまって硬直してしまうものの、稟は慌てて首を振った。
だがプリムラは疑いの眼差しを解こうとせずにしばらく稟を冷たい目で睨んでいたが、不意に悪戯っぽい表情を浮かべて口を開いた。
「本当に? 本当に考えてなかった? もし正直に言えば……させてあげても、いいよ?」
「させて…って?」
「私をケーキでデコレーションして食べてもいい…ってこ・と!」
幼い顔立ちに似合わぬ妖艶な流し目で稟を見つめるプリムラ。
そんな色っぽいプリムラに思わず生唾を飲み込む稟。
(マジでか!? ……い、イヤイヤ! 俺はそんなこと考えてなかった! 考えてなかったんだ! ちゃんとそう言って誤解を解かないと! 嘘言っちゃダメだ! 正直になるんだ、俺!!)
苦悩する稟。頭を振って迷いと躊躇いを消し去って真剣な顔でプリムラに向き直り、ゆっくりと口を開いた。
「……………………………はい、考えてました。ゴメンナサイ。ヤらせてください」
「正直でよろしい!」
「わ〜〜い、やった〜! ………ってアレ!? か、身体が勝手に…!?」
信じられないような表情で自分の身体を見つめる稟。どうやら消し去ってしまったのは理性と道徳の方だったらしい。どこまでも自分(というか本能)に正直な男、いや益荒男(ますらお)である。
41 名前:絶稟のお料理万歳! 最終日[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:04:42 ID:hMvwBBlh
「お兄ちゃん、いいよ…?」
テーブルの上に横たわったプリムラ。その身体には先ほど買ってきた様々なケーキがぐちゃぐちゃになって塗りたくられていた。
「それじゃあ、いただきます。まずは…」
そう言ってプリムラの左胸に被りつく稟。
「ひゃぁんっ!」
「はむはむ…。うむ、生クリーム…ショートケーキだな。ここにイチゴもあるし…」
「あんんっ! そ、そんなに大きくないよぅ…。せめてさくらんぼって言ってよ…」
どこの事を差しているかはご想像にお任せします。
「はむはむ…。お、こっちはチーズケーキか。生の肌に乗ってるチーズケーキ……おお、これこそレアチーズケーキ!」
「お兄ちゃん、サムイよ…」
「うるさい。自分では上手い事言ったつもりなんだ」
誤魔化すように舌の動きを激しくする稟。
「はむはむ…。白い肌が上に塗りたくられたチョコレートケーキの黒色を良く映えさせているな。こうやって舌で引き伸ばしてみたりして〜」
「や〜ん! くすぐったいよう!」
プリムラの白い肌をキャンバスに見立て、舌を筆代わりにしてチョコレートの線を引いていく稟。
「はむはむ…。お、これはマロンケーキか。……あれ、こっちにもクリが……!」
「ああぁ〜っ! そ、そこはダメェ〜!」
どこの事を差しているかは(ry
「お兄ちゃぁ〜ん。もうダメ、我慢できないぃ! シテぇ…!」
「はむは……分かったよ。…じゃプリムラ、俺のに手を添えて?」
「…? うん。こう…?」
きょとんとしたままとりあえず稟の言葉に従うプリムラ。
稟は自分も同じようにモノに手を添えるとゴホンと一つ咳払いをする。
「では、二人の愛の共同作業、ケーキへの入刀で〜す!」
「お、お兄ちゃん………オジサンくさ、…ああああぁっ! …あん、あんっ、ああっ!」
暴走機関車のように猪突猛進する稟。こうなってはもはや誰も彼を止められない。哀れプリムラは動けなくなるまで稟に貪られる事となった。


絶稟の今、ドキッ!ごはん “義妹のケーキ盛り合わせ” 完食!!
42 名前:絶稟のお料理万歳! 最終日[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:05:20 ID:hMvwBBlh
プリムラケーキを平らげて一息ついていた稟は不意に玄関の方が騒がしいことに気付いた。
「…楓が帰ってきたのか? …いくらなんでもこの状況はマズイな…。おい、プリムラ、起きろ」
そう言って眠っていたプリムラを揺する稟。稟自身は既に服を着ていつも通りなのだが、プリムラの方は未だ全裸で所々ケーキのくずや生クリーム等を身体につけたままだったのだ。
「う〜ん。もう、もう無理だよ〜、お兄ちゃ〜ん…」
か細い声でそう呟き、起きようとしないプリムラ。
「違う。そうじゃなくて……」
「あ、やっぱり稟くんリムちゃんとシテたんだ〜」
稟の声をかき消すようにして発せられた明るい声。振り向くとリビングの扉が開かれてシアが顔を覗かせていた。
全裸のプリムラを見ても全く動じないままにこにこ笑いながらリビングに入ってくるシア。
それだけでなく、その後ろからネリネ、楓、亜沙が順番に入ってきた。
「い゛っ!? み、みんな来てたのか!?」
慌ててプリムラの脱いだ服をかき集め、プリムラの裸体を隠そうとする稟。だが特に誰も気にしていないようで、和やかに喋っていた。
「ほ〜ら、言ったとおりでしょ? 稟ちゃんのことだからまだまだ元気だって!」
「そ、そうですね。このところ毎日でしたからお疲れだと思ったんですけど…流石稟さまです!」
「は、はい。私の時も稟くん本当に凄かったですから…」
上から亜沙、ネリネ、楓の台詞である。そして四人を代表してシアが稟に向きあい、微笑みながら問い掛けてきた。
「ね、稟くん? どうだった? 私たちからのおもてなし。稟くんの秋、“食欲の秋”を満喫してくれた?」
「あ、ああ。そりゃもうたっぷりと…」
引き攣った笑顔でそう答えるしか出来ない稟。そんな稟にシアたちはやったあ、と喝采をあげていた。
そして、
「ねえ、稟くん。実は私たちも秋を満喫したいんだけど、手伝ってくれないかな?」
「て、手伝うって…? ていうかみんなの秋って?」
「勿論“食欲の秋”に決まってるじゃない!」
シアの言葉に恐る恐る尋ねる稟にきっぱりと言い放つ亜沙。
「へ!? そ、それって…?」
「今度は私たちが稟さまにご馳走して頂きたいと思いまして…」
にこにこ微笑んでいるネリネ。他の三人もうんうん頷いている。
「お、俺に何を…?」
「そ、その、私たちに、稟くんの……お、おいなりさんを…!」
楓がもじもじしながら告げる。四人の視線は稟の股間に向けられていた。
「こ、これは俺のおいなりさんだ!」
慌てて股間を両手で隠す稟。だが四人の目はそれまでのほんわかした目から狩人のそれへと変わり、じりじりと稟ににじり寄ってきた。
おまけに背後でプリムラが四人と同じオーラを纏わせながら起き上がったのが分かった。
「「「「「いただきまーす!!!」」」」」
稟に飛び掛る五匹の雌豹。
はたして稟の運命や如何に!?





「フォオオオオオオオオオッ!!!!! クロス・アウッ!(脱衣)」
やっぱり絶倫だ、コイツ。
43 名前:絶稟のお料理万歳! 最終日[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:05:57 ID:hMvwBBlh
後日
「土見くんおはよ……ってど、どうしたの!? ちょっと見ない間に痩せ、ていうかやつれた?」
教室に入ってきた稟を見て驚愕する麻弓。そこにはげっそりとやつれきった、別人のようになった土見稟がいた。
「…あ、ああ。ちょっと、“食欲の秋”でな…」
麻弓の問にそれだけ答えると稟はふらふらと杖をつきながら自分の席に向かい、倒れ込むようにして座り込んだ。
「どうして“食欲の秋”で痩せるのよ……?」
当然の疑問を浮かべる麻弓。だがその答えを返してくれる者は誰もいなかった。
ふとドアの開く音に教室の入り口を見やると、シア、ネリネ、楓の三人が入ってきていた。
「お! シアちゃんたちだぜ! 相変わらず可愛いよな〜!」
「ホントホント! 俺このクラスで良かった〜!」
「っていうか何かいつもより綺麗じゃね? 何か輝かんばかりって言うか…」
「ほんとだ。何かあったのかな? ああ〜、やっぱり土見の野郎はいいよな〜!」
「全くだ!」
そんなクラスメイト達の呪詛が机に突っ伏している稟の後頭部に延々と突き刺さりつづけることとなった。
44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2006/11/17(金) 20:06:42 ID:hMvwBBlh
以上です。
未だかつてここまで稟を貶めた作品があっただろうか?いや、ない!………ゴメンナサイorz
書いてるやつがアフォなオサーンだから仕方無いの。変態仮面大好きだし…。
とりあえずこのシリーズはこれで終わりです。
サブキャラ期待してくださった人多かったですけど、これ一応五人で一つのコース料理のつもりだったんでこれ以上増やせそうにないんですよね。
シア(魚料理)→ネリネ(肉料理)→楓(汁物)→亜沙(飲み物)→プリムラ(デザート)
あと増やせるとすれば米かパンだけどそんなのどうやって絡めれば良いかワカラン!
まあ外伝として稟の串で貫かれる亜麻、リコリス、プリムラ(無口)というだんご三兄弟ならぬ実験体三姉妹も考えていたんですが、単なる替え歌にしかなりそうになかったんでやめました。

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