8 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:32:39 ID:5JLL1eBO
えーと、過去編しか書き上がってないけど投下します。
樹主観で禀との会話が主だから、麻弓の登場が減ってしまった…。後編ではもっと登場させるつもりです。
レスは控えてね。
9 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:34:34 ID:5JLL1eBO
『ポーーーーッ…』
汽笛が鳴り響く。外は闇夜。漆黒の宵闇。風景が見えないのがうら寂しい。
禀「しっかしまあ、修学旅行が魔界だとはな。」
流石はバーベナ学園の修学旅行と言ったところか。
樹「俺様はどちらかと言えば神界に行ってみたかったんだけどね。」
ここは魔界の寝台列車の休憩室。時間は深夜二時をまわっている。長い車両の最後尾の車両である。
バーベナ学園は新しい学園なので試験的な試みとしてクラスごとの生徒自身にある程度日程を組ませていた。
普通ならもうホテルにチェックインしている時間だがプランを組みすぎて寝台列車で夜間行軍になってしまった。
意気揚々と「どうせなら全部回るのですよー!」と言う麻弓とノリノリでクラスを纏めた。禀の及び知らぬ所で。
勿論プランを組んだのは俺様と麻弓。無論、裏で!

しかし、こんな時なぜ俺様は禀と一緒なんだ…
樹「なぜ俺様は禀と一緒なんだ!普通は可愛らしい女の子とイチャイチャラブラブ♪だろう!?」
禀「手当たり次第女の子を誘い続けるお前のせいだ。」
確かに加奈子ちゃんに声をかけた直後にリナちゃんにアタックしたのはまずかった。
樹「くうぅ、あのときの失敗は痛かった…。肉体的にも精神的にも…。」
麻弓のやつ思いっきり背中蹴り飛ばしやがって…。
禀「麻弓の攻撃…最近激しくないか?」
樹「ああ、お陰で俺様は新しい世界に行ってしまうとこだったよ。全く何を考えてるのやら。」
禀「それ・・・ヤキモチなんじゃじゃないか?」
樹「ブーー!!ゲホッゲホッ!はあ!?なんで麻弓が!?俺様と麻弓は昔っからの腐れ縁だよ!」
麻弓なんか全然タイプじゃないっての。麻弓もそのはずだ。
樹「まあ、昔より仲良くなったのは事実だけどね。」
ふと、小学校時代を思い出した。あの頃は今みたいに真弓も俺も明るい子供じゃなかった。
禀「そういえば樹の中学以前の話は聞いたことないな。麻弓と出会った頃はどういう感じだったんだ?」
うーん、禀くらいなら話してもOKか?…タダでってのも面白くないか。
樹「…そうだな。この緑葉樹の燦然と輝き続ける過去を聞きたいのなら今度楓ちゃんの弁当を俺様に寄越すがいい!」
禀「却下だ。」



このやりとりの繰り返しを続けること十分…。遂に俺は負けを認めることとなった。
樹「……仕方ない。今回は特別サービス。そこの缶コーヒーで我慢してやろう…。」
何故だろうこのうら寂しい風景のせいだろうか。別に話さなくてもいいのに禀に聞いてもらいたくなった。
10 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:35:48 ID:5JLL1eBO
樹「俺様は昔から頭脳明晰。麻弓は昔っから勉強についていけてなかった。」
麻弓とは同じクラス。でも話すことはほとんど無かった。

―――

先生「緑葉。また百点だな。頑張ってるな。」
教室内からどよめきが起こる。
男子1「すげーな緑葉…」
女子1「すごいなぁ。頭良すぎだよね。」
男子2「やっぱ秀才は違うよな」
ふん、問題が簡単すぎなんだよ…。そして授業が終わり先生が出ていくと恒例の点数の比べ合いが始まった。
勿論俺様のところには誰も来るはずがない。無駄だからね。
ん、アレは…
男子3「おいおい、見ろよ。麻弓、今度は八点だぜーw」
男子4「うわぁ、こんな点数どうやったらとれるんだよw」
麻弓「やめなさいよ!おねがい!やめて!」
オッドアイの事で普段から苛められていた麻弓。誰も助けようともしない…。
―――正直イライラした。バカだろうコイツラ。
仕舞いにいじめっこ集団はテストには全く関係ない麻弓の目の事をネタにし始めた。
男子1「お前の目なんで左右違うんだよw」
男子2「ホントだよ。キモチワリィw」
麻弓「うぅぅ…」
遂に麻弓が泣き出した。見ているこっちが泣きそうなほどに…

―――ブチッ

何かが切れる音がした。
樹「いい加減にしろ!お前等!!さっきから黙ってりゃ好き放題女の子に言いやがって…!」
男子2「な、なんだよお前には関係ない…」
樹「大体お前等人の事言えるのか?平均三十点以下のお前等が!」
男子1「う、うるせぇ!それとこれとは関係な…」
樹「大体お前等自分の顔鏡で見たことあるのか? タコ に 馬 に ダルマ に サル。」
言えて妙なり、な四人の顔にクラス中が笑い出す。
男子1「て、てめぇ!!」男子4「お、覚えてろぉー!」
あ、逃げやがった。分かりやすい小悪党って感じだな。
ふん、たわいもない…。…ん?
チョイチョイ…
振り向くと泣き止んだ麻弓が俺の袖口を引っ張っていた。
麻弓「あ、ありがとう…みどり、ば、くん…。」
グスグスと潤んだ瞳で上目使いに見上げてくる麻弓。
少なからずその瞳にドキッとした。この目を気持ち悪いなんて言う奴はバカだ。俺様がそう決めた。

この時から俺様たちは友達になったんだと思う…。

11 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:37:57 ID:5JLL1eBO
帰り道。
普段は一人で帰る帰り道。
もともと友達なんて居なかった。皆が俺を別格視して近寄ろうとはしなかった。
むしろそれでよかった。めんどくさいだけだから。
でも…、今日は違った。

樹「いつまで着いてくるんだよ。」
麻弓「…家、コッチだから…」
樹「ふーん、そう。」
何だか気恥ずかしくて、あえて冷たい態度をとっていた。
でも一人じゃないことがとても嬉しかった。
麻弓「緑葉君は…いつも一人で帰るの?」
樹「めんどくさいからね。クラスの奴はしょうもない奴ばっかだし、話してると頭痛くなるよ。」
可愛い娘にイタズラしたいのは分かるけど手加減できないような最悪なヤツラだし。
麻弓「私と帰るのも…イヤ?」
麻弓が申し訳なさそうに聞いてくる。なんか、こんな顔で言われるとこっちが悪いみたいじゃないか。
樹「いや、別にそんな事はない。嫌ならとっくに逃げ出してるね。神界辺りまで。」
麻弓「ホントの…ホントに?」
パアッと麻弓の顔が明るくなる。
麻弓「じゃあ、と、友達に…なってほしいの…ですよ。」
樹「…別に構わないよ?」
言われ慣れない言葉に少し考えたが、断る理由は見当たらなかった。
今思うと同じように一人だった麻弓に仲間意識みたいなものがあったのかもしれない。
次第に自分の家と麻弓の家の分岐点が近づいてきた。
麻弓「じゃあね!緑葉君、ま、また明日!」パタパタと駆けていく麻弓の背中を見続けていると、クルリとこちらを向いた。
麻弓「今日は…ありがとう。とっても、とっても嬉しかったよ!」
ヒラヒラと手を振りまた
駆けていく麻弓。
それからは毎日のように一緒に帰った。ただ、それだけの事。それだけの事がとても嬉しかった…。



禀「なあ、樹。」
樹「なんだい、禀。」
禀「それは、本 当 に 麻 弓 な の か ?」
樹「残念ながら。俺様としてはあの頃の麻弓のままでいてほしかった…。」
禀「一体何があればあそこまで性格変わるんだ!?」
禀は信じられんと言った表情だった。俺様だって信じられん。いや、信じたくないね!
まあ、キッカケ作ったのは俺様な訳だが。

12 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:41:01 ID:5JLL1eBO
麻弓「緑葉君…、これ…」
それは小さなデジタルカメラだった。
樹「まゆみにやるよ。俺は使わないし。」
親が買ってくれたものだったけど、いいんだ。麻弓が苛められるのは見たくない。
樹「いいかい、麻弓…」 だから、俺が守らなくても麻弓が自分を守れる方法、考えたんだ。



禀「ま、まさかそれが…」
樹「そのまさかだよ、禀。嫌な言い方をするなら脅迫写真さ。」
禀「お前か!お前が諸悪の根元か!」
樹「そのお陰で控えめな性格から攻撃的で明るい性格になったけど…子供の時とはいえ物凄い事を教えてしまった…」
顔から冷や汗が流れる。
樹「ま、まさか、あんな写真撮られるとは…。」
中一位の時に麻弓の胸は洗濯板みたいだと冗談めかして言ったがその後の報復は凄まじいものだった。
樹「お父さん、僕もうお嫁に行けない!たーすーけーてー!!」
禀「お前も苦労してんだな…。」

その写真は間違いなくエビフライだった…。
13 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:43:04 ID:5JLL1eBO
樹「エビはいやぁぁぁぁああぁ!!!」
カタカタガタガタガクガクブルブル!
禀「お、落ち着け樹!」
樹「はあ、はあ、…す、すまない、禀。」



まあ、そんなわけで、俺は麻弓と同じ中学へ進学、やはり同じクラスだった。
そして…中学二年の終わりに禀に出会った。
麻弓をチンピラモドキにバカにされたのがキッカケだった。
何故だろう。いつも自分が冗談めかした事を麻弓に言ってるのに他人に言われると頭に来る。

樹「お前等鏡見たことあるのか?この猪 鹿 馬鹿。」
チン1「猪!?」
チン2「鹿!?」
チン3「おいちょっと待て!なんで蝶じゃねーんだ!?」
樹「お前に蝶は勿体無い。むしろ俺様にこそ相応しいね。」
チンども「てめぇ!」
チンピラたちが殴りかかろうとした刹那
禀「やめろ!」
猪「なんだてめえ!!」
禀「横から聞いたらそいつの彼女馬鹿にしてるだけじゃないか!」
誰だこいつ?なんで俺に味方してんだ?
鹿「かまうこたねぇ。やっちまえ!」



禀「イテテテ…大丈夫か?」
樹「…この位の輩、俺様一人で十分だったんだ。俺様は頼んだ覚えはないぞ。」
禀「フウ…。いいだろ、俺が好きで助太刀したんだから。」
チンピラたちは今は足元に転がっていた。ふん、くちほどにもな…い?
どうにも足元が覚束ない。ちょっともらいすぎたか。楓「禀くん大丈夫ですか!?」
禀「ああ、なんとか。」
楓「ああ、こんなに血が出てる!早く帰って治療を!」
禀「大丈夫だって」
楓「大丈夫じゃありません!」
今度はなんだ?アイツの彼女か?それにしても…可愛い!!ハッキリ言って超一級だ!!
禀「わるい、おれそろそろ帰るわ。」
樹「…フン。…じゃあな。」
そいつはニカッと笑顔を残して、そしてそのコは会釈をして帰って行った…。
樹「…世界は広いようで狭いものなんだな。」
まさかこの街にあんな可愛いコがいようとは…

14 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:44:21 ID:5JLL1eBO
麻弓「緑葉君!?どーしたのその傷!?うーわー超痛そうなのですよ…。」
マズい。見つかってしまった。今はコイツには見つかりたくなかったのに…。
樹「ああ、猪鹿馬鹿という新種の生物(なまもの)に追いかけ回されたのさ。」
麻弓「えぇ!?新生物!?どこどこ!?」
騙せたか?いるわけないだろそんな生物。あーあ、目ーキラキラさせちゃって…
カメラを構えキョロキョロする麻弓を通り過ぎようとしたとき…。
麻弓「って、ち が あ ぁ ぁ ぁ う !と、とにかく家で治療よ!」



麻弓「はい出来た♪」
何故だろう、傷の手当てをしてもらったのに不快だ。
麻弓「結構包帯必要だったのですよ♪」
麻弓はなんだか御機嫌だ。
樹「麻弓。俺様は今から棺桶にでも入れられるのかい?」
もう、何て言うかファラオ。ファラオそのもの。ファラオ以外の何者でもない。麻弓「なんなら棺桶用意してあげるわよ。金ぴかのゴージャスな奴♪」
全く…冗談に聞こえないのが怖い…。だけど文句を言うと治療が緊縛になりそうだ。
樹「まあいいや、俺様は眠いんだ。ちょっと『枕』を借りるよ。」
俺は麻弓と逆をむいて頭をもたげた。その『枕』はとても、気持ちいいものだった。
麻弓「ちょっと!緑葉君!?」
驚いた麻弓は声をあらげた。それもそのはず、『膝枕』なのだから。
樹「んー?…俺様はクタクタのボロボロなんだよ。だから寝る。待たない。」
麻弓「ちょっと待ちなさい…!……先に言われると困るのですよ!」
すー、すー…
もうほとんど寝てしまった俺は微睡みの中でその言葉を聞いていた。
麻弓はため息をついて仕方ないといった雰囲気だった。
麻弓「クスッ…おやすみ。樹くん」

15 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:45:39 ID:5JLL1eBO
禀「へえ、お前等にそんな思い出があったとは。」
ニヤニヤしている禀が無性に腹立たしい。やっぱり話すべきじゃなかったか?
樹「まあ、麻弓は悪友みたいなものだよ。腐れ縁ってやつだね。」
禀「ホントにそれだけか?」
禀が怪訝そうな顔で聞いてくる。
樹「それ以外に何があると言うんだい?禀。」
禀「例えば…樹が好きな女の娘とか?」
樹「ブフーー!!」
再びコーヒーフイタ…。いきなり何言い出しやがる、コイツ。
樹「おい!禀!なんで俺様があんな天然洗濯板を好きになるんだい!?」
まずありえない。他にもシアちゃんや楓ちゃん、ネリネちゃんだって居るのに。なぜ麻弓!?
樹「大体あんな有名なクライマーでも登れそうにない絶壁の様な麻弓を好きになんてなるはずも無いだろう!?…ん?」
なんでコイツはこんなにもひきつった表情なんだ?
樹「どうした?禀。」
麻弓「ほほーう、緑葉君はそんなにエビフライが恋しいと。」
あれぇ、おかしいなー?ここには禀と俺様しか居ないはず。
ギギッギギギッギッ
回らない首を回して振り向くとそこには…
樹「ま、麻弓さん。いつからソコに…?」
麻弓「緑葉君がコーヒー吹き出した辺りから。さーて覚悟は済んだかしらー♪」
樹「ま、まてまゆ…」
麻弓「えびっふりゃあー!!」
樹「待つんだ麻弓っ…う、あ、そこはだめーっ!」

アッー!…

虚しく俺の声が響いた…。
16 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/04/13(金) 22:51:09 ID:5JLL1eBO
前編終了です。
出会いの時期が確認したかったのは中学でこの展開はないだろ、と思ったから。
まあ、あるていどいつであろうと読めるように改編しました。

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