542 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 11:47:18 ID:a2SNP1Ll
俺、土見稟が亜沙さんと付き合うようになってから約1年が経った。

1年前のあの日、俺はいろんな人を傷つけてしまった。
そうしてまで手に入れたかった最愛の人、時雨亜沙。
あの時はお互い永遠に愛し合えると信じていた。

そして現在。
俺は小さいボロアパートの一部屋で机に向かって猛勉強をしている。
理由は簡単、亜沙さんと同じ国立光陽大学に入学するためだ。

しかし・・・。

早朝は新聞配達のアルバイト。
朝から夕方までは学校。
夜は受験勉強。

「一人暮らしをして初めて楓の苦労がわかったな。」

そんなことをふと呟いていたら部屋に電話が鳴り響いた。

「はい、土見ですが。」

「やっほー、稟ちゃん久しぶり〜。元気してた?」

「あ、亜沙さん!? こんな時間にどうしたんですか?」

時計を見ると時刻は0時を過ぎていた。

「えーっと稟ちゃん。今度の日曜日って空いてる?
 久しぶりにどこかデートに行かない?」

日曜日・・・特に用事もないが・・・。

「またえらい急ですね。
 それに周りが何か騒がしいのですが今店の中ですか?」

「ごめん、ちょっとサークルの飲み会の途中でして・・・。
 先輩が『時雨って彼氏いるの』って何度も聞いてくるから。」

周りからは激しい喧騒と、時折亜沙さんの名前が入った笑い声も聞こえてくる。
・・・何か、楽しそうだな。

「そうですか、でもすいませんが日曜は樹と約束がありまして。」

・・・嘘をついた。
自分でもつまらない嫉妬だと分かっているのに。

「そっか残念。何か最近全然会ってないよね・・・。
 それじゃあまた今度連絡するね。」

電話を切ると急に静寂が部屋を支配した。
そういえば最後に会ったのは・・・確か夏休みか。
多分俺は心のどこかで亜沙さんを避けているんだろな。

あの日以来・・・。

「何か今日は疲れたな・・・。もう寝るか。」

そして目覚ましを朝の3時にセットして布団に入った。
543 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 11:49:04 ID:a2SNP1Ll
朝、配達の途中で楓からコーヒー。
シアには手作りのオニギリ。
ネリネにはオカズの卵焼き。
プリムラにはとびっきりの笑顔を貰った。

みんな1年間毎日続けてくれている。
俺なんかのために・・・。
しかしみんなが応援してくれているからこの生活も頑張れる。

「よし、今日も1日がんばろう!」


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昼休み。

いつも通りみんなで屋上に行く。
ずっと昔から変わらない風景。
変わったとしたら騒がしかった先輩達がいなくなったぐらい。

「はい、稟くんお弁当。」

「ありがとう、楓。」

このやり取りにもずいぶん慣れたものだ。
亜沙さんがバーベナ学園にいた頃は毎日お弁当を作ってきてくれたんだけど・・・。
亜沙さんが大学に入学してからはいつの間にか作ってくれなくなった。
お互いの環境が違うから仕方無いが・・・。

最近は昔のように楓に作って貰っている。

「稟くん、顔色があまり良くないですけど毎日きちんとご飯食べてますか?」

「ん〜、正直言うと楓の弁当が1番まともなご飯だな。」

朝はみんなのくれるオニギリや卵焼き。
昼は楓の作ってくれたお弁当。
夜は・・・コンビニ弁当かカップラーメンか。

「ダメですよそんなんじゃ! 稟くん病気になっちゃいますよ!」

「そうだよ稟くん、カエちゃんの言うとおりだよ!」

「お兄ちゃん死んじゃうぅ・・・。」

「ありがとう楓、シア、プリムラ。
 でもやっぱ男の一人暮らしじゃなぁ・・・。」

「あの〜、稟様。時雨先輩に頼んでみたらいいのではないでしょうか?」

「ネリネ・・・。あ、あぁ。そうなんだけどな。
 お互い最近忙しくてあまり会えなくて・・・さ。」

「・・・。」

みんなも事情が分かってるのかしてこれ以上は聞いてはこなかった。
亜沙さんの名前を出すとどうもその場の空気が悪くなる。
いつからこんな風になっちゃったんだろな。
544 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 11:51:31 ID:a2SNP1Ll
「稟くん、途中までですが一緒に帰らないですか?」

「楓、わかった。帰るとするか。」

「はいっ。」

帰り道、この3年間歩き慣れた道。
秋は日が沈むのが早く、空はもうすっかり茜色だ。

「稟くん、ホントに大丈夫ですか・・・?」

「大丈夫だって。もう今なら楓に負けないくらい家事は上手いかもな。」

そう言って笑ってみせる俺。
本音を言うと家に帰ってからが凄く辛い。
一人の時間がこんなにも長く、そして寂しいとは思わなかったな。

「そう・・・ですか。」

そんな会話を続けるうちに楓と別れる道に着いた。

「それじゃ楓、また明日。」

「あ、えーっと・・・。稟くん?」

「ん、何だ?」

「もしよければですが・・・これから家に寄ってご飯でも食べていかないですか?」

「楓の家に?」

「違います。あそこは稟くんの家でもあるんですよ。それにリムちゃんも喜びますし。」

俺が8年間お世話になった家。
楽しい思い出も辛い思い出もたくさん詰まったあの家。
そっか、俺にも帰る場所があったんだな。

「・・・そうだな、たまには楓のご飯を食べるのもいいな。」

「はい、腕によりをかけて作りますね。」

そう言って楓は最高の笑顔を俺に向けてくれた。

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玄関のドアをくぐる。
ちょくちょく遊びに行ってるので久しぶりではないが妙に懐かしい気がした。

「お帰りなさい、稟くん。」

先に家の中に入った楓が笑顔でそう言うと、

「お兄ちゃんお帰り〜。」

奥から出てきたプリムラも笑顔で答えてくれた。

「・・・ただいま楓、プリムラ。」

だから俺も笑顔でそう答えた。
545 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 11:52:08 ID:a2SNP1Ll
夕飯は豪華に鍋だった。
久しぶりに食べる楓の夕飯は凄く美味しく、懐かしかった。

しかし急な訪問にも関わらずここまで豪華なご飯を作れるのが凄い。
楓に聞いてみると

「いつ稟くんが来ても、美味しい物を食べれるようにしていますから。」

と笑顔で答える。
やっぱり楓は相変わらずだな。


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夕食後は楓に勉強を教えて貰っている。
お互い今は受験生だ。
楓の教え方は上手く、俺が1週間悩んでも解けなかたった問題がすぐにわかった。

そして時間も22時過ぎ。
何だか凄く身体が重くなってきた。
それに眠い・・・。

「稟くん、今日は泊まっていかないですか?
 稟くんの部屋もあの時のままにしていますし。」

ダメだ、眠い。
それに意識が・・・。

「稟・・・くん? 稟くん! 稟く・・・。」

楓の叫び声が聞こえるが・・・もうどうでもよくなっていた。
俺はこうして深いまどろみの中へ落ちていった。


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「ありがとうございました。」

お医者様を見送った後、私は稟くんの部屋へと向かいました。

「お兄ちゃん、大丈夫なの?」

稟くんの部屋でリムちゃんが心配そうに尋ねてきました。

「うん、どうやら風邪みたいです。
 無理な生活が祟ったんだとお医者さんは言っていました。」

稟くんはいつも自分より他人を優先します。
もう少し私やみんなにも甘えてもいいと思うのに・・・。
546 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 11:53:50 ID:a2SNP1Ll
時刻は2時。

薬が効いているのかして稟くんは今は安静に眠っています。
リムちゃんは途中で寝てしまったので部屋に運んであげました。

「稟くん・・・。」

帰ってくる返事がないのは分かっています。
だけど私は彼の名前を呟いて・・・。


「楓・・・。」

「稟くん、起きたのですか?」

小声で囁いてみますが返事はありません。
どうやら寝言みたいです。

「楓・・・。」

もう1度自分の名前が呼ばれます。
そして・・・。

「約束・・・守れなくてごめんな。
 あの時の約束。」

約束・・・稟くん覚えててくれたんだ。
幼い頃、花火をしながら稟くんと交わした約束。
私の最後の繋がりだった約束。
それを稟くんも覚えて・・・。

「ずっと一緒、どこにも行かないでくれ。」

「私はどこにも行かないですよ。ずっと稟くんのお側にいます。」

そう言って稟くんの手を掴みます。
するとその手は握り返してきました。

「えっ、稟くんやっぱり起きて・・・。」

よく見ると稟くんの目は開いていました。
そして目に涙を浮かべて・・・。

「楓、ごめん。ごめんな・・・。」

「稟・・・くん。」

私も気がつけば泣いていました。
1年前のあの日以来、泣かないと決めたのに。

2人で泣いた後はいつの間にか稟くんのベッドで寝ていました。
547 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 12:04:04 ID:a2SNP1Ll
「アルバイトを休んでしまった上に、学校も休めない。」

次の日。稟くんはそう言って学校に行こうとしましたが、無理やりにでも休ませました。
こんな状態で学校に行けば余計に酷くなります。
朝、お粥を稟くんに食べさせた後、私にはやるべきことがありました。
稟くんは寝ていますし、リムちゃんも無理やりに学校に行かせました。
そして意を決してある人に電話をかけます。大丈夫、私ならできる。

「もしもし楓〜? どうしたのこんな朝早くから。」

亜沙先輩が電話にでた。でもどうしても言わないといけない。
昨日の夜、あの時から私の想いはもうとまらないです。

「亜沙先輩・・・。」

「なにー、楓?」

1度は諦めたこの想い。でももう・・・。

「私・・・昨日稟くんと寝ました。」

確かに一緒に寝ました、嘘はついていないです。

「えっ! 楓それってどういう・・・。」

「稟くんをあんなになるまで放っておいて・・・。亜沙先輩には稟くんを任せられません。」

「あんなにって・・・稟ちゃんに何かあったの!?」

「それすらも気付いていないのですね。稟くんは私が守ります。亜沙先輩では稟くんを幸せにできませんでしたので。」

「ちょっと、どういうことなの楓!ちゃんと説明してよ!」

「それと私見ちゃったんです。亜沙先輩が知らない男の人と仲良く歩いているのを・・・。」

これは本当。稟くんと学校の帰りに商店街で見かけた2人。
あの時の稟くんの寂しそうな横顔は忘れられません。

「えっ・・・?」

「それからです、稟くんの口から亜沙先輩の名前をあまり聞かなくなったのは。
 稟くん優しすぎるから。亜沙先輩にそのことも聞けずに・・・。」

「違うの楓、あの人はサークルの先輩で特に何も・・・!」

「でもその行動が稟くんの心を傷つけたのです。」

「そんな・・・。」

「あなたと話すことはもうありません。さようなら。」

ガチャ。

・・・これでいいのです。
稟くんは私がずっとお世話をします、し続けます。
それが私が稟くんにできる最後の贖罪・・・そして私の存在理由。
稟くんはあの時の私を許してくれた。
でも私の罪は消えたわけではないです。

だから・・・亜沙先輩、ごめんなさい。
548 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 12:05:34 ID:a2SNP1Ll
「楓・・・昨日はごめん。」

「稟くん、起きたのですか?」

稟くんにお昼御飯を持っていった時に突然言われました。

「約束。守れなくてごめん。この家を出てからずっとそのことだけが気がかりで。」

「いいんですよ、稟くんはまたこうして一緒にいてくれていますし。」

「ホントいうと寂しかったんだ・・・。
 俺、一人だとダメなんだ。誰かが側にいてくれないとダメなんだ。
 でも亜沙さんが別の男の人と歩いていた時から・・・。
 亜沙さんを信じてるはずなのに信じることができなくて!
 つまらない嫉妬から亜沙さんを避けて・・・。
 それで一人の夜を何度も迎えて・・・。
 我慢だけは昔から得意だったはずなのに。
 ・・・俺って最低だよな。」

そういって涙を流す稟くん。
稟くんの本音、そして初めて見た稟くんの弱い心。

「大丈夫ですよ、私は稟くんの側にいます。これからもずっと・・・。」

そう言って稟くんをそっと包み込みます。

「かえ・・・で?」

「私、芙蓉楓は一生稟くんを愛し続けます。
 そしてずっと稟くんのお側にいてずっとお世話をします。
 だから・・・。」

こんな弱い稟くんをみたらもう後には退けない。

「だからもう1度あの時の約束を誓ってもいいですか?」

「楓・・・。」

「ずっと一緒にいてください。」

幼き日に交わした約束を再び同じ人と。

「俺も・・・一人になってやっと気付いた。
 俺にとって誰が1番必要か。
 誰を1番愛しているか。

 楓、俺も楓の事が好きだ。
 ずっと一緒にいてくれ。」

「え・・・あ・・・稟くん・・・。」

1年前のこの季節。
彼の口から聞きたかった言葉。

だけどあの時は私じゃなくて亜沙先輩を・・・。

「はい、約束です。」

そうして二人口付けを交わす。
稟くんと交わす初めてのキスは涙の味がしました。
549 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 12:06:27 ID:a2SNP1Ll
それから俺は再び芙蓉家に住むことになった。
今度は居候ではなく本当の家族として。

幹夫おじさん、プリムラ、そして楓。
みんな笑顔で俺を迎え入れてくれた。

おじさんなんてお酒を取り出して

「稟くん、戻って来てくれると信じていたよ〜。」

って言って号泣しだすし。
相変わらずなおじさんだな。


亜沙さんに別れ話もした。
何故かすんなり別れられたのは少し寂しいが・・・。

楓と何かあったのか?
楓に聞いても何も答えてくれない。
しかも聞いた時の楓は8年前のあの表情に・・・いやきっと気のせいだろう。


そして無事に大学にも入学できた。

光陽大学より一つランクが上のストレリチア大学へ。
楓との猛勉強のおかげで同じ大学に入ることができた。

そこで幼馴染の八重桜とも再会できるとは思わなかったけどな。

シアやネリネ、麻弓、樹・・・。
みんなとは違う道を選んでしまったが後悔はしていない。

俺の隣には最愛の人がいるから・・・。
550 名前:第25話 永遠へと続く道[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 12:07:29 ID:a2SNP1Ll
「稟くん、起きないと遅刻しちゃいますよ。」

そう言っておはようのキスをしてくる楓。

「楓・・・。その起こし方は反則だって。」

「おはようございます、稟くん。」


昔も今もあまり変わらない日常。
でも少しずつだけど日常は変化していっている。

でも今はその変化も楽しむ余裕がある。
隣に楓がいてくれている限り・・・。


「うぅ。稟くんとカエちゃんいいなぁ。朝からラブラブカップルで〜。」

「稟様、私はまだ諦めていませんから。」

「お兄ちゃん、明日は私が起こしに行ってあげるね。」

「土見君、みんなと違う大学行ってもモテるね・・・。」

「稟くんと楓ちゃん、せめて学校内では慎ましくしてよね・・・。」

「稟、殴っていいかい。この銀河が滅びるぐらいに。」

朝の登校でみんなが集まる少しの時間。
みんな行く場所は違うのに気持ちの方向は同じ。
だからみんな笑顔だ。

以前と違うのは亜沙さんだけがいない。
でもいつか昔のような先輩後輩の関係に戻れる日を俺は待っている。

「ダメですよ、みんな。
 稟くんは私の恋人なんですから。」

・・・っと言って抱きついてくる楓。

「お、おい楓っ!」

「離さないですぅ〜。」

こんな幸せな日々がずっと続きますように・・・。
551 名前:542[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 12:11:06 ID:a2SNP1Ll
終わりっす。
エロがなくてすまん。

アニメの楓があまりにも不憫だったので続きを作ってみた。
亜沙スキーの方はすまねぇ。
SS自体初めてだったんで文章的にヘボいけどそこは許してください。

暇だったら第26話 大学編でも作ろうかな。
桜スキーなんでw

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