607 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:17:54 ID:iOXqrPUN
稟「だー!できるかこんなもん!」
最近体が鈍っていることを感じて室内でも出来そうなビリーズブートキャンプってヤツを買ってみたが…
稟「楽そうに見えて結構きついなぁ…」
まあ、見事に三日坊主である。我慢するのは得意だけど自分のためだとイマイチやる気が起きない。
まあ、買う物の為のお金は残してあるんだけど。
稟「あーあ、買わなきゃよかった…」
見事にバイト代の無駄遣いであった。



稟「んで、今は普通に軽いジョギングとかで運動不足を解消してる。」
樹「ダメダメだね。そんなもの買ってもなんの得にもならないよ。」
麻弓「まったく…、バイト代が勿体無いのですよ。」
あきれた表情の麻弓と樹にたしなめられた。そりゃそうだよな…。
シア「ねえねえ、その『びりーずぶーときゃんぷ』?ってなんなの?」
麻弓「ダイエットやトレーニングに使える今話題の商品なのですよ♪見た目は楽しそうなんだけど…」
樹「稟は早々に敗北したようだね。まったく、三日ぴったりで諦めるとは稟らしいというか…」
ザクッ
麻弓「元々必要ないのに興味本意だけでバイト代無駄遣いしちゃうとこも♪」
ザクザクッ!
稟「…すいません勘弁してください…。」
余裕があったからとはいえ他に使い道あったろうに…稟「まあ、最初はジャブとかキックが楽しかったんだけどな。だんだんプログラムについていけなくなったんだよ。」
ビリーズブートキャンプ…恐ろしい子!
シア「ねえねえ、稟くん。」
稟「ん?」
シア「今使ってないなら、わたし使ってみてもいい?」
シアにあれできるだろうか…。結構キツいと思うけどなぁ。
稟「いいけど…結構きついぞ?」
シア「なんだか面白そうだし、一回やってみたいかも。」
まあ、断る理由もないか。もともと、断れないだろうし。
稟「わかった。あとで渡すよ。」
608 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:20:44 ID:iOXqrPUN
―――前日

シア「うーん、やっぱりお風呂はきもちいいッス〜…♪」
シアは楽しげに鼻歌を歌いながら(ザ・ドリフターズ「いい湯だな」)湯船に浸かっていた。
シア「ふーんふーふーふっ♪ふーんふーふーふ♪」
まあ、なんとも俗なことを知っている神様である。勿論神王が昔歌っているのを聴いたことがあるからだが…。
ザバァ…。
シア「こーこーは光陽♪神王家の湯♪」
石鹸の香りがシアにはなんとも心地よかった。
風呂をあがって下着、Tシャツと着ていくとふと 体重計が目に入った。
シア「…久し振りに計ってみよっかな♪ばばんばばんば…」
…暫しの沈黙、そして…

うきゃぁぁぁぁぁぁぁ!
怒号とも悲鳴ともつかぬ叫びが神王邸に響き渡った。
トトトトトッ!
キキョウ「ど、どうしたのシア!」
悲鳴に気付いたキキョウが慌てて駆け込んできた。そして…
ドドドドドドドド!!
床を鳴らしながら神王が駆け込んできた。
神王「ど、どうしたんでぇ!シうぎょぼ!?」
シア「お父さんは入ってこないで!!」
気付け、おっさん。そこは風呂場だ。
シアの手にはやはりどこから出したのかパイプ椅子が握られていた…。



キキョウ「で?シア、どうしたの?」
シア「た、体重がご、5キロも増えてたッス〜!」
シアの発言にキキョウが怪訝そうな顔をする。
キキョウ「そんなわけないでしょ。あたしとほとんど同じ体型じゃない…。」
そう言いながらため息をつきキキョウは体重計に足をのせた。
キキョウ「大体シアが太ってるなんて言ったら他の女の人はみ、んな…」
…二度目の静寂。そしてやはり

むきゃぁぁぁぁぁぁぁ!
二度目の奇声が上がった。ドドドドドドドド!!
ガラッ
神王「今度はどうしとべぼっ!?」
…だから気付けおっさん。
609 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:22:05 ID:iOXqrPUN
シア「と言うわけで借りてきたよ!キキョウちゃん!」
そう、まさしくそれがビリーズブートキャンプであった。
実際の効果のほどはよく分からないが、短期間で痩せられると言うことらしい。
キキョウ「あり?日本語じゃないけど?」
シア「うん、海外版のヤツを稟くん買ったらしいの。」
ご丁寧に二セットで更に万能包丁付!という、無茶苦茶な売り込みに稟が引かれたということらしい。
(万能包丁は楓が使用している。)
シア「とにかく英語が分からなくても真似すれば良いって。」
キキョウ「シア〜。なんかちゃっちいけど大丈夫〜?」
キキョウはいかにも怪しげな道具を摘まみあげてしげしげと眺めていた。
シア「5キロの壁は厚いッス!普通な事をしてても簡単に効果は出ないッス!」
キキョウ「む、確かに…。稟に嫌われたくはないしね。」
メラメラと二人の瞳と背後には炎が燃え上がっていた。
キキョウ「シア!」
シア「うん!」
シア&キキョウ「1・2・3 ハイ!」

こうしてシア、キキョウのダイエット大作戦が始まった。



シア&キキョウ「はあ、はあ…」
このビリーズブートキャンプ見た目よりハードである。
キキョウ「はあ、はあ、い、意外と、き、キツいわね…。」
シア「り、稟くんがやめたの分かるかも…。はあ、はあ、ふぅ…。でも、でも頑張るもん!」
ガンバレー!(はっ!俺は何を!?)
コホン、こうしてシアとキキョウのダイエット大作戦1日目は終了した…

610 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:23:21 ID:iOXqrPUN
―――1週間後のシア宅

今日は神王のおじさんは仕事で不在の様だった。
都合もいいかと思い、渡したいものを渡に来たんだが…
稟「シア、キキョウ大丈夫か?なんかやつれてるような…。」
なんだか二人の足元が覚束無いような気がしたけど。どうしたんだ…?
シア「うん、なんだか疲れちゃって…」
キキョウ「大丈夫だよ…、稟」シア「そうだ、お茶入れよっか。」

とても大丈夫そうに見えないなぁ。いつもの二人とは明らかに違うし。
稟「って、うわ!」
立ち上がったシアがフラりと倒れ込みそうになる。慌てて支えようとしたがシアはなんとか踏みとどまった。
稟「どうみても大丈夫じゃないじゃないか!!」
シア「こ、これは…、あの、その、で、デンプシーロールっす!」
シュバッシュバッっと素早い動きをするシア。無理あるだろ。その言い訳…。
その嘘にキキョウも便乗を始めた。
キキョウ「そうそう!最近ボクシングに興味を、もっちゃつとぇぇ?あれぇ?世界が回ってる?」
シア「はれはれ〜?」
おいおい、まさか…、
トトトッと二人がふらつきながら近づくと
ゴチンッ!
鈍い音が響いた。
シア「はうっ!」
キキョウ「きゅうっ!」
ドターン!!
稟「シアッ!キキョウ!!」



医者「軽い栄養失調ですね。これくらいなら栄養をとって休養をとれば大丈夫でしょう。」
稟「すいません、わざわざ来てもらって。」
医者「いえいえ。あまりいきすぎたダイエットはしない方がいいよ。…それじゃそろそろ戻るとするよ。お大事に。」
稟「有り難う御座いました。」
シアとキキョウは今はベッドで眠っている。
渡すどころじゃないな。様子を見に行くか。…ん?あれ?こっちだっけ?
いつもはシア達について部屋まで行くのでハッキリ道順を覚えていなかった。
稟「広い家ってのも考えものだな…。」
とにかく戸を開けまくれば分かるか…。
ガラッ
っとここは風呂場だな。…ん?
ふと、体重計が目についた。
稟「まったく、そんな気にする体型でもないだろうに…。…?…これは…」

611 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:24:43 ID:iOXqrPUN
シア「んっ…」
キキョウ「うぁ…?」
稟「気付いたか?二人とも。」
シア「稟くん…?」
キキョウ「稟…?」
稟「まったくこのお姫さまたちは…。大丈夫か?」
シア「ごめんなさい、稟くん…。迷惑かけちゃって…。」
キキョウ「ごめん、稟…。」
二人は今にも泣きそうな顔で謝ってきた。
稟「まったく、無理なダイエットなんてするからだぞ。」
まあ、数字的にそれだけ減らすのはかなりきついはずだ。
シア「あぅぅ、でもでも私達…」
キキョウ「ものすごく体重が…」
稟「5キロ太ったって言うんだろ?」
ふう、とため息をつく俺に対して、シア達はキョトンとしていた。
シア「え、え、えぇぇぇぇ!?」
キキョウ「な、何で稟が知ってるのよ!?」
俺が知ってることがさぞ不思議だったんだろう。まあ、そりゃ驚くよな。
スッと二人の前に体重計を差し出した。
稟「いいか?よくみろ、体重計の針を。普通、0を指すべきだよな?」
体重計の針は5キロピッタリを指している。
稟「つまり、こういうこと。キチンと調整してなかったってことだな。」
シア&キキョウ「エエェェェェ!!」
シアとキキョウらしいと言うかなんというか…。



シア「カエちゃんおかわり!」
キキョウ「楓、こっちも!」
楓「はい、まだたくさんあるんでどんどん食べてくださいね♪」
何か食べさせないとと思い、病院食より気の利いたものをと考えた結果、楓にご飯を作りに来てもらうことにした。
稟「すまないな、楓。プリムラ。」
プリムラも連れてきたらしく皆一緒にご飯を、ということになった。
楓「いいんですよ。稟くんの頼みですから。それにシアちゃん達に食べてもらうのも嬉しいですから♪」
シア達の食べっぷりは目をみはる程のスピードであった。
シア「…!んっ、んんー!」
キキョウ「シ、シア!?」
プリムラ「……はい、水……」
どうやら喉につかえたらしい。言うが早いかプリムラは水を差し出していた。
ゴクゴクゴク…
シア「ぷはっ!ふぅ…、リムちゃん、ありがとー♪」
プリムラ「……がっつき過ぎ……」
シア「あ、あははは…、面目ないっす。」
おれと楓はそんな風景を見ながら苦笑していた。
612 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:26:13 ID:iOXqrPUN
―――更に次の日。同じくシア宅。

俺は忘れ物をしていることに気付いた。まあ、もともと昨日はそのために来たんだけど…。
稟「シア、キキョウ。これ受け取ってもらえるか?」
長かったバイトも勿論このためである。けして、ビリーズブートキャンプを買うためではなかった。
シア「え、まさかこれって…」
キキョウ「きれい…」
稟「そ、ペアリング。バイト代はたいて買ってきた。」
これでバイト代のその殆んどを使いきった。が、後悔はしてない。する訳がない。
シアとキキョウはウットリとそのリングを見つめていた。
キキョウ「ね、ね、嵌めてみていい?」
キキョウもシアも待ちきれないと言った雰囲気だ。でも、俺にはやることがまだあった――。
稟「ダーメ。これは…」
キキョウ「え、ちょっと、稟…」
キキョウの左手をとってリングをスッと薬指に嵌める。
稟「ほら、シアも。」
シア「稟くん…」
同じ様にシアの左手をとり薬指に嵌める。
そう、シアとキキョウに俺がリングを嵌めてあげたかった。
シア「わぁ〜…、嬉しいなぁ…♪」
キキョウ「ぽ〜…」
二人とも喜んでくれたようだ。ほのかに赤い頬がそれを示していた。
シア「ね、稟くんの分もあるんでしょ?」
キキョウ「あたし達が嵌めてあげるよ♪」
稟「うぃ!?」
しまった、これは逆に照れくさい状況だ。指輪を俺が嵌めてあげたいって事だけで完全に失念していた…。
キキョウ「ほらほら、遠慮しない♪」
シア「はい、稟くん♪」
スッと薬指に指輪が通される。ヤバい、うれしはずかしで顔が真っ赤だ。
自分の顔が赤くなるのが分かった。
稟「な、なんか照れくさいな。」
シア「お互い様ッス♪」
シアもキキョウも顔の横に自慢げに左手をかざした。勿論、俺も…。
稟「好きだよ。シア、キキョウ…。」
シア「大好きです。稟くん♪」
キキョウ「大好きだよ。稟♪」
二つの大輪の笑顔が綺麗に花咲く。
俺は純粋に、この二人の笑顔を守りたい。そうリングに願った…。

613 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:27:21 ID:iOXqrPUN
―――後日談

シア達のやっていたビリーズブートキャンプは意外に効果があったらしい。
カキーン!!
神王「…ぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉ…!!!」
キィィィィーンドゴーン!!
神王のおじさんがドップラー現象を起こしながらドラゴンボールのキャラの様に飛んでいった。
シア&キキョウ「お父さん!いい加減にして!」
シアとキキョウに今までおじさんを吹っ飛ばす力はなかったはず…。となれば原因はひとつ。
ビリーズブートキャンプ…やはり恐ろしい子!
二人の手には勿論椅子。いま、二人の背後にイチローと松井のカットインが入ったような…怒らせないようにしよう…。



ペアリングとは本来二つで一組である。つまり買う時には二つで買わないといけない。
そんな訳で俺の手元にはリングが一つ余る事となってしまった…。
稟「これどうしようか…。俺が二つつけるってのもなぁ。」
シア「うーん、カエちゃんにあげるとか?」
シアさん、あなた本気で言ってますか?
キキョウ「あ、それいいかも。」
キキョウさん、あなたもですか…。
稟「そんな事したら楓は完璧に勘違いするぞ。」
シア「だーいじょうぶッス♪」
キキョウ「神界は一夫多妻制よ。のーぷろぶれむっ!」
グッと拳を握るキキョウ。
何て言うか神界の一夫多妻制に慣れるのはまだまだ先のようだ…。



P.S. 楓は盛大に勘違いしました。
614 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/24(火) 19:30:07 ID:iOXqrPUN
終わりッス♪

長くしてしまう癖が出てしまったのが心残り…。
ブートキャンプの活躍は少ないし。

自分的に前半が大好きwww

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