671 名前:小ネタ[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 02:20:29 ID:Tu1MsfVE
「なあ、樹」
「どうしたんだい、稟。まるで『俺はシアたちに相応しい男とは思えない……だが緑葉樹という男になら!』と言わんばかりの思い詰めた雰囲気で――」
「前半部分になら若干同調してやってもいいが後半部分は俺の存在をかけてでも全否定してやる」
「ああそうかい……それで、実際の用はなんだい?
昼食が終わってあとは午後の授業開始を待つばかりの、気分が高揚から倦怠を経て憂鬱へと変化する俺様的ナイーブな時間帯にナンセンスな話題はご免こうむるよ」
「何を言いたいのか毛ほども理解できないがそんなに愉快な話題じゃないことは確かだな」
「まあ言ってごらんよ。普段他人に振り回されてばかりの稟が――おっと、良いあだ名をを思いついた。『他人に振り回されて馬鹿稟』なんてどうだい?」
「後半がどっかの半分がやさしさで構成されてる風邪薬みたいに聞こえるからやめろ。つーか名前とかぶってる助詞に悪意がこもっている気がするんだが」
「気のせい以外の何物でもないからそれ以上の深読みはしない方が吉だね」
「……まあそれで本題だけども」
「やっとかい。まったく話の脱線にもほどがあるね。稟のダイヤグラムがどれだけ乱れようと構わないけれど俺様のそれは日ごとに秒単位で定められているんだからさ。
例えそれが学生同士の何気ない歓談といえども話の筋はきちんと通すべきだと思うよ」
「麻弓の名前なんだけどさ」
「ワールドクラスもびっくりなスルーっぷりに俺様のテンションはフリーホールさ」
「……あいつって名前のあとに『=タイム』って付いてるだろ? あの意味ってなんだ?」
「何かと思えば話題の種は麻弓の名前なのかい? 稟、時間はもっと有効に使うべきだよ。名前に疑問を持つにしてもそこはカレハ先輩に目を付けるのが俺様的ベストチョイスだね。
なぜ開門以前に神界で生まれた方に『枯葉』という日本語で名前をつけたのか、それとも神界には同音異義なまったく別の『カレハ』があるのかなど――」
「ああ知らないのか。ならいいや」
「まあ早合点はよしなよ、稟。俺様はただ、このアンニュイでノスタルジックなひと時を麻弓のトークなんかでブレイクしたくなかっただけさ」
「何、お前ルーリスペクトなのかもしかして」
「麻弓の『=タイム』についてだけどね」
「ああはいはい」
「詳しいところは本人に聞くのが手っ取り早いんだろうけど、そんなことあいつに聞こうものなら
『ぷっ、なーに。緑葉くんてばそんなこともわからないの?』
的な嘲笑とそれに付随する根も葉もない俺様に対する罵詈雑言が容易に予想できるからまず俺様的解釈をするとしよう。納得がいかないようならあとで麻弓に聞いてみてくれ。稟ヒトリで」
「いくらなんでもその麻弓人物像は幼馴染としてどうなんだ」
「恐らくあれは麻弓の生まれに由来するね」
「魔界生まれ、ってことか?」
「半分、いや三分の一ってところかな。ただの魔界出身者ならつかないね。リンちゃんや魔王さま、それに公式に名前が公表されていないけれどその他の魔界出身者にもいないだろ?」
「公式とかいうな。……そういえばそうだな。俺も魔界出身者は知ってるのはバーベナ内くらいしかいないけど確かにみんな名前だけだ」
「だろ?」
「じゃあなんで麻弓は?」
「恐らくだけど、ハーフってところに原因があるね。その起源がいつか知らないけれど、まったく違った世界の人間二人が子を成したんだ。
当然、各々の世界には各々の名前のつけ方がある。
人間界だってこの国にこそないけれど他の国では宗教や歴史的な理由から個人が三つや四つ名前を持ってるところだってあるんだからさ。
きっと妥当なところで人間界名、恐らく麻弓が生まれた地域は日本からの迷途者の子孫がいたんだろうね、と魔界名の二つを付けたんじゃないかな。
それがいつの間にか習慣化したんだろうね」
「なるほどな」
672 名前:小ネタ[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 02:21:20 ID:Tu1MsfVE
「しかしね、稟。麻弓の名前に関してだけは俺様はもうひとつの解釈を持っているのさ」
「へえ、なんだよ」
「そう、あれは英和辞書を何気なく捲っていて『equal』の原義を見つけたときだった。その瞬間、俺様の脳はまさにあいつの名前にぴったりの解釈を導き出したのさ!」
            (イコール) (タイム)
「すなわち、『麻弓・(胸が)平らな・ちょ、ま!』! どうだい、稟。これぞまさにあいつに相応しい――」

「みーどーりーばーくん」
「俺様の後方から不穏などというには余りに禍々しすぎるオーラが降り注いでいるんだが、稟の目にはいったい何が映っているんだい?」
「もうお前の説明そのままを具現化したような話題の中心人物がまさにそこに」
「なるほどね」
「先に言っとくぞ、樹。五時限目の世界史だが、俺は紅女史に何を聞かれようとお前の所在については一切しゃべらんと」
「エターナルフォースブリザード以上の冷たさだね、稟。元はといえば君が話題にしたのが……て、まあ落ち着きなよ麻弓。
いいかい、婦女子が喜色満面で荒縄を振り回すなんて道徳的に問題があるとは思わないのかい?
少しでも自分が理性ある人間で理解されにくいだろうけども女性だと思われたいのなら――」
「問答――無用っ!」
「アッー!」

「なんだか誤解されそうな断末魔だな。しかし某大手サイト知恵袋で元ネタ確かめてた奴もいるってのはどうなんだ? しかも少し間違えて」
「……閃いちゃいましたっ!」
「おうっと、びっくりしたぞ楓。実はすぐ後ろにいたとか」
「ええ、会話文のみマジックの賜物ですね」
「書き手の横着だと思うんだが……で、何を閃いたって?」
「今日の御夕飯です。朝からずっと迷ってて、いっそアカシックレコードでも見ようかと思ってたんですけど今の麻弓ちゃんと樹くんのやり取りを見てたら思いついちゃいました」
「人間クラスのエビフライか……まずその大きさの海老を見つけることが困難そうだな。まず間違いなく一般には販売されてないだろうし。全記録書見るのと比べたらどっちが簡単だろうな」
「もう家に届いてると思いますよ」
「さよけ」


 了

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