803 名前:757[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 05:06:18 ID:EdOlHHxx
>>798
一人でも需要あって良かった…。
楓が裸で稟に抱きつく場面から始まります。
よろしければ感想などお願いしますね
804 名前:アニメ版アレンジ 1[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 05:08:53 ID:EdOlHHxx
「稟君!」
寝ている俺の背中に楓が抱きついている。
それも裸だ。体も濡れているし風呂あがりなのだろう。
「楓!?」
「何処にも行かないでください…」
楓の腕に更に力が入る。
その体が小刻みに震えているのが背中越しに伝わってくる。

普段の楓ならばこんな事は絶対にしない。
だが近頃の楓は明らかに普通ではなかった。

『あんたなんか…死んじゃえばいいんだ!!』

幼い頃、楓が俺に叫んだ言葉。
最愛の母を奪った仇に向かって叫んだ言葉。
それを今度は先輩に、俺達とあんなに仲の良かった亜沙先輩にぶつけた。
俺と先輩が二人で撮ったプリクラは、先輩の顔がペンで塗り潰されていた。
あれも恐らく…楓の仕業だろう。

楓が俺に抱いている想いには気付いていた。
確かに気付いていたが、目を背けていた。
楓だけじゃない。シアもネリネも、もし俺が誰か一人を選んでも以前のままでいてくれる。
…そんな甘えた事を心のどこかで考えていた。
馬鹿げている。
傷付くに決まっているのに。
あのデートの時、シアやネリネが何も思わなかったはずがないのに。
楓だって………。
805 名前:アニメ版アレンジ 2[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 05:09:51 ID:EdOlHHxx
「私、稟君のためなら……」
そう言って楓が赤く染まった顔を近付けてくる。
とにかく今の楓は正気じゃない。
このままでは取り返しのつかない事になる気がする。
「落ち着け!楓!」
俺は半ば強引に楓を引き剥がし、体に毛布を巻いてやった。
「稟…君……」
どこか虚ろな目で楓が俺を見つめる。
「楓……」
その視線を俺は正面から受け止める。
俺にはその義務がある。

どれ程の時間が過ぎただろうか。
先に沈黙を破ったのは楓だった。
「本当は…分かっているんです。…稟君の…気持ちも……」
楓の頬を涙が伝う。
「そして私は…稟君に愛されるはずがない……愛される資格がないんだって事も…」
楓は続ける。
「でも…それでも…稟君の傍にいたいんです。離れたくないんです…」
今まで楓が笑顔の下に隠してきた想いが、一つ一つ涙となって溢れ落ちていく。

嘘。
大切な友達を救いたい、そう願ってついた嘘。
だがそれが結果として、楓を苦しめている。
俺はどうすれば本当の意味で楓を救えるのだろう。
わからない。
自分の無力さがただ情けなかった。
806 名前:アニメ版アレンジ 3[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 05:11:37 ID:EdOlHHxx
不意に楓が立ち上がり、帆船の模型を置いた俺の机に歩み寄る。
そこにあるのは………カッターナイフ。
「私は…もう自分を抑えられません。このままじゃ稟君のご迷惑になっちゃいます」
楓はカッターの刃を少しずつ出していく。
その顔は笑っていた。
笑っていたが、俺には泣いているように見えた。
「稟君…亜沙先輩とお幸せに」
カッターの刃を自分に向ける。
「そして…愛しています。これからも私はずっと……稟君を愛し続けます…」
「かえ…!!」
駆け出した時にはもう、楓は腹部にカッターを突き刺していた。

倒れていく楓を受け止める。
「馬鹿!なんで…こんな……」
楓の体から血が滴り床に広がっていく。
「私……駄目…なんです……今も…昔も……稟君や亜沙…先輩………大切な…人を…傷付けて……いなく…なった方が…」
「何言ってんだよ!お前、俺の大切な家族なんだぞ!」
血まみれの楓を抱いたまま、俺はただ叫び続ける。
「父さんも母さんも死んで…それでも俺がやってこれたのは楓がいたからなんだ。楓が…」
「稟…く……」
「もう俺は…大切な家族を…失いたくないんだ」
俺は子供の様に泣きじゃくっていた。
そんな俺の頬に楓が手を添える。
血の匂いがする。でも、温かい。
「稟君……大…好…き……」
そう囁いて楓は目を閉じた。
807 名前:757[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 05:14:52 ID:EdOlHHxx
以上です。
後半は三、四日後には完成すると思います。
少し予告しておくと、亜沙を登場させる予定です。

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