270 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:35:13 ID:LLLKw+dT
すいません、むっちゃ待たせまくりです…謝るので許してください

やっと出来ました…
今からゆっくり投下するのでレスは控えてね?
271 名前:ストロベリィキャンディ後編1/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:37:01 ID:LLLKw+dT
稟「しっかし暖かいなぁ。神界の気候は安定してるって聞いたけど…」
俺は今、神界に旅行に来ている。
麻弓「ほんとなのですよ。まさかこんなに暖かいとは夢にも思わなかったわね…」
いや、間違いだな。『俺達は』今、神界に旅行に来ていた。
もちろん麻弓と二人きりで。

現在『門』から入ってすぐの場所に居るのだが人間界は秋なのに春のような陽気だ。
人間界に初めて来た神族は体調を崩しやすいって聞いたがこういうとこに理由があるのかもな。
麻弓「見て見て土見くん!雲があんな低いところ飛んでる!」
稟「おお!宮崎作品で見たことあるような風景だな」
見たことのない鳥が飛び雲が吹き抜ける様は正しくラピュタそのものであった。
稟「さて、町のほうに行ってみるか。麻弓?」
カシャッ カシャッ!
麻弓「ん〜!撮りたいものが多すぎるのですよ〜♪」
稟「お〜い?麻弓さーん?」
麻弓「うわ〜、なんだろあの動物。可愛いのですよ〜♪」
だめだこりゃ…全く聞いてないな…。
まあ、時間はたっぷりあるんだしここでゆっくりしても問題ないか。
稟「今回は写真撮影のための旅行だしな」
はしゃぎまわる麻弓に苦笑しつつも、俺はこういう子供のような麻弓の純心な笑顔も悪くないと考えていた。



稟「おーい、麻弓…いつまで撮るつもりなんだ…」
かれこれ30枚ほど撮った気がするんだが…
稟「そんなに撮ったらフィルムも無くなるんじゃないか?」
今回はもちろん趣味用のカメラで撮影しているのでフィルムにも限りがあるはずなんだが…
麻弓「心配いらないのですよ♪無限バンd…」
稟「うそつけぇぇぇ!」
そんな残数制限なしの便利アイテムあってたまるか!
麻弓「もう、土見くん、ノリ悪いわねぇ…。もっちろん沢山持ってきたのですよ〜♪」
そう言って麻弓は嬉しそうにバッグの中を開いて見せた。
…百越えてんじゃないか?これ…
麻弓「総フィルム個数120個!いや〜これだけ集めるのは流石に苦労したのですよ♪」
稟「よくこんなに持ってたな…」
麻弓「写真部の人達をちょっと脅…コホン、写真部の心優しい方々から賜ったのですよ♪」

エビフライの犠牲者がそんなところまで…
写真部部員さんたちへ
心から哀悼の意を表明します…

麻弓「さて、そろそろ町の方を散策してみない?」
稟「そうだな、時間があるとはいえ宿のチェックインの時間もあるしな」
早めの行動に越したことはないか。

272 名前:ストロベリィキャンディ後編2/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:39:45 ID:LLLKw+dT
麻弓「はー…賑やかな町なのねぇ」
先程までの雄大な風景とはうってかわって少しうるさいほどの街中の喧騒が姿を表した。
麻弓「街中までは雲が入ってこないのよね。なんだか不思議なのですよ」
稟「街全体に雲避けの結界が張ってあるらしいぞ」
まあ、害は無いんだが視界が悪くなるって理由で雲は入って来ないようにしてあるそうだ。
稟「しかし…、異国情緒溢れる風景ばかりだと思ってたけど、どこか和風テイストな建物まであるな」
麻弓「神王様の政策の一環らしいんだけど…かなりの誤解がありそうね」
開門により繋がった場所は言わずと知れた日本の光陽町。
というわけで日本に親しんでもらおうと和風文化を取り入れた建物等を建てているのだが…
稟「一言で表すならカオスだな…」
麻弓「でも、見てる分には面白いんじゃない?あぁ!見て土見くん、江戸村みたいなとこまである」
麻弓が指差す先には完全に和風になってしまっている通りがあった。
稟「な、なんか来る時代すら間違えたような錯覚に陥るぞ…」
神王さま、これじゃ現代日本じゃなくて江戸です…。日本が誤解されてなきゃいいけど…
麻弓「あ、土見くん、お蕎麦屋さん寄ってみない?」
麻弓が示す方には『神魔蕎麦』という暖簾が掛かった蕎麦屋があった。
稟「そうだな、少し腹も減ったしここらで腹拵えといきますか」

…カラカラカラ
稟「それほど混んでないみたいだな」
麻弓「ごめんくださ〜い」
神王「へい、ラッシャイ!」

・・・

稟&麻弓「失礼しましたー」
神王「待てや稟殿、嬢ちゃん」
その場を何事もなく立ち去ろうとした俺と麻弓をガシィと大きな手が掴んだ。

稟「だからなんで神王のおじさんがいるんですか!」
神王「なんでぇ、まるで俺が居たらいけねぇみたいじゃねえか」
いけないだろう…常識的に考えれば…
まあ、常識なんて今更この人に通じるわけないんだけど。
魔王「神ちゃん、稟ちゃんが驚いてるじゃないか。取り敢えずその手を退けてあげなよ」
神王「おっと、すまねぇ…」

…心のどこかで予想してはいたがこの人までいたのか…

稟「やっぱり魔王のおじさんもいるんですね…」
魔王「ん?どうしたんだい、稟ちゃん。そんなつかれた顔をして?」
蕎麦屋の調理服に身を包んだ魔王なんて魔族ですら見たことないんだろうな…
274 名前:ストロベリィキャンディ後編3/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:41:38 ID:LLLKw+dT
麻弓「あの〜、ここはお蕎麦屋さんでいいんでしょうか…?」
麻弓がおずおずと二人に聞き返した。そうだよ、俺達は蕎麦を食べに来たんだった。
神王「あたりまえじゃねーか。嬢ちゃん、暖簾を見なかったのか?」
魔王「ここは神魔蕎麦。列記とした蕎麦屋だよ」
稟「いや、その蕎麦屋になんでおじさんたちが…」
二人の顔がキリリッとしまった。
魔王「稟ちゃん。これは私達の仕事なんだよ。人間界と神界魔界の交流を深めるための」
神王「つまり、半分は異種族流のための政策の一貫だな。俺達がいいと思ったものをこちらにも広める事が交流に繋がるって訳よ」
なるほど、人間界の事を広めておくことによって神族の人達に異種族である事の違和感を無くしてもらおう、ということか。
稟「でも、半分は政策で、あと半分はなんですか?」
いきなり二人のキリッとした顔がにやけ顔に変わった。あ、嫌な予感…

神王&魔王「勿 論 趣 味 ♪」
稟「やっぱりかぁぁぁ!!」
考えてみりゃこの人たちがやる意味はないよな…。
麻弓「つ、土見くん、落ち着いてっ。取り敢えずお蕎麦頼むのですよ?」
ハッ、そうだった。腹拵えに来たのをすっかり忘れてた。
稟「はぁ…、そうだな…。」
今更言ったところでどうにもならないか。魔王のおじさんの料理ならまず心配ないし。
しかし、変わった名前のメニューの蕎麦が多いな。
麻弓「じゃあ…、あっ、この『神界天せいろ』を一つお願いするのですよ♪」
稟「俺は、そうだな…、『魔界とろろそば』をお願いします」
神王「あいよっ!おい、まー坊!神天せいろ一丁と魔界とろろ一丁だ!」
魔王「ほう、二人ともお目が高いね?すぐに作るよ。神ちゃん、麺を準備してくれるかい?」
神王「おぅ!まかせときなぁ!!」



神王「へいおまちっ!」
麻弓「おお〜スゴいのですよ…」
稟「神界と魔界を具現化したような蕎麦だな」
思わず見入ってしまうような蕎麦に俺達は圧倒されていた。
『神界天せいろ』は普通の蕎麦より白い麺と雲を彷彿とさせる天ぷらが魅力的な蕎麦であった。
方や、『魔界とろろ蕎麦』は深めの器に入った黒めの麺が特徴的な蕎麦であった。

稟「それじゃ早速…」
麻弓「待って!一枚記念に撮るから」
麻弓はそう言ってカメラを取り出した。
ーーカシャッ
麻弓「う〜ん、『神魔蕎麦』オススメメニューってとこかしらね♪」
魔王「のびないうちに食べておくれよ?これでも自信作なんだからね?」
稟「麻弓、その位にして取り敢えず食べようか?」
せっかくの蕎麦をのばしてしまうのは勿体無いからな。
麻弓「でわでわ、いただくのですよ♪」

275 名前:ストロベリィキャンディ後編4/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:44:45 ID:LLLKw+dT
ズルズルズル…

流石に味が元から保証つきだから美味いな!
麻弓「ん〜♪おいしー♪」
さて、食べ終わったらどうしようか…。大した予定を組んでる訳じゃないからなぁ。
稟「そう言えば神界のおすすめの観光スポットなんてありますか?」
俺達だけで歩き回るより神王のおじさんに聞いた方が間違いないだろう。
神王「観光地ねぇ…、パッと聞かれると思い付かねぇな…」
魔王「今回の稟ちゃん達の旅行は何か目的があるのかい?」
麻弓「一応、神界の写真を撮って回ろうかと思っているのですけど…」
暫し、神王のおじさんは考えると何か思い付いたのか手を打って見せた。
ポンッ
神王「おぉ、それならいいとこがあるぞ!」




バサァッ
ゴオォォォ!
稟「おおぉぉ!た、高い!」
神王のおじさんの好意でちょっとした穴場のスポットに行くことになったが…
稟「い、移動手段がこんなに原始的だとは思わなかった…」
俺と麻弓は今、ロック鳥のように巨大な鳥の背中に乗っている。
ロック鳥『グルルル…(そんなに高いか?これでも低く飛んでるのだが…)』
稟「にに、人間にとっては高いんですよ!!」
ロック鳥『グルル…(情けないな…それでもユーストマに認められた男か?)』
この巨大なロック鳥は神王のおじさんとは長い付き合いらしく、おじさんの事も呼び捨てている。
今回、俺達のために一肌脱いでくれたわけだが。
因みにこのロック鳥は意思を持っていてテレパシーの様なもので俺達に意思を伝えてきているらしい。
こちらの言語もちゃんと解しているところ、「鳥頭」ではないようだ。

稟「麻弓?だ、大丈夫か?」
麻弓「え?何が?」
…何で平気なんだ。
あっけらかんとしている麻弓に驚きつつ、俺は落胆のため息を小さく溢した。
稟「ハァ…(情けないな、俺は…)」
麻弓「見て土見くん、町があんなに小さい…」
遥か眼下には先程の街が小さく見えていた。
稟「本当だな…、航空写真を見てるみたいだ…」
麻弓「ここはホントに航空写真を撮るしかないのですよ♪」
そう言っていとも簡単に麻弓は立ち上がりカメラを構えた。
…危なくないか!?それ!?いや、絶対に危ない!!
稟「やめろ!麻弓!危ないぞ!?」
麻弓「なによー、このくらいで大袈裟ね?」
カシャカシャッ
麻弓は気にも留めないといった様に写真を取り出した。
稟「麻弓…見てるこっちの心臓に悪い…」
麻弓「心配性ね〜?このくらい大丈夫よ♪むしろへっちゃ……ら?」
不意に麻弓が視界から消え去った。

これは…、間違いない!麻弓がロック鳥の背から足を滑らせたんだ!!
276 名前:ストロベリィキャンディ後編5/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:47:41 ID:LLLKw+dT
頭で考えるよりさきに身体が動いた!
麻弓「いやあぁぁぁぁぁぁ!」
稟「麻弓っ!!」
麻弓の姿が見えなくなるのとほぼ同時に俺はロック鳥の背から飛び降りた。
稟「おおおおぉぉぉ!」
麻弓は…どこだ!?……!…居た!
10m程先に見知った黒髪を発見して、俺は無我夢中で空気を掻いた。
麻弓「稟くんっ!」
稟「麻弓ィィィ!!」
あと少し…、あと少しで…とどく!
互いの距離が段々と縮まり、遂に麻弓の体を掴まえることに成功した!
稟「麻弓っ!」
ガシと麻弓の体を庇うように抱え込むと俺は覚悟を決めて目を瞑った。

…あれ?

身体が浮いてるみたいだ………俺、死んじゃったのかな…?

そっと目を開けると先程まであんなに遠かった地面がかなり近くにあった。
稟「生き…てる?」
いや、もしかしたら臨死体験ってヤツか?俺はもう既に死んでるんじゃ…
麻弓「ど、どうなったの? 私達生きてるの…?」
ああ、麻弓がここに居るってことは同じ臨死体験を…ってあれ?
ロック鳥『グルルルゥ!(全く…世話の焼ける奴等だな!)』
よく見ると俺の服の背中の辺りをロック鳥が掴んでくれていた。
ロック鳥『グルル…(お前達人間は空を飛べんのだから無茶をするな…)』
稟「ど、どうもすいません…」
麻弓「ごめんなさい…」
ロック鳥『グル…(ふん…度胸は認めてやるがな)』
ロック鳥は俺達を背中に乗せ直すと再び大空へと舞い上がった。
麻弓「今の土見くん、かなりカッコ良かったのですよ♪」
稟「いや、こっちはホントに気が気じゃないぞ!」
全く、どんな心臓してるんだか…
麻弓「ありがとう…、稟くん…」
背中越しに麻弓がしっかりと抱き締めてきた。麻弓の手が微かに震えていた。
…怖いなら怖いと言えばいいのに。
稟「ふぅ、今度はしっかり掴まっとけよ?」
麻弓はコクリと小さく頷いた。こういう殊勝さがある麻弓も可愛いもんだ。
ロック鳥『グルル(見せ付けてくれているが お ま え も な )』
稟「スイマセン…」



稟「死ぬかと思った…」
まさか、旅行に来てまで生と死の狭間を体感するとは思ってもみなかった…。
ロック鳥『グルル…(では儂は帰るぞ。お前達の目的地はあちらだ…)』
麻弓「帰りもまた、お願いするのですよ♪」
か、帰りも乗らないといけないのか…。てか、麻弓…既に平気なのか…。
ロック鳥『グルルル…(ふん、気が向いたらな…)』
バサァッ!
大きな羽音をたててロック鳥は空の彼方へ消えていった…。

277 名前:ストロベリィキャンディ後編6/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:48:58 ID:LLLKw+dT
稟「しっかし、この先に何があるんだろう?」
麻弓「神王様も教えてくれなかったし…」
神王のおじさんは「行けばわかる」って言ってたけど…
麻弓「あ、あれじゃない?」
そこには小さなトンネルの様な穴があり、それはどうやら向こうに通じているようだ。
稟「どうやらこの先みたいだな。行ってみるか」
向こうも明るいし何処かに出る場所なんだろう。

…コツコツコツ

麻弓「うわぁ…綺麗…」
稟「へぇ…これは、凄いな…」
トンネルを抜けるとそこには小さな入り江があった。稟「これは…、単なる入り江じゃないな。見てみろ麻弓」
麻弓「光っ、てる…?」
太陽の光だけではなく水自体が白く輝いていた。
興味本意で手に掬うと、その輝きは徐々に失われ、ただの水に戻っていった。
稟「どうやら魔力的な物で光ってるっぽいな」
麻弓「カメラに写るのかしら?これ…、一応撮ってみるのですよ」
カシャカシャッ――
視覚的に見えるから写るだろうが、淡すぎて分からないかもな…
稟「夜に来られれば良かったな」
麻弓「残念ね……あ、土見くん♪泳いでみない?」
稟「泳ぐ?水着持ってきてないぞ?」
麻弓は分かってると言った様にニッコリとした笑顔を浮かべた。そしてトトトッと俺の後ろに廻ると…
麻弓「えいっ♪」

 ん ?

稟「うわ、うわわわわわ!」
ザバーン!
稟「ガバゴボッ!プハッ!!麻弓!いきなり何する…ん?」
麻弓「とうっ!」
稟「ちょっと待てぇぇぇー!!」
ザバーン!
麻弓「ぷはっ!…あれ?土見くん?」
稟「ゴボゴボゴボ!(麻弓ー!下!下!)」



稟「全く…上くらい脱がさせてくれよ…」
服を着たまま水につかっているのはどうにも違和感があるな…。
麻弓「いいじゃない。着替えればなんの問題も無いのですよ♪」
麻弓は小悪魔的な笑顔でウィンクしてみせた。
…そんな問題でも無いよな…着替えも二着しかないし。
稟「ま、いいか。今は泳ぐのを楽しんでおこう」
麻弓「そうそう、『同じ阿呆なら泳がにゃ損損』なのですよ♪」
俺は至極無理矢理に阿呆にされたんだが…
稟「ええぃ!ここまできたら阿呆でもなんでもいい!とことん泳ぐぞ、麻弓!」麻弓「そうそう♪複雑に考えないのが一番なのですよ。えいっ♪」
バシャッ!
麻弓が掬った水を俺目掛けてかけてきた。
稟「わっぷ!……や っ た な ?倍返しだっ!」
バシャアア!!
麻弓「ちょ、ちょっと酷いのですよ!? じゃあこっちも!」
バシャバシャ!!

そのあとの麻弓VS俺の水の掛け合いはとどまることを知らなかった…

278 名前:ストロベリィキャンディ後編7/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:51:43 ID:LLLKw+dT
稟「ホテルが近くて良かったな。」
予約していたホテルは実はあの入り江の近くだった。
移動も簡単に考えてたけど、距離的にロック鳥に送ってもらって正解だったかもな。
麻弓「しっかし豪勢なホテルよねぇ。本当にあんな格安で良かったのかしら…」
稟「一応新王のおじさんに探してもらったからなぁ…。やっぱり顔が利くんだろう」
いや、ホントに新王のおじさんに感謝感激だな。さて、俺たちの部屋は…
麻弓「確か507号室だったわよね?」
稟「ああ、えーと507507…お、あったぞ。ここだな」
カチャカチャ、カチン
ガチャ…

樹「いらっしゃいませ、御主人様♪」

パタン…

稟「俺は何も見てない。何も見てないぞ。メイド服姿の樹なんて見たこともない。」
麻弓「どうしたの?土見くん、早くはいるのですよ?」
稟「いや、幻だと思うが…変なものが見えた」
507は…やっぱりここだよな。うん、気のせいだよ気のせい。
ガチャ
樹「ひどいじゃないか、稟。せっかくこんな格好までしたのに」
やっぱりいるよ…
稟「樹…なんの嫌がらせだ」
樹「俺様だってこんな格好をしたいわけじゃなかったんだけどね…言い出しっぺの罰みたいなものだよ」
樹は深い溜め息をついた。どういうことだ…?
と思った矢先に後ろからメイド服姿の見慣れた五人が現れた。
シア「あっ、お帰りなさいませ、稟くん♪」
ネリネ「お帰りなさいませ、稟様♪」
楓「お、お帰りなさいませ、稟くん…」
亜沙「お帰りなさいませ、遅いぞー?稟ちゃん♪」
プリムラ「お帰り……稟……」

やっぱり全員いるわけね…
稟「なんでみんなこの部屋を知ってるんだ…」
シア「もちろんお父さんが教えてくれたんだよ♪」
ネリネ「それならみんなで行った方が楽しいだろうと、お父様が…」
稟「やっぱりかぁぁぁぁ!!」
よく考えりゃ新王のおじさんがいやに優しくしてくれたのはこういう理由か…。
親バカと言うか何と言うか…。俺には麻弓という恋人がいるのに…。
稟「それで…、その格好は?」
プリムラ「……稟が喜ぶからって…樹が言った……」
そんな理由ですか…。嬉しくない訳じゃないけど。
稟「じゃあ、あの得体の知れない怪生物は何なんだ?」
そう言って俺は目線も向けたくない物を睨んだ。
樹「怪生物とは言ってくれるね、稟。さっき言ったろう?言い出しっぺの罰だって」
亜沙「ボク達だけ着たら一人だけ得する人がいるでしょ?だから、それを無くすため手を打ったわけ♪」
樹「つまりはギブアンドテイクってヤツだね。それなりに代償は支払わされたけど…」
279 名前:ストロベリィキャンディ後編8/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 19:53:11 ID:LLLKw+dT
麻弓「流石と言うかバカと言うか…、そんなことの為に恥を捨てられるのは緑葉君ぐらいなのですよ」
これはもはや呆れを通り越して尊敬の部類に入るな。その情熱をもっと別のとこで使えなかったんだろうか…
シア「稟くんの分のメイド服あるよ?」
稟「うぇ!?」
ネリネ「もちろん麻弓さんの分もです♪」
麻弓「あ、あたしも!?」楓「麻弓ちゃんはこっちですよ。可愛い服なんで似合うと思います♪」
麻弓「ちょ、ちょっと楓ぇ〜、リムちゃんまで…」
半ば強引に麻弓は楓とプリムラに部屋の奥の方へ連行されていった。
亜沙「さて、次は稟ちゃんの番かな」
亜沙先輩はとうとう次の標的を俺に定めてしまったようだ。
マ、マ、マズイ!!どうにか逃げないと!?
ガシッ
ん…?
樹「つーかまーえた♪」
俺はいつの間にか後ろに廻った樹に身体を抑えられていた。
稟「は、離せ樹!俺には女装趣味なんてないぞ!?」樹「奇遇だね、稟。俺様にも女装趣味はないよ?でも、仲間が欲しいじゃないか」
にこやかな笑顔で俺を抑え続ける樹に対して、俺はある感情を抱いていた。
…コイツ、いつ殺そう…
亜沙「さてお楽しみ!稟ちゃんのヌードショー!パチパチバチー♪」
一同「わーわー!パチパチパチー♪」
稟「公開処刑ですか!?ちょ、亜沙先輩やめ…!」

アッー!



稟「結局着ることになってしまった…」
樹「なかなか似合うじゃないか、稟」
稟「ほっとけ…」
旅の恥はかき捨て、と言うがいつものメンバーが居るんじゃ無意味だよな…。
落胆する俺の目線の先に猫の人形を抱えた女の子が微笑んでいた。
プリムラ「……麻弓は、着替え終わった…っ…」
どうやら俺の姿を見て笑いたいらしいがそれを隠しているつもりらしい。
いや、分かってるから。今の俺の姿が笑えるのは分かってるから!
シア「ほら、稟くん待ってるよ!」
麻弓「シアちゃん、そんな引っ張らないで…」
シア達に引きずられるように奥からメイド服に身を包んだ麻弓が出てきた。
ネリネ「さ、麻弓さん。稟様にご挨拶を♪」
麻弓「お、お待たせしました、土見さま…」
ドギューーーン!!(JoJo音)
稟「……きた」
麻弓「え?どうしたの?」
きたキたキターーー!!俺の直球真ん中ストライクゾーンかもしれない!
普段麻弓のこんな清楚な服装を見慣れない俺にはかなり刺激が強いようだ。
麻弓「どう、かな?あたしはこんな服似合わない気がするのですよ…」
280 名前:ストロベリィキャンディ後編9/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 20:13:33 ID:LLLKw+dT
まあ、胸が強調される服だしな。麻弓からすれば似合わないと思うかもしれないが…。
稟「たまにはそういう清楚な格好もいいんじゃないか?似合ってるよ。むしろバッチリ完璧!」
麻弓「ほんと?ちょっとうれしいのですよ…♪」
えへへ、と照れ笑いする麻弓に何だかこちらも嬉しくなってしまう。

ん?なんだか背中の方がチクチクするなぁ?
亜沙「ボクたちの姿を見たときとなんだか態度が違わない?」
ネリネ「麻弓さん、羨ましいです…」
え??俺、なんかやっちゃいけないことやっちゃいましたか?
稟「いやいやいや、皆ちゃんと似合ってますよ?」
プリムラ「稟…後付け……」
ギクリ…
稟「そそそそんなことないぞ!プリムラもちゃんと似合ってる!」
亜沙「そういうのは見たときに言ってあげないと女の子はちょっと傷付くんだよ?」
シア「稟くん、私達…そんなに魅力ない?」
稟「そ、そんなことは断じて無いんだけど、いやそのほら、な?」
まさに四面楚歌。
確かに俺のまわりには魅力的な娘が多すぎるけど「彼女」が居る手前そんなこと言うわけにはいかん!
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、亜沙先輩が背中の方から抱きついてきた。
亜沙「こ・れ・で・も♪魅力ない?」
稟「あ、亜沙先輩!?」
シア「あぁー!?亜沙先輩ずるいッスー!わたしも〜!」
ネリネ「わ、私だって負けません!」
稟「ちょっ、ちょっま、助けてぇ!!」
あっちに引っ張られこっちに引っ張られ、ついには団子状態になっていた。
稟「誰か、助け……ん?」不意に麻弓の方を見ると笑ってはいるけど、どこか切なげな表情をしている。
稟「麻弓…?うぐっ?!」
樹「これでもか!これでもかぁ!!」
ぐおっ!?樹!!チョーク決まってる!タップタップ!
麻弓「やめんかぁ!おりゃあ!」
不意に目の前から麻弓の脚が飛んできて俺の頭上をかすめた。
ガスッ!!
樹「おぶっ!?……ピ、ピンク…」
樹…しっかり見るとこだけは見てるのな。(俺も見たんだが…)
言葉の意味に気付いた麻弓はヒールの長い靴で樹を踏みつけ始めた。無言で。
ガスッガスッガスッ!!
樹「オウッ!ぐぇっ!グァッ!こ、これはこれで気持ちいぐぇ!?」
樹…、だんだんM体質になってるな…

281 名前:ストロベリィキャンディ後編10/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 20:15:32 ID:LLLKw+dT
そうこうしてる内に夜になってしまったが…
稟「楓〜、麻弓を見なかったか?」
楓「え?見てませんよ?」
麻弓が忽然と姿を消してしまったのだ。どうやらホテル内ではないらしい。
稟「おかしいな、さっきまではいたのに…?」
ふと、麻弓のバックが目についた。
稟「開けたままだな…?ん?」
「あれ」が入ってない?麻弓のバッグには常時入ってる筈なんだが。
楓「どうしたんですか?稟くん」
あぁ、ならあそこかもな。神界で俺達が知ってる場所なんて極わずかだ。
稟「…ちょっと散歩してくるよ。すぐ帰ってくる」
楓「はい……?」



ササァー…
夜の海は何故だか神秘的で、そして少し怖い。
神界の海は波があまりなく波音も殆んど聞こえなかった。
カシャッ…ジー…
虚しくカメラのシャッター音が響く。
麻弓「ハァ…、やっぱり土見くんを呼ぶべきだったのですよ…」

稟「じゃあ、なんで呼ばなかったんだ?」
麻弓「そりゃあ……えぇぇ?!つ、土見くん!?」
麻弓は全く俺の存在に気付いていなかったらしく、いきなり現れた俺に声を裏返らせた。
稟「そんなに驚くなよ。…やっぱりここだったんだな」
そこは、昼間に来た輝く入江だった。
昼間とは違い淡い光が水面から浮かび上がっている。
麻弓「…夜に来ようと思ってたから」
そう言う麻弓はどこかバツが悪そうな表情をしていた。
稟「言ってくれれば一緒に来たのに」
麻弓「二人っきりで来たかったのですよ…。あそこで言ったらみんな着いてきそうじゃない?」
確かにそれもそうか。十中八九、いや、十割着いてくるな…。
麻弓「でも良かった。こうして土見くん一人で来てくれたんだもん♪」
稟「…俺も二人で来たかったからな」
俺と麻弓は互いの顔を見合せクスクスと笑いあった。
こういう麻弓の顔を見れただけでこの旅行に来た甲斐があったと思えるな。
稟「そうだ。記念撮影しないか?場所も丁度いいし」
麻弓「あ、名案ね♪しばし待つのですよ…」
近場のちょうどいい岩にカメラを乗せるとシャッターのタイマーをかけた。
…ジー…
稟「長いな…」
麻弓「長いわね…時間間違えたのかしら」
稟「そういえば…」
麻弓「え?」
あることを思い出した。さっきから引っ掛かってはいたんだが…。
稟「さっき麻弓、なんだか悲しそうな顔してた」
282 名前:ストロベリィキャンディ後編11/11[sage] 投稿日:2007/07/04(水) 20:17:44 ID:LLLKw+dT
みんなで居たときの切なげな麻弓の笑顔…あれが頭から離れなかった。
麻弓「やっぱり土見くんには隠し事できないのですよ。……えっと、えっとね?」
麻弓は少し答えにくそうに言葉を紡いだ。
麻弓「その、やっぱり他のみんなと比べたらやっぱり、その、胸とか魅力的じゃないのかなって…思ってたから…」
ああ、亜沙先輩達相手じゃそんな劣等感を抱いても仕方ないかもな。
麻弓「それにみんな女の私から見ても魅力的だし、土見くんがなびいちゃいそうで……怖い」
稟「なんだ、そんなことか」
麻弓「ちょっと、そんなことって!私にとっては大事な事なのですよ…?」
いつもネタにしてるけど、やっぱりコンプレックス持ってるんだろうな。
稟「麻弓がどんな胸だろうと俺は麻弓を好きになったから関係ない。麻弓だから俺は麻弓の隣にいるんだ」
俺はどこにも行かない。ずっと麻弓の傍にいる。これは変わることはない。
稟「だから、麻弓も俺の傍に居てくれないか?」
麻弓は顔を赤らめながら小さくコクンと頷いた。

麻弓「稟くん…」
稟「麻弓…」

カシャッ…



〜エピローグ〜

あの旅行から帰って来て数日。
俺の元にも麻弓の撮った写真がある。
神界の色んな所を撮って回ったため枚数も半端ではなかった。
神界の動植物、神族の人達、神魔蕎麦、ロック鳥からの航空写真、みんなメイド服での記念写真…

稟「でも、一番のお気に入りはこれだな」
あの日、入江で二人で撮った写真。

俺のアルバムの最後のページには麻弓との口付けが飾られている……。
283 名前:名無し ◆85siVFU0r. [sage] 投稿日:2007/07/04(水) 20:22:13 ID:LLLKw+dT
終わりなのですよ♪

すいません、2/11が2つありますね。書き込みミスです…。

時間かかりすぎた…
いいわけをさせてもらえば先月はどうにも忙しかったり風邪引いたりと大変だったんですorz
すまん!

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