353 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 21:29:25 ID:2g3mCbib
素人作の稟×シア&キキョウでも需要はあるでしょうか?
あるなら投下できますが。
355 名前:353[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:31:13 ID:2g3mCbib
とりあえず、需要はあるようなので駄文かもしれませんが投下しますね。
あと、えちぃシーンはありませんのであらかじめご了承ください。
356 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:32:04 ID:2g3mCbib
「それじゃあ、今日の放課後は光陽祭の出し物を決めるぞ。早く決まればその分早く帰れるから、各自で考えておくように。」
秋だなぁ、と実感するようになったころのある朝のホームルームでの紅女史の一言は、光陽祭が近づいてきていることを告げていた。

「それじゃあ、今年の光陽祭は何をするか。」
そんなわけで、いつものごとく屋上で昼飯を食べていた俺たちの話題は自然と今年の光陽祭の出し物となっていた。
「でも、こういうのって何をすればいいの?」
こういった文化祭は初めてのシア、キキョウ、ネリネはやはり考えが浮かばないらしい。
「とりあえず、喫茶店とお化け屋敷派はお約束なのですよ。」
「まあ、あとは少数派ながら占いもあるね。」
こういったお祭り騒ぎに目が無い麻弓はこの何かと騒がしいメンバーの中でも特に楽しそうにしている。
「それでは、去年の稟さまのクラスも喫茶店だったのですか。」
「でも、樹と麻弓がいてそれは無いとあたしは思うけどな〜。」
生真面目なネリネは、去年俺たちが普通のことをしたと思ったらしい。しかし、麻弓と相通じるものがあるのか、キキョウは逆にネリネの予想を否定した。まあ、正にその通りなのだが。
「去年は、コスプレ衣装のレンタルをしたんですよ。」
「コ、コスプレ衣装のレンタルですか。」
「大方、樹のアイディアでしょ。」
「もちろんさ。文化祭という非日常的空間だからこそ、開放的になる美少女にコスプレをしてもらう!いや〜、去年のアレは大当たりだったね。」
「でも緑葉くんのことだからなんでもありだったんでしょ。」
「いえ〜、さすがに担任が紅女史だったので露出が多いのは出来なかったのですよ。」
「それでも樹のアイディアだとばれたら即禁止だろうからあらかじめクラス内で根回しはしたけどな。」
それを聞いていた3人は少し乾いた笑いを浮かべていた。とはいえそういった俺自身、楓と桜をカメラ小僧から守るので忙しかった去年のことを思い出していた。
「とはいえ、これだけ綺麗どころがそろっていたら喫茶店でも十分人はあつまるのですよ。」
「ん〜、でもそれじゃああまり面白くないよね。」
357 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:33:02 ID:2g3mCbib
たしかに、この顔ぶれなら喫茶店でも話題になるだろうが、シアの言うとおりただの喫茶店ではではつまらない気もする。
そんなふうに、俺たちが考えあぐねていると
「それならコスプレ喫茶なんてどうだい。」
と、樹が提案した。
「あ〜、それいいかも。私それがいいな〜。」
「それも面白そうなのですよ。」
「あたしもさんせ〜い。」
「で、でもそれは少し恥ずかしい気がするのですが…。」
「大丈夫ですよ。それほど奇抜な服ばかりじゃありませんから。それに、私も去年すぐなれちゃいましたよ。」
「そうなのですか稟さま。」
「まあ、確かに最初は恥ずかしいかもしれないけど、皆すぐ慣れてたからそんなに不安にならなくても平気だぞ。」
「そ、それならいいかもしれませんね…。」
最初はコスプレに不安そうだったネリネも、俺や楓が去年の体験を話すと、やる気を出してくれたみたいだった。
「それならその方針で俺様と麻弓で根回ししてOKかな?」
そして、この場にいる全員が賛成ということを樹が確認すると全員が頷いた。
「頼んだぞ樹。」
「任せなよ稟。それじゃあ俺様と麻弓は一足先に失礼させてもらうよ。麻弓、男子の方は任せたよ。」
「任されたのですよ。それじゃあ、お先に〜。」
そう言うと樹と麻弓は早速根回しへと向かった。2人はいつもの悪巧みをする時の笑顔をしており、それを見ていたシア達も乾いた笑いを浮かべたまま2人を見ていた。
そして根回しはすぐに終わったのか、俺たちが教室に戻ると2人は手を突き出して親指を立ててきた。
無論、放課後にはこうなることを予測していた紅女史がため息をつくなかものの数分でコスプレ喫茶に決まり、衣装は麻弓や樹といった顔の利く有志が調達することも決定した。
358 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:33:54 ID:2g3mCbib
「いや〜、こうなるともう当日が楽しみよね。」
「なんせ、今年は俺様に稟、楓ちゃんに加えてシアちゃん、キキョウちゃん、リンちゃんもいるからね。もう入れ食い状態さ。」
「ちょっと緑葉くん、なんで私が含まれてないのよ。」
「いやね、麻弓の場合胸があっ。」
「ふふふ〜、後でじっくり聞いてあげるからね。」
そう言って麻弓は樹を縛りだした…、って、何処から出したんだそれ。
「それにしてもコスプレって楽しそうだよねぇ。実は、私一度やってみたかったんだ。」
「さすがに普段からするには少し気が引けるもんね。」
「そういえば、稟さまはどんな衣装は着たのですか?」
「あ〜、それ私も気になるな。」
「ねえ稟、その写真ある?」
そういわれても俺は積極的に写真に写ることは無かったから、正直あるか無いかはよくわからなかった。
「え〜、期待を裏切るようですまないんだが、たぶん無いと思う。」
「そうなのですか…。」
余程期待していたのか、3人は残念そうにしている。
「そんなことありませんよ。稟くんの写真ならちゃんとありますよ。」
「えっ、ホント?」
「本当なの楓?」
「楓さん、そうなのですか?」
落ち込んでいた3人は予想外の楓の一言に驚いたようだった。
「あれ、でも楓そんな写真持っていたか?」
「はい。麻弓ちゃんから貰った稟くんの写真集にちゃんと入ってますよ。」
「俺の写真集って、…アレかー!」
正直あの日は楽しかったのだが、最後のアレだけはあまり思い出したくなかったのですっかり忘れていた。むしろ忘れていたかった。
とはいえそんな俺の願いは、
「ねえねえカエちゃん、それ私にも見せて見せて。」
「あたしも見たい〜。」
「わ、私も…。」
この3人の前ではかなうはずも無かった。
「いいですけど、私買い物に行かなきゃいけないので今日はちょっと…。」
「それなら、今度の休日に衣装合わせ兼土見くん写真鑑賞会なんてどうかしら。」
そんな麻弓の意見が却下されることなどありえるはずもなく、俺は半年前の悪夢の再来を覚悟した。
その後、楓の買い物に荷物持ちを申し出たのだが、
「稟くんは先に帰っていてください。」
と、いつものごとく却下された。
359 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:35:41 ID:2g3mCbib
そして日曜日。朝から芙蓉家にやってきた女性陣はリビングで
「これが土見くんのコスプレした姿なのですよ。」
「稟さま、たくましいです…。」
「きゃー、稟くんかっこいいー。」
「これはかっこいいというより、ワイルドってかんじよね。」
「…稟ばっかり…。」
と、その内容を知り尽くしている楓と麻弓の解説のもとシア達は俺の写真集に見入っている。
ちなみに、俺は自分の写真を一緒に見るのが恥ずかしかったので、新聞を読みつつ時間を潰していた。
それから数十分後、全部見終えたのか楓が写真集を自分の部屋へ置きに行った。
「さて、土見くん写真集の鑑賞も終わったので本日のメインイベントに移るのですよ。」
そういうと、麻弓は持参した袋の中から見慣れない服を取り出し、シア達に渡していく。
「ねえ麻弓ちゃん、この服って…。」
「あたしもあまり見たこと無いんだけど。」
「いえいえ、この顔ぶれだとありふれた衣装では役不足なのでこの麻弓=タイム、本日は最高の衣装を用意させていただいたのでまずは着てほしいのですよ。と、いうわけで土見くんは少し部屋の外で待っててもらえるかしら。」
「それとも稟はあたし達の着替え見たい?」
「さすがにそれはないぞ…。」
そういって廊下で待つこと数分、麻弓に入っていいと言われたので部屋に入るとシア達が着ていた衣装は俺が予想もしなかったものだった。
「どうです、土見くん。シアちゃん、キキョウちゃん、リンちゃん、楓のアイドルバージョンは?」
シア達が着ていたのは流通しているようなコスプレ衣装ではなく、今売り出し中の美少女アイドルの衣装そのものだった。
「あ、あの、どうかな稟くん。」
「へ、変じゃない?」
「どうでしょうか、稟さま。」
「り、稟くんどうですか。」
双子でメイドが売りのユニットの衣装を着たシアとキキョウが、歌唱力が売りの娘の衣装を着たネリネが、大和撫子系の娘の衣装を着た楓が少し恥ずかしそうに俺に聞いてきた。
「い、いや、正直似合いすぎてて似合ってるとしかいいようがない。」
俺がそういうと4人とも安心したのか、ほっとため息をついた。
「それにしても麻弓、この衣装どこから調達したんだ。」
「それは秘密なのですよ〜。あ、もちろん18着全部揃ってるわよ。」
そう言うと麻弓は他の衣装を次々と袋から出して並べ始めた。
おいおい、ほんとやばいことはしてないよな。
360 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:36:27 ID:2g3mCbib
「ねえ麻弓、18着あるならまだ他にもあるんだよね。」
「え、もちろんあるけどそのメイド服気に入らなかった?」
「そんなことはないけどできれば他のがいいの。」
「ごめんね、麻弓ちゃん。」
わざわざ選んでくれた麻弓に申し訳ないと思っているようだったが、2人にはそれ以上の何かがあるようだった。
「もちろんいいけど。…それじゃあ、これは?」
麻弓もそれが分かったのか、別の服を選び出した。
今度は18人の内、演歌が専門の2人の和服にミニスカという衣装だった。
いくら神王のおじさんの私服が着流しだからってそれは安直だろ、と思っていたが
「あ、これならいいっす。」
「あたしもこっちの方がいいな。」
2人とも思いのほか気に入ったらしい
「リンちゃんと楓はそれでいい?」
「あ、はい。私はこれでかまいませんが。」
「私もこれでいいですよ。」
ネリネと楓はこれでいいとのことなので、4人の衣装はひとまず決定した。
それにしてもシアとキキョウはどうして他のがいいって言ったんだ?

その日の夕食の後、
「なあ、楓。」
「なんですか稟くん。」
「シアとキキョウはなんで別の衣装に替えてほしかったんだろうな。」
「そう言われればそうですね。どうしたんでしょうか。」
思い切って楓に聞いてみたが、どうやら楓にもその理由は分からないらしい。
「プリムラは分かるか?」
「…分からない…。」
「そっか、ならいいよ。ありがとな、プリムラ」
そういって頭を撫でてやるとプリムラは「んっ。」と言って少しくすぐったそうだった。
それにしてもメイド服か、…正直似合ってたよなぁ。
361 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:37:45 ID:2g3mCbib
その後もメニュー決めや仕事の分担も順調に進み、無事光陽祭当日となった。
「というわけで皆、準備は終わったかしら?」
今は朝の最終準備中であとは着替えるだけ、となったが麻弓と樹だけはいつの間にか着替えを終えていた。
そんな麻弓と樹の衣装は、麻弓は去年紅女史が着ていたもの、樹は白の学生服のような衣装を着ていた。
「皆お待たせ〜。」
そんな中、先に着替えを終えたシア達が教室へとはいってきた。
シア達の衣装を見たクラスメイトは全員時間が止まったようにしている。
「とっておきは最後までとっておく物なのですよ。」という麻弓の意向により、シア達の衣装は樹を含む他のクラスメイトには今日まで秘密にされていたからだ。
このことをあらかじめ知っていた俺にとっても、それはやはり眩しすぎる光景だった。
「俺様と結婚してください。」
「ごめん、あたし達稟一筋だから。」
いち早く復活した樹が早速口説きにかかったが、キキョウの容赦ない一言であっさり撃沈された。
「ところで麻弓、後どのくらいでお客さん来るの?」
「あと、10分もしたら一般の人も入場可能になるから、そうしたら忙しくなるのですよ。」
「う〜ん、早く始まらないかな〜。」
「で、ですがやはりすこし恥ずかしいです…。」
もともと積極的なシアやキキョウはもう楽しむ気満々だが、少々内気なネリネとしてはまだ恥ずかしいらしい。
「そういえばネリネ、魔王のおじさんはちゃんとプリムラを連れてきてくれるのか。」
「あ、はい。昨日の検査結果もよかったとのことなので、ちゃんとリムちゃんも来れますよ。」
「それなら安心だな。」
というのも、プリムラは3日前から定期健診で魔界に帰っているので、魔王のおじさんが今日迎えに行き、そのまま光陽祭に連れて来てもらうことになっている。
「それにしても、稟くんの服もかっこいいっす…。」
「う〜ん、悪い虫が寄ってきそう。」
ちなみに、シアとキキョウが評した俺の衣装は燕尾服に白いスカーフという、いわゆる執事が着ているような服だった。
何でも麻弓のイチ押しらしい。
『え〜、それでは時間になりましたので……。』
そんな話をしていると光陽祭の開始を告げる放送が入ってきた。
「それじゃあ皆、準備はいい?」
『おー!』
麻弓の掛け声に対するクラス全員の返答が放送の終わりに重なり、校舎にも大勢の人が入ってきた。
するとまもなく廊下が騒がしくなり、他のクラスの掛け声も聞こえてきた。
「それじゃあ麻弓、先頭は任せるよ。」
「お任せなのですよ。」
どうやら大の祭り好きの麻弓が先陣をきるらしく、入り口の前で待機している。
362 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:38:57 ID:2g3mCbib
「ねえねえカエちゃん。」
「シアちゃん、どうかしましたか?」
「確か今日は楓のお父さんも来るんだよね。楓のお父さんてどんな人なの?」
「そう言われてみれば、私達は楓さんのお父さまにはお会いしたことがありませんね。」
実はシア達の衣装を決めた夜、おじさんから電話があったので光陽祭のことを話すと、出張中にもかかわらず有給を使ってでも帰ってくると言い出し、昨日本当に帰ってきてしまったのだ。
『はっはっはっ、去年のことがあるから今年は無理やり有給をとってきたぞ。』
そういって笑うおじさんの手には最近出たばかりの一眼レフカメラが握られていた。
去年のことがよほど悔しかったらしい。
「そうですね、なんて説明すればいいんでしょうか…。」
なんせあのおじさんだ、唐突に聞かれたこともあって楓も即答はしにくそうだ。
『ガラララッ』
「いらっしゃいませー、喫茶『Navel』にようこそー。」
と、そのタイミングで最初のお客さんがやってきたので俺達も入り口の方を向くと、
「待たせたな楓、稟くん。」
「お、お父さん?」
そこには、楓が今まさに説明しようとしていたおじさんが立っていた。
そしておじさんが教室に入ってくると、その後ろから
「いよう、シア、キキョウ。2人ともちゃんとやってるか。」
「調子はどうだい、ネリネちゃん。」
「稟、来た…。」
「お、お父さんやお母さん達も?」
「それに、お父様にお母様も一緒なのですか?」
神王のおじさんに魔王のおじさんとその奥さん達、それにプリムラも入ってきた。
「って、おじさん達どうして一緒に来てるんですか。」
「いや、それが早く来すぎてしまったらしくてね、校門の前で待っていたのだよ。そうしたらこちらの方達の話題に稟くんと楓がのぼったのでね、話しかけてみたらお隣さんだと言うし、気も合ったので一緒に来たのだよ。」
「そ、そうなんですか…。」
「え、え〜と、とりあえずお席にご案内しますのでこちらへ…。」
「と、その前に楓の写真を撮ってしまっていいかね?」
そういって、おじさんは写真を撮り始めたが、神王のおじさんと魔王のおじさんにも頼まれていたらしく、楓だけではなくシア達の写真も撮っていた。
もちろんそれですむはずも無く、最後には俺とのツ−ショットも撮っていた。
そして、ひとまず満足したらしく麻弓に席へと案内されていった。
「え〜と、答えるの遅くなっちゃいましたけど…。」
「あー、皆まで言わなくてもいいわよ楓。」
「ど、どんな方なのかよく分かりましたから。」
「まるで私のお父さんや魔王のおじさまみたいな人だったね…。」
そう言って俺達は乾いた笑いを浮かべていた。
とはいえその中で一番目だっていたのは、おそらくおじさんよりもセージさんの方だろう。
コスプレ喫茶に来て接客されるメイドさんの図、というのは先にも後にもこれだけだろう。
363 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:40:42 ID:2g3mCbib
その後は休む間もないほどの大盛況振りで、交代の時間になったころにはもうヘトヘトだった。
「まさかあんなにも盛況だとはな…。」
「つ、疲れたねー。」
「これがまだ続くと思うと、ゾッとするわね。」
ひとまず仕事から解放された俺、シア、キキョウの3人は行くあても無く廊下を歩いていた。
「ところでこの後はどうする。休憩時間は結構あるぞ。」
「う〜ん、お腹も空いたしまずは何か食べたいな。」
「あたしも〜。早く何か食べたいわ。」
「それじゃあ、屋台でも見て回るか?」
「さんせ〜い。」
「それじゃあ、さっそくレッツゴー。…そうだ、えいっ。」
すると突然キキョウが俺の左腕に抱きついてきた。
「って、キキョウ!?」
「えへへー、稟も手をつなぐよりこっちの方がいいでしょ。」
キキョウはそういうと俺の腕により強く抱きつき胸を押し付けてきた。
「あ〜、キキョウちゃんだけずるーい。それじゃあ私も、えいっ。」
そう言ってシアも抱きついてきた。
両腕に2人の柔らかいものが押し付けられて、俺としては嬉しくも非常に恥ずかしい状態だったのだが、2人の嬉しそうな顔を見ているとこのままでもいいかと思った。
とはいえ、そんなことをしてもらっていれば行きかう人の視線がとても痛かった。
364 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:41:21 ID:2g3mCbib
俺達は屋台が並んでいるグラウンドへとやってきたが、昼飯どきのピークは過ぎたらしく、ほとんど待つことも無くお好み焼きをはじめとする、屋台の様々なものを買うことができた。
「それじゃあどこで食べるか。」
「ねえ稟、あそこのベンチか空いてるよ。」
「あっ本当だ。ねえ稟くん、あそこで食べよ。」
「そうだな、他に無さそうだしあそこにするか。」
「それじゃあ稟くん、早く行こ。」
そのベンチは日当たりのいい場所にあったので、少し寒くなってきたこの時期にして思いのほか暖かく、休憩にはもってこいの場所で自然と食も進んだ。
「なあ、シア、キキョウ。」
「どうしたの稟くん。」
「まさか、変なものでも混じってた?」
「いや、そういうことじゃなくてな。」
せっかくの機会なので、俺はあの疑問を直接聞いてみることにした。
「この衣装のことなんだけど、2人ともどうしてあのメイド服はいやだったんだ?」
「え、えーと、それは…。」
「んふふー、知りたい?」
キキョウの問いに俺は正直に頷いた。
「それじゃあ、稟は光陽祭の翌日に何か予定ある。」
「いや、特に無いけど。」
一般にも開放される文化祭は大抵休日に重なりその翌日は休みとなるが、それはこのバーベナでも同じだった。
「それじゃあ、光陽祭の終わった次の日あたし達の家に来て。そうしたら教えてあげる。」
「それって、シア達の家じゃなきゃだめなのか?」
「う、うん。だめかな稟くん?」
「いや、それなら喜んでおじゃまさせてもらうよ。」
俺がそう言うと、2人はその回答がとても嬉しかったらしく笑顔で両手タッチをした。
「あ〜よかった。これで一安心ねシア。」
「うん、よかったねキキョウちゃん。」
う〜ん、悪いことじゃ無さそうだが2人は何かたくらんでいるみたいだが、一体何なんだ?
「さて、これで稟の疑問も解決したことだし早く残り食べちゃお。」
「あ、ああ。そうだな。」
「それじゃあ稟くん、はい、あ〜ん。」
「あーっ、シア抜け駆けは卑怯よ。はい稟、こっちもあ〜ん。」
「そ、それは嬉しいんだが2人同時はかんべんしてくれ。」
その後、シアとキキョウは終始嬉しそうでそれから俺が食べたものの内、9割以上は2人にあ〜んで食べさせてもらった物だった。
365 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:45:28 ID:2g3mCbib
その後、昼飯を食べ終えた俺達は他の校舎内を歩いていた。
無論、2人は俺の両腕に抱きついたままで、またもや行きかう人の視線が痛かった。
「それじゃあ2人はどこか行きたい所はあるか?」
「う〜ん、めぼしい所は結構回ったたしまだ何かあるかなぁ。」
「ねえねえ稟くん、あれはどう?」
そんな時、シアが何か面白そうな看板を指していた。
「手芸部のぬいぐるみ展か。」
「へぇ〜、結構面白そうね。」
「どう稟くん。面白そうでしょ。」
「そうだな。それじゃあここにするか。」
早速会場となっている教室に入るとそこには先客がいた。
「ん、あれは桜か?おーい、桜。」
俺がそう呼びかけると桜はこっちを向くと少し驚いた顔をしたが、すぐに俺たちの方へとやってきた。
「やっほー、久しぶりだね稟くん。元気だった?」
「それなりにな。そういう桜も元気そうだな。」
「私はこれがとりえだからね。…ところで稟くん、こちらは?」
桜はシアとキキョウを交互に見て「誰?」といった顔をしていたが、それはシアとキキョウも同じらしく桜と同じような顔をしていた。
「ああ、そういえば紹介がまだだったな。俺の右腕に抱きついているのがリシアンサスで、左腕に抱きついているのが妹のキキョウだ。まあ、2人ともいわゆる神界のお姫様なんだが、2人ともあまりお姫様扱いされたくないから、普通の友人感覚で話してやってくれ。」
ひとまず桜に2人を紹介した。
「それでシア、キキョウ、こっちは八重桜。俺と楓の幼馴染だ。」
「はじめまして、リシアンサスです。シアって呼んでね。」
「妹のキキョウでーす。」
「あ、はじめまして、八重桜です。え〜と、それじゃあシアちゃん、キキョウちゃんでいいの?」
「うん、いいよ。」
自己紹介も終わると3人は楽しそうに話し始めた。
とはいえ共通の話題と言うと俺くらいのものなので、話の内容は俺のことばかりだった。
「それにしても、あの噂って本当だったんだね。」
「…正直どんな噂かは予想がつくがどんな噂なんだ。」
「え、えーとね、『神界のプリンセスが、神にも悪魔にも凡人にもなれる男におとされた』っていう噂なんだけど…。」
その噂の3人が今まさに噂どおりの光景を目のあたりにして、桜は乾いた笑みを浮かべていた。
まあ、普通はこういう反応しめすよな。
「ところで、2人ともさっきからずっと桜の方を見てるけどどうしたんだ。」
「え、私何かついてる?」
「ううん、違うっす。」
「ついてるといえば、その通りなんだけど…。」
シアとキキョウにしては珍しく、力の無い声で答えたので2人の視線を追ってみると、…ああ、そうことか。
「うう、またしても負けたっす…。」
「どうして神様ってこんなに不公平なの…。」
「え、えーと稟くん、2人ともどうしちゃったの?」
「あー、あまり気にしないでくれ。麻弓ほどでないにしても2人とも気にしていることなんだ。」
「そ、そうなんだ…。」
麻弓のことを出しただけで、桜は俺が何を言おうとしたのか分かったらしい。
相変わらず鋭いなぁ、桜は。
「そういえば、楓にはもう会ったのか?」
「ううん、これから。このこ達を堪能してから行く予定。」
「そっか。それじゃあ、俺達はそろそろ休憩が終わる時間だから先に失礼させてもらうよ。」
「うん、また後でね。」
「ああ、それじゃあな。ほら、2人とも行くぞ。」
俺は落ち込んだ2人を連れて、教室へと戻った。
366 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:46:16 ID:2g3mCbib
その後は人づてに聞いた人も来始めてのか、午前以上に忙しく入店時間制限を設けるほどになった。
そのため、午後になってから来た亜沙先輩にいたっては
「もう、1時間も待たされるなんて思ってもみなかったわよ。まあ、ここには学園のトップクラスが男女で集まってるからしょうがないか。」
などといっていたが、あとでカレハ先輩に聞いたところによるとその中には俺も含まれていたらしい。
そして最後のミスコンでは、まあ予想していた通りシア、キキョウ、ネリネ、楓がそろって上位を独占した。
それだけですめばよかったのだが、そのインタビューで楓が去年と同じコメントをしたのをきっかけに、シア、キキョウ、ネリネも楓と同じようなコメントをしたので今年の光陽祭も去年と同じく鬼が俺1人の鬼ごっこになる、と思ったが、
「稟さまに危害を加える人は、私が許しません!」
「稟になにしてるのよー!」
という具合に、真っ先に俺に向かってきた集団がネリネとキキョウの魔法で吹き飛ばされたことで、鬼ごっこは未遂?に終わり今年の光陽祭は幕を閉じた。
367 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:47:03 ID:2g3mCbib
そしてその翌日、シアとキキョウに呼ばれていた俺は例のチャイムをならし、いつものように神王のおじさんが出ると思っていたら
「はーい、どなたですか?」
「あ、あのー土見ですが。」
「ああ、稟くんね。今開けるからちょっと待っててね。」
出たのは、珍しくシアとキキョウのお母さんの誰かがだった。
えーと、この声はリアさんだっけ?
「はい、稟くんどうぞー。」
そんな風に考えていると目の前の門が開いたので、まずはおじゃまさせてもらうことにした。
玄関に上がらせてもらうと、そこにいたのはやはりリアさんだった。
「いらっしゃい、稟くん。今日はせっかくの休日なのに、シアちゃんとキキョウちゃんが無理言っちゃってごめんなさいね。」
「いえ、俺も予定もありませんでしたから平気ですよ。ところでシアとキキョウは?」
「2人ならこっちで待ってるからついて来て。」
そう言ってリアさんが歩き出したので、俺はその後について行ったが妙に静かだった。
「あのー、今日は神王のおじさんはいないんですか?」
いつもなら真っ先に出てくるはずの神王のおじさんだが、今日は全く姿を見せないのでリアさんに聞いてみた。
「それがね、神ちゃんったら今日も稟くんと朝まで飲むぞー、なんて言ってたから今封印しているところなの。」
「そ、そうなんですか。」
「ええ、だから稟くんは心配しなくて大丈夫よ。」
368 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:48:42 ID:2g3mCbib
そんなことを言っているうちに、ある部屋の前でリアさんが立ち止まり声をかけた。
「シアちゃん、キキョウちゃん、稟くんが来たけど準備は出来た?」
「あっ、お母さん?うん、できたよ。」
「りーん、入ってもいいよー。」
「それじゃあ稟くん、ゆっくりしていってね。」
そう言い残してリアさんは1人戻って行った。
「稟くーん、早く早く。」
「早くしないと、鍵閉めちゃうよ。」
「あ、ああ。それじゃあ入らせてもらうよ。」
シアとキキョウに急かされるままに部屋に入ると、いつぞやのメイド服を着た2人がいた。
「稟くん、いらっしゃーい。」
「ほらほら、早く座って。」
そこには、この家には珍しい洋風のテーブルと椅子が置かれており、俺はキキョウに促されるがままにそこへと座らされた。
「2人ともそのメイド服はどうしたんだ?」
「えー、稟忘れちゃったの?」
「光陽祭の衣装決めの時に麻弓ちゃんが持ってきた服だよ。どう、似合ってる?」
「忘れてなんかいなぞ。それによく似合ってるぞ、うん。」
それはお世辞でも何でもなかった。
普段はこういったフリルやヒラヒラした服をあまり着ない2人だからだろうか、こうしていると新鮮なものがあった。
「いや、俺が聞きたいのはそのメイド服のことじゃなくて、2人がどうして着ているかなんだが。その服あまり気に入ってなかったみたいだから…。」
「え、そんなことないよ。」
「この服可愛いもんねー。」
「それじゃあ、なんであの時別の服にしたんだ?」
俺としてはごく普通の疑問を口にしたつもりだったが、2人にとってはそれが意外だったらしく、ポカーンとして俺の方を見ていた。
「もしかして稟くん…。」
「あたし達が違う服にした理由分からないの?」
「…恥ずかしながら…。」
その返事を聞いた瞬間、2人は盛大なため息をついた。
「稟が鈍いのは十分知っていたけど…。」
「さすがにこれはひどいっす…。」
369 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:50:14 ID:2g3mCbib
そういう2人にさっきまでの元気さはなく、シアにいたっては目に涙を溜めていた。
さすがに、俺に原因があるというのはわかっていたので、2人に声をかけようとすると、
「稟くん!」
「稟!」
「は、はい。」
「稟くんに1回だけチャンスをあげるをあげるね。」
「今からあたし達の出す質問に素直に答えること。いい?」
「わ、分かりました。」
俺は2人の鬼気迫る勢いに言われるがままにうなずいた。
「それじゃあいくよ。私とキキョウちゃんが今着ている服は?」
「メ、メイド服。」
「よろしい。次、あたし達が光陽祭でやったのは?」
「コスプレ喫茶。」
「喫茶店のウェイトレスさんといったら?」
「え、接客業って答えでいいのか。」
「それじゃあ、最後の質問よ。稟はメイドさんといったら、どんな職業だと思う?」
「それは…、あ。」
ここまで言われて、俺はシアとキキョウがどうしてあの時メイド服から別の服に変えたのか、その理由がやっと分かった。
「稟くん、答えは。」
俺が答えずにいると、さっき以上に涙を溜めたシアが聞いてきた。
「ごめんなさい、2人が言いたいことはよく分かりました。」
「それじゃあ、説明して。」
キキョウも目に涙を溜めながら、俺にその答えを言うよう求めたきた。
「え〜と、メイドは誰か特定の1人に奉仕する人だから、シアとキキョウはメイド服を着て俺以外の誰かの接客をしたくなかった、ってことでいいのか?」
「その通りっす!」
「なんでそれをもっと早く分かってくれなかったのよー!」
俺が答えると、2人はそう言って泣きながら俺の胸を叩きだした。
「その…、2人ともごめんな。俺、2人がそこまで考えてたなんて全然分からなくて。」
俺は2人に素直に謝った。
今回のことは、明らかに俺がシアとキキョウがどんな気持ちでいたのかを分かってやれなかったのが原因だ。
それから、俺の胸に顔をうずめて2人は数分の間だが泣いていたが、ゆっくりと顔を上げ俺の顔を、正確には俺の目をじっと見つめてきた。
「稟くん、ちゃんと分かった?」
「ああ、分かったよ。これからは、もっと2人の気持ちを考えるようにするよ。」
「もしもあたし達が稟以外の誰かの前でこんな服着たら、少しは嫉妬してくれる?」
「着る前に全力で止めさせていただきます。」
「ほんとに?」
「本当だ。俺の全てを賭けてもいい。」
「それじゃあ…。」
2人はそう言うと静かに目を閉じたので、俺も目を閉じ2人にキスをした。
それから、2人はやっと笑ってくれた
370 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:51:15 ID:2g3mCbib
「うう〜、キキョウちゃんがうらやますしいっす。」
「仕方ないじゃない。あたし達は2人だけど稟は1人なんだし。」
シアがふくれているのは、さっきのキスがキキョウ、シアの順だったからだ。
「そうは言っても、この前2人とキスをした時はシアが先だったろ。だから、今度はキキョウが先じゃないと不公平だろ。」
「そうだよ、シア。」
「それは分かるけど…。」
シアも分かってはいるがやはりどこか…、といった感じで納得しきれないらしい。
まあ、どんな理由であれ先にしてほしいとは思うものだからな。
「まあ、その気持ちは分からんでもないがな…。」
「だからシア、今日稟に来てもらった理由を思い出そ。」
「うん、そうだよね。まだ次があるもんね。それじゃあ稟くん、はいどうぞ。」
そう言ってシアは俺に紅茶を淹れてくれた。
なんでもシア達はメイド服は気に入ったが、ただ着るだけではつまらないのでメイド服を着て俺をもてなしたかったということらしい。
「もう、違うでしょシア。」
「あっ、そうだよね。ついいつもの調子で言っちゃった。」
「なんのことだ?」
「それじゃあもう一度。どうぞ、ご主人様。」
シアが俺のことを「ご主人様」と言った瞬間、俺の理性は崩壊しかけたが、何とか堪えることができた。
そんな俺の状況を察してか、今度はキキョウが小悪魔のような笑みをうかべながら
「こちらのクッキーもどうぞ。……ご主人様。」
などと、ご主人様の前に明らかに一泊おいて、俺の理性を揺さ振りにきた。
「い、いったい2人とも、ど、どうしたんだ…。」
動揺は明らかに隠し切れなかったが、俺は何とか聞いてみた。
「え、こうすれば稟くんが喜ぶって魔王のおじさまが言ってたんだけど…。」
「それでね、ネリネのお母さんにメイドの心得を教えてもらったんだ。」
(魔王のおじさんにセージさんの入れ知恵ですかー!!)
俺は心の中で絶叫したがそれで状況も変わるはずもなく、紅茶はさすがに自分でカップを取って飲んだが、クッキーを始めとする紅茶以外の物は全て「あ〜ん」で食べさせてもらった。
371 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2006/12/31(日) 23:57:08 ID:2g3mCbib
以上です。

書き込んでから気づいたのですが、name欄にタイトルを記入するのを忘れてしまっていました。
なのでここにタイトルを載せさせていただきます。
タイトルは「シアとキキョウの文化祭」です。

最後に駄文、長文失礼しました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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