717 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:47:03 ID:D0gH88iy
後編になります。
よろしくお願いします
718 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:48:49 ID:D0gH88iy
(1/11)
「もう知っていますから」
「えっ? 桜?」
衝撃?の告白に思わず凍り付いてしまう稟であった。
知っているということは、過去に男性との経験があるのだろうか。
桜は美人だし、いくら女学院とはいえ告白されることも多かっただろう。
付き合っている男性がいたとしてもおかしくはない。
しかし、桜の想いに答えられなかった過去があるとはいえ、
自分の知らないところで桜が男性と付き合うというのは信じられない。
それに今見たばかりの秘所は綺麗に閉じ合わさっており、
今までの反応とあわせても、とても男性経験があるようには見えなかった。
「ええっと、稟くん。ど、どうしたのかな」
逆に桜は、愛する男のものを自分の中に迎える直前で緊張していたのに、
稟が不思議そうな顔をして固まっていることに不信感を抱いた。
桜の声を聞き、凍り付いた状態からようやく意識を取り戻した稟である。
「そ、その……桜?」
「はい」
「知っているって、いや、過去のことを聞くのは野暮だとわかっているんだが……」
稟の問いかけに首をひねる桜。
「その、こんなことを聞いちゃいけないんだろうが、
 桜は男性と付き合ったことがあるのか?」
「……ええっ! そんなことあるわけないです!」
ぶんぶんぶんと音が出るくらい首を振る桜。
「私は前にも言ったけれど、昔から稟くんだけが好きなんです。
 この想いはずっと変わっていません。なんでそんなことを聞くんですか」
自分の今までの想いをわかってくれていないと、怒り出した桜。
「いや、ごめん、桜。だけど、知っているなんて言われて、つい……」
「えっ?」
……桜は先ほどの自分の言葉を頭の中で反芻する。
そして、その言葉の意味することを
相手がどのように受け取ったのかをようやく理解した。
「ええっ、ち、ち、違います! そ、そういう意味じゃありません!」
慌てふためき、思わずじたばたしてしまう桜であった。
719 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:50:01 ID:D0gH88iy
(2/11)
「お、おい、落ち着け、桜」
「だ、だって、稟くん、やだっ、そ、そんなつもりじゃ、んんぅ」
パニックになっている桜を見かね、思わず唇をあわせてしまう稟。
さらに右手で、桜の胸を軽く愛撫する。
甘い口づけと胸からの刺激で、ようやく落ち着きを取り戻す桜。
「落ち着いたか、桜」
唇と手を離し、桜へ微笑みかける稟。
「う、うん、ごめんね、稟くん。あんなこと言ったら誤解されるよね」
「ま、まさかと思ったけれどな、俺も変なことを聞いて悪かった」
「あ、あのね、楓ちゃんの記憶世界に入ったときにね、
 そ、その、そういうことになっちゃって……」
「ああ、あのときのことか!」
それは秋のこと。実験に伴うプリムラの暴走に巻き込まれ、
楓が目覚めなくなったことがあった。
稟たちは楓を目覚めさせるべく記憶世界に入っていったのだが、
その中で稟は桜、亜沙、プリムラ、麻弓、撫子と関係を結んでしまったのだ。
もちろん実際の経験とは異なるのだが、
その世界の記憶そのものは当人から消えることがない。
撫子は記憶世界の中に入っていないからよかったが、
他の4人はその経験を自らの記憶に刻み込む結果となった。
そのせいで稟と彼女たちが気まずくなったというわけではないのだが。
「そうか、覚えていたのか」
「当たり前です。好きな人との、初めての体験の記憶です。
 それがどういう状況であろうと、忘れるなんてできません」
稟にとっては、彼女たちのために忘れた方がいい記憶だろうとあえて触れないでいた。
しかし彼女たちにとって、
初体験やその後の性体験の記憶と感触が忘れられるというものではない。
特に桜にとっては、子供の頃からの思い人との経験である。
それが誤った記憶の中であろうと、実際の体験ではなかろうと、
忘れられるはずのない経験であった。
互いに合点のいった二人は見つめ合い、そして吹き出してしまった。
「ははははは……」
「ふふふふふ……」
そして二人は再び唇を合わせる。さらに今度は互いに舌を絡め合う。
長い、長いキスが続いた。
720 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:51:04 ID:D0gH88iy
(3/11)
「稟くん、あらためまして、お願いします」
「ああ、桜。ひとつになろう」
ちょっとした言葉のすれ違いで、逆に緊張が解けた二人。
稟は屹立したペニスを桜の秘所に押し当てた。
桜の秘所を隠していた陰唇が稟の先端でこじ開けられていく。
「んんぅ!」
挿入されてくる異物を押しのけようと、桜の膣がきつく締め付けてくる。
桜の意志とは関係ない本能の抵抗に逆らい、稟は少しずつ奥へと押しつけていく。
「はぁ、は、入ってくるっ」
「き、きつい……」
桜の締め付けが、途方もない快感を稟にもたらす。
しかし、ここで出してしまっては男として情けない。
射精感に堪えながら、少しずつ桜の奥へと進めていった。
「んんっ、ああー!」
稟のペニスが何かに突き当たった。どうやらここが、桜の処女膜らしい。
「だ、大丈夫か、桜」
「ご、ごめんね、稟くん。声をあげちゃって」
「痛いのか、桜」
「うん、い、痛いです。けれどっ、ここで、やめられると、心が痛いですから」
「桜……」
「お願いです、大丈夫ですから、いっきに、いっきに、来て下さいっ!」
目に涙を浮かべながら、必死に笑おうとする桜。
そんな桜の気持ちに応えるべく、稟はさらに腰を押し出した。
ぷちん、という音が稟にも、そして桜にも聞こえたような気がした。
桜の中にあった最後の抵抗が破れ、稟のペニスが一気に奥まで進む。
そして稟の腰が桜の腰と当たった。
「くぅ、あぁ、ふぁああ、あああっ!」
「さ、桜……」
「はぁ、はぁ、はぁ、り、稟くん。もしかして……」
「ああ、全部入ったよ」
稟は繋がった部分へ視線をやると、紅いものが一筋流れていた。
涙を浮かべていた桜もそっと目を開き、繋がった部分に目をやる。
「ほ、本当だ……、稟くんと、ひとつに、なれたんですね」
桜は痛みと嬉しさの混じった表情をみせ、そっと下腹部に手を伸ばした。
「ここに、稟くんがいるんだ……、んっ、う、嬉しいです」
桜の目から涙が流れていく。
「痛かっただろう、桜。大丈夫か」
「うん、痛いけれど、これも、稟くんがくれたものだから。
私が望んだものだから、とても嬉しいです」
「桜……」
桜の言葉に胸を打たれた稟は、こぼれた涙をキスでそっとぬぐい取った。
「ふふっ、やさしいです、稟くん」
「そ、そうか」
「はい、とっても。だけど、私は稟くんに気持ちよくなってほしいです」
「いや、今のままでも十分気持ちいいぞ」
それは嘘ではない。
挿入中ほどではないものの、桜の締め付けが稟に途方もない快感をもたらしている。
「それでも、動いて下さい。稟くんが幸せになると、私も幸せなんです」
「いいのか、桜。歯止めが利かなくなるかもしれないぞ」
「はい、大丈夫です。稟くんがくれるものは、何でも受け止めますから」
721 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:52:55 ID:D0gH88iy
(4/11)
稟は桜の腰をつかみ、ゆっくりと腰を引いた。
ペニスが引かれ、桜の中から愛液がこぼれ落ちる。
透明な愛液に、紅いものが混じっていた。
それを確認した稟は、再びペニスを挿入する。
「あぁ、あんっ」
稟は桜の身体を気遣い、ゆっくりと動き始める。
「はぁ、んんん……、稟くぅん、す、すごい」
包み込もうとする襞に逆らい、稟のペニスが桜の中を何度も往復する。
くちゅ、くちゅ、くちゅ、くちゅ。
桜の中から出てくる愛液と、稟の中から出てくる液が混じり合い、
ペニスが往復するたびに音を立て、シーツにこぼれ落ちていく。
「な、なにこれ……す、すごいよ、稟くん」
「桜、痛くないか」
「い、痛いけれど、しびれているけれど、な、何かが、奥から、はぁああ!」
「き、きつい。すごすぎる、桜」
「わ、わからないよ、稟くんっ、こ、これ、なに」
桜の中は少しずつ柔らかくなっていく。
無意識に桜の両足が、稟の腰に巻き付けられる。
締め付けが少しずつきつくなっていく。
それに逆らうよう、稟の動きが早くなっていった。
互いの情欲が高まり、そして本能の赴くままに相手を求めていった。
「り、稟くん、お、奥に、奥に、熱いものがっ」
「ああっ、桜、あ、愛しているぞ」
「は、はいっ、稟くん、わ、私も、私も稟くんのことを、愛してます!」
「桜、桜!」
「き、気持ち、いいですか、稟くんっ」
「ああっ、気持ちいいぞ、桜」
「う、嬉しいです、んんっ、ああぁ、な、中で、中に」
「ああっ、桜の中にいくぞ!」
「ひあっ、はぁあっ、も、もう、真っ白なの、 ああっ」
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。
混じり合った二人の愛液が少しずつ白濁していく。
ただただ、相手を求め会う二人。
桜の中に、己の欲望を叩き付けていく稟。
稟からの欲望の全てを逃すまいと、稟のものを締め付ける桜。
そして二人は絶頂に向かっていった。
「桜、桜、い、いくぞっ」
「ああんっ、も、もう、きて、来て下さい! はぁっ、はあんっ、だ、だめっ」
「桜、う、うわぁっ!」
「ひぃ、はぁ、いくっ、いっちゃうよっ!」
桜の叫びとともに、稟の中で何かがはじけた。
我慢という名の堤防が決壊し、己の欲望を載せた精液が放たれた。
「ああああああっっっっっ!」
桜の奥へ、何度も何度もぶちまけられる白い液。
「お、奥に、稟くんが、はあぁぁぁ、熱いよぉ、んんんっ」
稟の全てを絞り尽くそうと、桜の肉襞がペニスを締め付けた。
722 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:54:00 ID:D0gH88iy
(5/11)
全てを出し切った後もしばらくそのままだった稟。
ようやく息を整え、自分のものを抜き去った。
桜の中から、紅いものの混じった白い液がこぼれ落ちていく。
慌てて稟は、ティッシュペーパーでぬぐい取った。
「ああんっ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
知らない人が見れば恥ずかしい光景だが、
桜はまだしびれと快感で体を動かすことができなかった。

放心状態だった桜がようやく息を整える。
(はじめてなのに、いっちゃった……)
桜はそんなことを考え、急に恥ずかしくなった。
落ち着いたと判断した稟が、桜のことを抱きしめた。
「稟くん、有り難うございます。私の初めてをもらってくれて」
「光栄だよ、桜。捧げてくれて有り難う。身体、大丈夫か?」
「痛かったですけれど、それより身体がしびれちゃって、
 最後は雲の上に浮かんでいくようで……」
「すごいな、桜。最初からいっちゃったのか」
恥ずかしいことを指摘され、真っ赤になる桜。
「……もう、女の子にあまりそういうこと言わないでください」
「そ、そうか、悪かった」
「もうっ、ふふふ……」
先ほどまでの雄々しさが消え、抱いていた女の子に謝ってしまう稟の姿をみて、
思わずほほえんでしまう桜。
そこにとてつもない幸せを感じていた。
二人は身体を寄せて抱き合い、口づけを交わす。
幸せの余韻を長く引き延ばそうと、舌を絡め合い、唾液を交換する。
そのうち、稟のものが再び大きくなっていった。
「あっ……」
太股のあたりに当たっている稟のものの状態に気付き、小さな声をあげる桜。
そのことに気付き、恥ずかしそうな表情をする稟。
しかし、欲望とは正直なもの。
「なぁ、桜。その、すまないが……」
「はい」
「もう1回、いいか」
「はい、お願いします」
そして二人は再び一つになった。
723 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:54:58 ID:D0gH88iy
(6/11)
カーテンから漏れる光で、桜は目を覚ました。
意識はまだぼんやりとしている。
頭にある枕がいつもと違い、なんとなく硬い。
ベッドも、いつもと違う感じがした。
部屋が暖かいからか、自分の体に毛布すらかかっていない。
目の焦点が徐々に合ってくる。
目の前にあったのは、肌色の肉体。
そして自分の体が裸であることに気付く。
思わず声を上げそうになったとき、下腹部の痛みで何があったかを思い出す。
今、自分は稟の腕枕で眠っていた。
聞こえてくるのは、稟の寝息。
目の前にいるのは、自分が最も愛する人。
昨日の行為を思い出し、桜は顔が真っ赤になった。
しかし、徐々に心が幸せで満たされてくる。
愛する人に抱かれたことを。
愛する人と一つになったことを。
愛する人と一緒に眠ったことを。
そして、愛する人へ一番最初に「おはよう」と言えることを。
桜は稟の胸に顔を埋める。
服を着ているときは細身の体に見えるが、裸で抱かれてみると思ったよりもたくましい。
今もこうして、稟の腕は桜の体を抱きしめている。
まるで全てを守るかのように。
724 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:56:38 ID:D0gH88iy
(7/11)
桜は顔を少し上げる。
普段は凛々しい顔をしているのに、眠っているときは無邪気ともいえる可愛さである。
楓は毎日この寝顔を見ているのかと思うとちょっと羨ましくなったが、
それは仕方のないことだ。
今日は誰よりも最初にこの顔を独占している。
それだけで桜は充分幸せだった。
「りーんくん」
小さな声で桜は稟に声を掛ける。
稟が起きる気配は全く感じられない。
桜もそのことは十分承知して、わざと小さな声を出している。
「りーんくん、だーいすき」
自らの思いを声にしてみたはいいが、恥ずかしくなって思わず顔を伏せてしまう。
しかし稟の顔を見たくて、また顔を上げる。
端から見るとばかばかしいぐらい甘い時間が、少しずつ流れていった。

桜は無防備に眠っている稟の顔を幸せそうに眺めていたが、
不意にいたずら心がわいてきた。
稟の胸に唇を寄せ、キスをする。
くすぐったいのか、稟がちょっと身じろぎした。
稟が起きてしまったのかと桜はちょっと身構えたのだが、稟が起きることはなかった。
安心した桜は、再び稟の胸にキスをする。
今度は肌ではなく、乳首の方にだ。
何度かキスを繰り返したのだが、稟はくすぐったそうに声を小さく出すだけであり、
起きる様子は見られない。
徐々に大胆になった桜は、稟の乳首に舌をのばす。
そして、昨日自分がやられたように、ゆっくりと舌を這わせていく。
稟の瞳が開く様子はないが、稟の乳首は徐々に硬くなっていく。
「男の人も感じるんだ……」
当たり前といえば当たり前の事実だが、そういう行為が初めての桜は驚くばかりである。
桜は夢中になって、稟の胸にキスを続けた。
725 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:57:46 ID:D0gH88iy
(8/11)
しかし桜は、おなかの辺りになにか硬いものが当たっているのに気がついた。
実はさっきから気付いていたのだが、単純に膝でも当たっていると思っていたのだ。
だが、桜はその硬いものの正体に気付いてしまい、真っ赤になってしまう。
「ええっと、これって、あの……、あれ……だよね」
それは昨日、自らの体の中に侵入してきたもの。
体ごと引き裂かれそうな痛みと、溢れ出してくるほどの幸せをもたらしたもの。
そして、恥ずかしすぎるほどの快楽をもたらしたもの。
昨日は自らの体にもたらされる様々な愛撫に翻弄されるばかりであった。
稟は桜の体を隅々まで見ただろうが、自分にはそんな余裕など全くなかった。
「ど、どうしよう……」
桜はどうしたらよいのかとまどってしまう。
「ええっと、その、つらいよね、これって」
秋にあった事件で楓の精神世界に入ったとき、桜は稟と結ばれている。
もちろんそれは現実ではないのだが、感触はすべて本物と同じだった。
始めて結ばれたとき、桜は稟のモノを直に見ている。
しかも、自らの口で愛撫していた。
そのときのことを思い出した。
桜だって、今時の女の子である。
どうすれば男の人が喜ぶのか、という会話ぐらいは、
女子ばかりであるストレリチアでも平気で飛び交っている。
「ねぇ、稟くん。その、苦しそうだし、口でした方がいいのかな……」
まだ寝ていると信じている稟に、桜は小さな声で問いかける。
もちろん、答えが返ってくるはずがないと思っていた。
「まだいいよ、そこまでは、桜」
愛する男の声が聞こえてきてびっくりした。
「えっ、えっ、り、りんくん……」
「おはよう、桜」
驚く桜をよそに、ゆっくりと目を開く稟。
そして抱きしめていた腕に力を入れていく。
「可愛いな、桜」
「ええっ!」
ストレートな稟の物言いに、顔が赤くなる桜だった。
726 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 06:59:25 ID:D0gH88iy
(9/11)
「そ、その、稟くん、いつから起きていたの」
「いやぁ、実は稟くん、って聞かれたところからだったりするんだが」
「ええっ、そ、それって、もしかして……」
「思わず抱きしめたくなったぞ。大好きなんて言われると」
「ひ、ひっどいです、稟くん。全部聞いてたんですか!」
「ああ、声を出さないようにするのに苦労していたよ」
「も、もう、バカバカバカ」
恥ずかしさのあまり、稟の胸を叩きまくる桜。
そんな桜の両手を掴み、唇を合わせていく。
甘い時間が流れていった。

稟の上に桜がいる状態のまま、二人は話し始める。
「桜、体は大丈夫か」
「も、もう、そんなこと聞かないで下さい」
桜の顔が紅く染まった。
「ええっと、まだ痛いですけれど、それ以上に幸せです」
「そ、そうか。素直に言われると、ちょっと照れてしまうな」
「もう、稟くん。もうちょっと自信を持っていいと思うよ」
「じ、自信か?」
「はい。私も、楓ちゃんも、それにみんなも、稟くんのことを愛していますから」
「お、おいっ、桜」
「だから、好きな人と結ばれる幸せに叶うものなんてありません」
幸せそうに微笑む桜に、胸が熱くなる稟だった。
しかし、胸だけでないのが若い男の証拠か。
ただでさえ朝の状態だったものがさらに熱く大きくなり、
抱き合っていた桜の尻に当たってしまった。
「きゃっ、稟くん。い、いまの……」
「ええっと、ごめん。今の桜の言葉で、つい……。
 それに、この状態だと、桜の胸が当たっていてな……」
桜の大きくて柔らかく、そして弾力のある胸が、
そして気づかないうちに硬くなっている乳首の感触に稟は興奮していた。
この言葉で改めて裸の状態で抱き合っていることに気づいた桜だった。
「それでな、桜。朝からで悪いんだが……」
「はい」
桜は予想される次の言葉を待った。
「桜を今抱きたい」
「はい。お願いします。ただ……」
「ただ?」
「あんまり見ないでね。明るいから全部見えちゃって、恥ずかしいから……」
桜は恥ずかしさを隠すように目を閉じ、自分から唇を合わせてきた。
727 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 07:02:43 ID:D0gH88iy
(10/11)
楓は洗濯物を干し終わり、掃除機をかけている。
数日ぶりに洗濯、掃除を満足にすることができて嬉しかった。
壁に掛けてある時計を見ると、すでに10時を回っていた。
(いまのうちに買い物へ行っていた方がいいかもしれませんね)
今日の夜にはプリムラも帰ってくる。
夕食は桜も入れて4人分用意しなければならない。
それに、あと30分ぐらいもすれば、稟も桜も起きてくるだろう。
二人ともシャワーを浴びたいだろうから、
自分が外出している方がいいかもしれない。
(朝ご飯を食べていないから、今日の昼食は量の多い方がいいでしょうか)
楓は掃除機を止め、外出の準備を始めた。
細切れに聞こえてくるのは、桜の声だろうか。
(稟くん、本当に元気ですから)
二人の状況を想像し、クスッと笑ってしまう。
楓は念のため書き置きを残し、外へ出て扉を閉めた。

愛する稟が悩んでいる姿を見ることに、楓は耐えられなかった。
稟がどんなことで悩んでいるのかはすぐにわかった。
ラバーズ全員のことが好きなのに、
楓のことを気遣い、キスの先へ進もうとしない稟。
そしてそのことが正しいのかどうか悩み続ける稟。
ならば温泉旅行の時の告白と同様、自分が背中を押せばいい。
稟の幸せが自分の幸せ。
そのことを知っている楓にとって、やることは決まっていた。
プリムラが検査のために魔界へ帰っていること、
そして桜が泊まりに来るのは前から決まっていたことだった。
別に企んだわけではない。偶然だった。
楓にとっては、そのチャンスを利用したに過ぎない。
しかし、稟が自分以外の女性を抱くのなら、
最初は幼なじみである桜がいい。
そんな深層心理が働いたのかもしれない。
これで稟はプリムラやシア達とも関係を結ぶだろう。
みんなとずっと一緒にいること。それが稟の望みであった。
みんなが一緒に稟を愛すること。それが楓の望みであった。
728 名前:始まりの夜(後編)[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 07:06:19 ID:D0gH88iy
(11/11)
鍵をかけた楓は、庭の物干し竿に掛かっている大量の洗濯物を見つめる。
春休みに入り、稟は夜、朝を考えず、楓のことを求めてきた。
それは自らの悩みを振り払うためであったのかもしれない。
楓の身体に溺れたからかもしれない。

稟からの求めには常に応えたい。
そんな楓に、稟の欲求を断るという選択肢はない。
ただ、稟はすごかった。すごすぎた。
ベッドの上で、ソファの上で、風呂場で、台所で……。
稟によっていつも翻弄され、その後はしばらく立てない状況が続いた。
稟からもたらされる快感は、麻薬のように癖になっていた。
しかしその行為によって長時間ダウンしたままの状態となり、
家事がほとんどできなくなったことには愕然としてしまった。
買い物に行くことと料理がやっとであり、
洗濯や掃除などに手が回らない日々が続いた。

楓にとって一番の問題は、稟の世話をできない、ということであった。
稟の身の回りの全てを世話すること、それは楓の生き甲斐である。
稟の求めを応じることによって、稟の世話をできないという矛盾。
こういう関係になるまでは全く想像もできなかったこの矛盾に、
楓は心の底で葛藤した。
だからこそ昨日の桜の宿泊は、
楓にとって全てを解決する絶好のチャンスであった。

(桜ちゃん、夕方までに立つことができるでしょうか)
そんなことを考えながら買い物に向かう楓の顔は、
今日の天気のように晴れやかであった。


終わり
729 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 07:12:11 ID:D0gH88iy
以上です。
ドラマCDですと、迷っている稟に楓が背中を押し、
ラバーズ全員が稟と恋愛成就するわけですが、
いざ身体の関係となると、やっぱり稟が悩むだろうな、
やっぱり背中を押すのは楓かな、
という発想から書いてみました。
最初にそれをうまく書けなかったのは、自分が未熟だからでしょう。
野暮なあとがきになって申し訳ありません。
以後稟は、ラバーズ全員と関係を結び、
三世界統一王、通称絶稟王への道を歩みます。

それでは、失礼します。

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