681 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:51:02 ID:d/SlO/2k
やっと出来た。
さーてSS投下いきまーす!
682 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:52:38 ID:d/SlO/2k
稟「楓ー、プリムラー。準備できたかー?」
楓「もう少し待ってくださーい」
バーベナ学園三年目の夏休み、昼のむし暑さから夕暮れの涼しげな空気に変わってきた。
去年は台風の影響で中止となったイベントが今年は開催される事となった。
光陽町の少し外れの神社で縁日が行われるのだ。
稟「一昨年行ったときはかなり楽しかったな。」
一昨年はなかなかの盛況ぶりでたくさんの人の中から昔の友達に会ったりしたのは楽しかったな。
楓「お待たせしました、稟くん♪」
プリムラ「……おまたせ……」
稟「おそいぞ。かえ…」
見慣れているはずだったが、やはりいつもと違う幼なじみは新鮮なものがある。
楓「稟くん?どうかしましたか?」
白に淡いピンクの花が彩られた浴衣姿の楓はいつもより艶やかに見えた。
稟「…い、いや、久し振りに浴衣姿を見たな、と思って。」
髪型も普段とは違い後ろで纏めた髪型がなおのことそれを強調していた。
普段は女の子らしい楓がこういった格好をすると途端におしとやかな女性らしくなる。
楓「去年は中止でしたもんね。それよりリムちゃんの初浴衣姿、見てあげてください♪」
こそこそと隠れていたプリムラが姿を見せた。…ヤバい。これは…
プリムラ「……稟、どう?……」
稟「な、なかなか似合ってるぞ!この柄は金魚か。」
白地に水色のシャボンの様な柄と金魚がアクセント的に入っている浴衣だ。
髪は下ろし可愛らしいというかむしろ、艶っぽいという表現が合いそうなほどだ。
…樹に会わせたくないなぁ。コレは絶対に持ち帰り対象だろ…。最近は少し成長してきて、その、ゴニョゴニョ…
プリムラ「……稟、行かないの……?」
稟「あ、ああ。それじゃシアたちを迎えに行こうか!」
楓「はい♪」
既に両手に花なこの状態。もちろん神社に着く頃は両手じゃ持ちきれなくなるんだけど。

683 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:53:43 ID:d/SlO/2k
家を出ると右手の方から自分を呼ぶ声が聞こえた。
ネリネ「稟様。楓さん達も。」
稟「お、ネリネか。ごめんな、遅くなっ…」
途端に空気が凍りついた。髪をまとめてシンプルながらも綺麗なかんざしを刺した髪型。ここまではいい。
稟「で、その着物はなんなんだ?」
楓「着物、なんでしょうか…。」
明らかに浴衣ではなく着物の様なものを着てはいるが、肩をさらしネリネの豊満な胸を強調するような形だった。
ネリネさん。俺が耐えられても樹には無理です。アイツに理性とか節操と言うものはありません。
というより俺が耐えきれません!
ネリネ「や、やっぱりおかしいんでしょうか…。お父様に勧められたんですけど…。」
プリムラ「…ネリネ、魔王は信じない方がいい…」
ナイスガッツ、プリムラさん!
艶やかな服装ではあるが確実に間違ってるよな…。
稟「ゆ、浴衣は…?」
ネリネ「お母様が準備してくれてます…。」
稟「それじゃ、着替えてきた方がいいだろう。樹に見られたら歓喜の雄叫びと共に連れ去られるぞ。」
あまりこの状態が続くと前屈みにならねばならない!それだけはイカン!!
俺は見たくなる衝動を抑えネリネから視線を逸らして堪え忍んだ。
ネリネ「…そ、それでは着替えてきますので少々お待ちください!」
そう言い残すとネリネはパタパタと玄関に戻っていった…
稟「仕切り直し、だな…。」
楓「そうですね…。」
魔王様。あなたは自分の娘をどうしたいんですか…。



ネリネ「お、お待たせしました。」
プリムラ「…ネリネ、かわいい…」
楓「リンさん、綺麗…」
蒼い髪を後ろで纏めてかんざしを刺した髪型と、紺色の下地に折り鶴の柄があしらわれた浴衣がなんとも綺麗であった。
ネリネ「お、おかしくありませんか?初めて着てみるものですから…。」
問いかけの目が自分に向けられる。勿論、答えなんかとっくにでている。
稟「問題ないよ、合格。むしろ百点満点。東大のセンター試験を首席で突破くらい。」
ネリネ「本当ですか?稟様に誉めてもらうと嬉しいです♪」
浴衣+美少女+笑顔=反則 の図式が成り立つと思うのは俺だけでしょうか?
今日は樹に会いたくないなぁ…。出来ることなら合流したくないな…。
稟「さて、シアとキキョウを迎えに行くか。」

俺のお姫さま達をお迎えに。

684 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:54:44 ID:d/SlO/2k
カラランコロロン

相変わらず変な音のチャイムだ。

シア『はーい、稟くんですか?』
明るい声がインターホン越しに聞こえてくる。
稟「ああ、もうネリネ達も一緒だぞ。」
シア『はーい、すぐ行きまーす♪』
カラコロと下駄の音が聞こえ直ぐに勝手口の戸が開いた。
シア「お待たせしました♪」
キキョウ「稟、お待たせ♪」
稟「お、二人とも出てきた、な…」
言葉を失った。
シア「?」
キキョウ「稟?どうかした?」
稟「いや、正直見とれてた。二人とも似合ってるな。」
こんな言葉しか浮かばない自分が恨めしいほど二人の浴衣姿は二人にピッタリあっていた。
シア「えへへー、嬉しいッス♪」
シアは淡いピンクの下地に白い洋風の花柄の浴衣。浴衣としては珍しく和物の柄では無いがシアにピッタリの花だった。
髪型をポニーテールにかえ、更にそこから覗くうなじ。覗 く う な じ !
かたや、キキョウは濃い紺色に白く抜かれた桔梗の花柄の浴衣。
髪は結んでこそいないが流れる長髪はキキョウの雰囲気を大人の女性のものへと変えていた。
…決めた、今日は樹には会わない!会うものかぁぁぁぁ!!!
685 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:55:36 ID:d/SlO/2k
キキョウ「へへー稟ってば嬉しいこと言ってくれるじゃない♪シアと一緒だったときに着てみたいと思ってたんだ。」
シア「私はお父さんが和服好きだから人間界から貰ってきたのを何度か着たことあるの。」
稟「へぇ、道理で似合うわけだな。何て言うか、その…、綺麗、だよな。二人とも。」
しどろもどろながらも一番言いたいことが言えたむず痒さを隠すように頬をかいた。
シア「稟くん…」
キキョウ「稟…」
二人の頬が見る見る内に赤く染まるのがわかった。
稟「シア、キキョウ…」
見つめ合う三人。三人だけの時が流れていた…。

ゾクッ

不意に背後から冷たい視線が突き刺さったのが分かった。
プリムラ「稟、キキョウとシアだけ綺麗って誉めた……」
楓「リ、リムちゃん…。確かにそうですけど…」
ネリネ「稟様…」
ジトーッと重たい視線が突き刺さる。針のむしろとはこういうものなのだろうか…。
稟「い、いや、みんなも可愛いと思うぞ!楓やネリネだって、なんか凄く綺麗だと思うしプリムラだって・・・・・う!?」
じと〜〜…
またしても後方から冷たい視線が…
シア「ふ〜ん…」
キキョウ「稟ってさあ、可愛い女の子には甘いよねぇ〜…」
稟「う!?」
しまった、こんなところにも伏兵が!?こ、この状況を打破するにはアレしかない!!
彼の有名なジョースター家に伝わる伝説の秘技!!
稟「と、言うわけで神社まで競争だぁ!!」
…おばあちゃんが言っていた。三十六計逃げるにしかず、と!!(嘘)
言うが早いか、俺は一目散に駆け出していた。
シア「あ、コラー!待つッス稟くん!!」
キキョウ「稟ー!まちなさーい!!」

間違いなく俺の両手一杯には花、だがその花はイバラのようだ……。

土見 稟 二分後捕縛
刑罰としてシアとキキョウに腕をとられながら脇腹をつねられる刑に処された。
686 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:56:34 ID:d/SlO/2k
まあ、そんなこんなでやっと会場に着いた訳だが、もう空には蒼白く星が輝いていた。
稟「ちょっと遅くなったか…」
プリムラ「……これが、縁日?……」
シア「わぁ〜楽しそう!いろんなお店があるんだね。」
キキョウ「あたし、そう言えばこういうのはじめて…。」
稟「え?神界にはお祭りとか無かったのか?」
ネリネ「私もシアちゃん達もそれぞれ神王と魔王の娘という立場ですから…。」
シア「行くことが殆んどなかったんだよね〜…」
シアがフゥとため息をついた。
キキョウ「シアは勝手に抜け出して行ったことあるじゃない。あたしも向こうから見てたけど。あの時シアは…」
シア「キ、キキョウちゃん!みんなの前でその話しはやめてぇぇぇ…」
涙目になりながらキキョウにすがり付くシア。…激しく聞きたいが聞かない方がいいんだろうな。
稟「さて、とりあえずなんか食うか。みんな何食べる?」
楓「あ、稟くん。あそこにたこ焼き屋さんがありますよ?」
稟「よし、行ってみるか」


稟「すいませーん、たこ焼き二つ…」
神王「おう、らっしゃい!」

稟「間違えましたー。」
神王「待てや稟殿。」
ガシと太い腕が力強く俺の肩を掴む。もう、俺の肩が壊れるほどに。
シア「お父さん!?」
稟「な、なんでそこにあなたが居るんですか!」
神王「なんでもなにも町内会の出し物だからじゃねぇか。光陽町に住むからには行事には参加しねえとなぁ!」
ガッハッハッと大笑いするおじさんを尻目にため息をついた。
神王「それよりたこ焼き買ってってくれや。サービスするからよ!」
バンバンと肩を叩くおじさんに気圧されてたこ焼きを買う事にした…。押し売りじゃないかこれ…
神王「ま、稟殿がシアとキキョウを選んだお陰で次期神王の座も安泰だ!」
稟「な!?」
神王「いやぁ、これで安心して隠居できるってもんよぉ!」
まてまて、勝手に話を進めるな。俺は…
神王「いや、次期神界を頼ブゲッ!?」
いつもの椅子、と言うか今回はベンチか…ってあれ?
シア「え?」
シアは俺の後ろにいるよな。・・・・誰だ!?
687 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 15:59:14 ID:d/SlO/2k
リア「稟ちゃんは今のトコ継ぐ気は無いって言ってたでしょ!」
シア&キキョウ「お母さん!?」
今回ベンチを降り下ろしたのはシアではなくリアさんだった。…よく死なないなおじさん…。
リア「はいはい♪稟ちゃんたこ焼き二つでいいのかな?」
稟「は、はい。…あ、半分タコ抜きってできます?」
たこ焼買いに来てタコ抜き?と思うかも知れないが理由がある。
リア「タコ抜きって…、ああ、リンちゃんのためかぁ。稟ちゃんのそういう優しいとこ、ラヴよ♪」
ネリネ「すみません、稟様。私がタコ苦手なばっかりに…」
リア「そういう事ならこれ!出来立て『びっくりたこ焼き』!」
楓「びっくりたこ焼き…ですか?」
なんだろう…、不安になる響きだ。恐らくタコは入ってないけど…
プリムラ「…いろいろ、…はいってる………?」
リア「おーっと、リムちゃんスルドイ。めんたい、卵、焼豚、モケ…、ハッ!と、とにかく色々入ってるリアちゃん特製♪」
キキョウ「面白そう!お母さんそれ一つ!」
リア「はいはい、じゃあこの分はサービスね♪」
シア「うわぁ、ありがとうお母さん♪」
楓「面白いかも知れませんね。今度作ってみましょうか。」
プリムラ「……稟、早く食べたい……」
稟「あ、ああ、そうだな。食べようか。」

・・・モ ケ っ て 何 ?

とにかくそれには当たりたくないなぁ!激しく!!…まあ、サービスしてもらったしよしとしよう。

688 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:00:11 ID:d/SlO/2k
魔王「あれ?稟ちゃんじゃないかい。どうだいチョコバナナでも。」
…そうだよね、この人がこんな楽しそうなイベントに出ないわけないよね…。
稟「今度は魔王のおじさんですか…」
チョコバナナを売る魔王…、あり、なんだろうか…。
セージ「あら、稟様。みんなお揃いで楽しそうですね。」
ネリネ「お母様?お父様は良いとしてもお母様まで…」
セージ「パパがどうしても屋台を出すんだっていうから仕方無くね♪」
稟「その割りには楽しそうですね。セージさん。」
セージ「もちろん♪パパとならんで料理できるんですから。あ、皆さんこれをどうぞ♪」
楓「いいんでしょうか?このチョコバナナ売り物なんじゃ…」
結構な料あるぞこれ…、いいんだろうか。
魔王「いや、いいんだ。君達はネリネちゃんの友達なんだし。気にすることはないよ。」
シア「おおっ、さっすが魔王様!太っ腹ッス〜♪」
稟「有り難うございます。」
さっきから貰ってばかりだけど俺たちの少ない小遣いからすれば有り難い。
魔王「おっと、バナナがきれてしまったな…、バーク、持ってきておくれ。」
バーク「はい、只今!坊ちゃまの為ならこのバーク、たとえインドネシアからでも取り寄せて見せましょう!」
ドドドドドドドドッ!!
バーク「坊ちゃまの為ならー!!愛あるかぎりー!!!」
高速で走り去る執事を俺たちは唖然としながら見送った…
689 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:01:21 ID:d/SlO/2k
稟「喫茶フローラ出張版?確かフローラって…」
駅前の喫茶店だよな。って事は…
亜沙「やっほー、稟ちゃん!」
ベシィ!
考える間も無く背中に衝撃が走った。やはりこれは…
稟「亜沙先ぱ…い!?」
見知った顔の先輩はグリーンの浴衣を着ていたが、その色が霞むほど綺麗なロングヘアーになっていた。
楓「亜沙先輩、その姿は…」
亜沙「あぁ、この浴衣?いま、バイト中なんだけどやるなら浴衣にしようかって店長が…。」
ネリネ「そ、そうではなくてですね…。」
プリムラ「……亜沙、髪が長い……」
亜沙「あ、あぁコレ?僕の髪ちょっとだけ融通が効くんだ」
まあ、理由は分かってるけどいくら何でも急過ぎるよな。知ってるのは俺だけだから直のこと。
流石は『驚愕の時雨』、と言ったところか。…今回は意味が違うが。
ん…?あれは…。
麻弓「ホントにビックリしたのですよ。カメラがあれば撮っておきたかったのにー。」
カレハ「まったくですわ。記念に残しておきたい程ですのに。」
カレハ先輩と麻弓が残念そうにやってきた。そういや麻弓もバイト先一緒なんだっけ。
亜沙「いーの!明日には切るんだから。そ・れ・に♪」
稟「うぃ!?」
不意に亜沙先輩が右腕に抱きついてきた。あの、服が薄いから感触が…
亜沙「稟ちゃんに見て欲しかったかなーって♪」
稟「あ、亜沙先輩!ちょっと、・・・ん?」
左腕にも似た感触が?これは…
キキョウ「じー…」
シアとキキョウが左腕に抱きついていた。
シア「じとー…」
亜沙「ちょ、ちょっと、そんな目で見ないでよ。…分かったわよ。名残惜しいけど、はい。」
パッと離された右腕に今度はシアが抱きついてきた。
さっきまでしかめっ面だった二人が笑顔に変わる。
キキョウ「へへ〜、ここはあたしたちの特等席なんだから♪」
シア「ご免なさい、亜沙先輩♪」
腕に当たる感覚が悩ましい…。
あの、そろそろ前屈みになっても宜しいでしょうか?俺の理性頑張れ!
麻弓「まったく、二人とも結構したたかなのですよ。」
カレハ「まままぁ♪」
一応恋人同士なんだけど、二人の美少女に挟まれるのは気恥ずかしいものがあるな…。
マスター「三人とも、オーダーおねがーい。」
三人「ハーイ。」
両先輩と麻弓はパタパタとバイトに戻って行った。

690 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:02:30 ID:d/SlO/2k
さっきの『びっくりたこ焼き』はみんなで分けて食べてみたのだが一応ハズレは無かった。
今のところは、なんだけど。
俺の手元には『モケ(ry』が残ったらしい…。食うべきなんだろうか…。
シア「あれ、稟くん。一個残ってるよ?」
楓「食べないんですか?」
稟「・・・果てしなく嫌な予感がしてな・・・。」
まあ、食えないもんじゃないだろうが、食って大丈夫な物かは分からないな。
ネリネ「私、食べてもいいですか?」
稟「駄目だ!絶対駄目だ!!ダメ!絶対!」
とにかくせっかくのお祭りで死者を出してはイカン!
キキョウ「やっぱり稟が食べたいんじゃない…」
…え?
稟「いや、そうじゃなくてだな…」
プリムラ「…稟、…あーん……」
あれ?おかしいな?俺は食べるなんて一言も言ってないよね?
プリムラ「…あーん…」
稟「ちょ、ちょっと待てプリムラ!!」
樹「おやぁ、稟。今度はプリムラちゃんに鞍替えかい?」
今日一番会いたくない奴に会ってしまった…。
稟「人聞きの悪いこと言うな!これはプリムラが…」
樹「ほぉ〜、今度は責任転化かい?どちらにせよ、やっぱり稟はロリペドフィンだったわけだ。」
だめだ、コイツ…。早く何とかしないと…!
樹「だいたい、待ち合わせの場所に来ないのはどういう了見だい!こんな極上浴衣美少女たちをはべらせて!」
一応待ち合わせてはいたんだが、待ち合わせの場所にはコイツは居ないことが多い。
稟「入り口に居ると言いながら居なくなったのは何処のどいつだ!大方ナンパしてたんだろ!」
樹「あぁ、みんな彼氏持ちで困ったよ。意外と身持ち固くてなかなか、難攻不落だね。」
まったくコイツは…。ナンパ以外することないのか。
樹「あ、これ余ってるの?一つもらうね。」
稟「ま、待て樹!!」
俺の制止も聞かずに樹はたこ焼きを口に放り込んだ。
樹「はんだひ?ゴクッ、稟、俺様が食っちゃいけなモゲェェェ!?」
バターン…

稟「樹、お前のことは忘れないよ…」
さらば、樹。まさしくお前も強敵(とも)だった。
楓「り、稟くん、死んだことにしないで下さい…。」
シア「お、お母さん一体何入れたの…?」
キキョウ「さて、行こっか♪」ネリネ「い、いいんでしょうか?緑葉様このままで。」稟「時には非情になることも必要だ。行くぞ。」
お前の死は無駄にしないぜ、樹!
ピクつく樹をほっとき、俺達は次の屋台に向かうことにした。

691 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:03:39 ID:d/SlO/2k
ともかく全員揃ったわけだし、一旦別れて好きな屋台に行くことになった。
さて、俺はどこに行くかな…。ん、金魚すくいか。

シア「よーし、じゃあ勝負ッス!」
キキョウ「負けないからね!」
ザバッ!ザバッ!
シア「あれ?」
キキョウ「破れちゃった…。」
金魚掬う気あるんだろうか…。仕方ないな。
稟「ああ、違う違う。見てろ、こうやって…、上の方にいる金魚を…ホイッと。」
金魚すくいの極意はズバリ水に濡らさないこと!斜めに斬るように金魚だけを取る!
シア「稟くんスゴーイ!」
稟「とにかく、はしっこに引っ掛けるようにとってみな?」
キキョウ「よーし、もう一回!今度こそ勝負よ!」
シア「負けないもん!」
楽しそうな二人の横顔は初めて会ったときのシアの笑顔と同じだった。
こういうトコロは昔も今も一緒だな…。多分キキョウも。
この笑顔を見つめていられる事が何より嬉しかった。
シア「やったぁ!一匹ゲットっす〜♪」
キキョウ「あぅ…、また破れた〜…。」
稟「まだ大丈夫。ほらこっち側、まだ使えるだろ?」キキョウ「おお〜、なるほど! へ? ちょ、ちょっと稟!?」
キキョウがすっとんきょうな声をあげた。
それもそのはず、キキョウの後ろから手を取り指導したからだ。
稟「いいか?こんな感じに…ほい。」
キキョウ「あ、あの、稟…。嬉しいけど、ちょっと、恥ずかしいかな…。」
稟「あ、ああ、ごめん。なんか癖なんだよな。こうやって教えるの。」
前、ネリネにもこういう事しちゃったっけ。…自重しないとな。
シア「あ〜、キキョウちゃんずるいッス!」
ぷうっと頬を膨らませてシアがすねた表情を見せた。
シアさん、自重させてくださいませんか…。やれやれ…。
稟「仕方ないなぁ、ホラ。」
シア「えへへ…、わあぃ…♪」
稟「あ、でもこれ破れるかもなぁ。…よっ、おっ?……あ〜あ。」
金魚を掬うも流石に紙が持たず破れてしまった。やっぱり薄いよなぁ。
シア「うー、残念ッス…。」
落ち込むシアを尻目にキキョウはニヤッとして次の金魚に狙いを定めた。
キキョウ「ざーんねん♪この勝負、あたしのか……あぁっ!?」
ポチャン
キキョウの紙も破れ金魚はまた水中に戻っていった。
キキョウ「あうぅぅ…」
稟「残念だったな。もう少しだったんだが。」
シア「今回は痛み分けッスね。」
キキョウ「うー!くやしー!」
ジタバタと子供の様に地団駄を踏むキキョウ。こんな子供っぽいとこもキキョウのかわいい所だと思う。
稟「よし、もいっかいやるか!」
シア&キキョウ「うん!」
692 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:04:43 ID:d/SlO/2k
「ちょ、とりすぎだよ嬢ちゃん!」
屋台のおじさんがいきなり声をあげた。…?どうしたんだ?
あれは、プリムラだな。…?
・・・・!!!
なんとプリムラのお椀には金魚がビッシリ詰まっていた。三十匹と言わないんじゃないかと思うほどの数だ。
稟「プリムラ!ほんとにとりすぎだぞ!」
プリムラ「……?……」
プリムラは小首をかしげて『ダメなの?』っといった雰囲気だ。
いや、ダメだろ…。これは半分以上返さないといけないかもな。
シア「リムちゃんすごいッス!」
キキョウ「うーん、これじゃ勝てないわね…」
いや、むしろ勝たないで下さい…。



シア「稟くん。あれ楽しそうじゃない?」
稟「ん、射的ゲームか。あれ?あそこにいるのは…」
キキョウ「楓、だよね。」
な、なんか近寄りがたい雰囲気だな…。前にもこんなことあったような…。
稟「あ、ヤバい。今は寄るな、シア、キキョウ。」
シア「へ?」
キキョウ「稟?どうしたの?」
一昨年も楓のヤツ、アレやってたんだよな。あの時はスゴかった…。
今、楓の前には五丁のコルク銃が置かれている。
シン…、と静まる射的の屋台がこれから起こることを暗示していた。
楓「はっ!」
刹那、楓が動いた。
パンッ!
グラァ、と景品の札が傾く。が、力及ばず起き上がりこぶしの様に景品の札が戻ろうとする。
シア「ああ!おっしいー!」
稟「シッ、まだだ。」
キキョウ「まだ?まだって…」パンッ!
キキョウのセリフを遮り次弾が発射された。大きく札が傾く。
パンパンッ!
・・・・・・・パタッ
野次馬「おおーー!!」
なんと楓は単発のコルク銃を連射し一番倒しにくい札を倒したのだ!
流石は完璧超人、何事もそつがない。

樹「へぇ〜、さっすが楓ちゃん!こんな特技があったなんて驚きだよ。」
どこからともなく現れた樹がスタスタと楓に近づいていく。
あれ、あと一発まだ撃ってないよな。てことは…!
稟「まてっ!樹!近よるなっ!」
俺の制止も聞かずに樹はさらに楓の後ろに寄っていく。
樹「なに言ってんだよ、稟。楓ちゃん何を取ったんだ…い!?」
カチャリ
楓は振り向かずに銃口を樹に向けた。そして…
パンッ!!
樹「モゲェェェ!?」
二度目の奇声をあげて樹が倒れた。ヤッパリか…。
楓「私の後ろに立たないで下さい…。」
楓、 何 処 の ヒ ッ ト マ ン だ 。
コルク銃をコトッと置くと楓はいつもの顔に戻っていた。
楓「あ、稟くん。食器感想機当てましたよ♪」
稟「そ、そっか。よ、よかったなぁ。アハ、アハハハハ…」
…家にあるエアガンは楓に握らせたらいけないな。総滅させられかねん。特に樹が。
倒れた樹をやはりほっとき次に行くことにした。

693 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:05:43 ID:d/SlO/2k
だんだんと屋台の電気が消えていく。楽しかった縁日ももう終わりのようだ。
楓は幹夫おじさんを呼び出して食器乾燥機を持ってプリムラと先に帰るとの事だった。
シア「そう言えばリンちゃんは?」
稟「あー、魔王のおじさん達と帰るって言ってたな。樹は麻弓に手伝わされてたはずだし。」
結局帰りは三人ということになったわけだ。
キキョウ「ふ〜ん。」
ガシ、とキキョウが腕を掴んできた。
キキョウ「そしたらあたしたちだけなんだ♪」
シア「そっか、そうだよね。えいっ♪」
反対の腕にシアが抱きついてきた。
稟「ふ、ふたりとも、その、これ意外と恥ずかしい、かな。」
何度もやられて流石に慣れてきたけど、やはり男としては耐えがたいものが…。
キキョウ「いいじゃない、減るもんじゃないんだし。」
シア「それとも、稟くん…イヤ?」
稟「それはない。絶対ない。断じてない!」
シア「ならおっけーッス♪」
キキョウ「問題なし♪」
いや、だからそうじゃなくて、俺も健全な男子ですから。その、俺の体の一部が元気に…
耐えろ、耐えるんだジョー!
キキョウ「ね、稟」
稟「うん!?」
現在の状況に自然と声が上ずってしまう。
シア「稟くんの、欲しいな…」
稟「うぇ!?」
いやいやシアさんあなたこんな所ででいきなり何を!?
キキョウ「お願い。稟…」
まあ、その周りに人はいないけどその、やっぱりこんなところでなんて…。
稟「いや、その、ここじゃなくてもどこか別の場所でいいんじゃ…」
いきなり二人が呆れた表情になった。
キキョウ「稟、何か勘違いしてない?あたしたちは、その、キスしてほしい…って言ってるんだけど?」
シア「稟くん…、もしかして…したいの?」
あれ?もしかして俺、墓穴掘った?しかしこれは…
キキョウ「稟がしたいならあたし達は別にいいんだけど…」
シア「私たちはとっくに稟くんのものなんだからその、遠慮すること、ないよ…?」
どうやら、墓穴どころか天国への近道を掘ってしまったらしい…。
稟「シア、キキョウ…」
俺は二人の艶かな唇を奪った……。


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694 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/05/03(木) 16:06:52 ID:d/SlO/2k
終わりッス♪

難しいお題だった…。

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