目覚めると暖かく柔らかい何かが禀の顔に当たっている。普段使用している枕とは違う、
その気持ち良さに、再び目を閉じてしまい、思わず顔を押し付けてしまう。
「あん。」
と? なにやら上の方から声が聞こえて来た。その声が、再び眠りそうな禀の意識を押
し返す。顔を上げ、目を開けてみるが、目の前が良く解らない。目をこすろうと右手を目
に近づけると、何やらまた柔らかい何かに当たってしまった。
「ひゃっ。」
まただ。しかし妙に心地良い感触である。軟らかい上に暖かいのだ。顔に感じていた枕
とは違う、むにっとする感触。触れると解る、ほっとする暖かさ。
訳がわからず稟は体を起こそうとして右手と左手を支えに起きあがる。右手に暖かい感
触があったがあまり気にせずに起きあがって目をこする。
視界が晴れてきて、頭も回転する様になった稟は、今自分がどのような体制なのかを認
識する事が出来た。
「り、稟………。」
顔を赤く染め、ちょっと潤んだ瞳で稟を見上げるキキョウ。そのしなやかな肢体に跨る
自分、右手はと言うと………キキョウの胸を鷲掴みにしている。と言う事をようやく認識
した。したのだが………事態が事態故か、稟の活動機能は停止してしまった様だ。
「あの………おはよう………。」
どうやら、と言うかかなり気まずい雰囲気になってしまった二人は、しばらくそのまま
固まっていた。