450 名前:348[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:52:25 ID:5lLVzd7y
やめといた方がいいとか言われたくせに、結局携帯ネタが膨れ上がったので書いてしまいました…
出来る限り世界観を壊さないように注意したつもりですが、おかしかったりするところがあるかもしれません
異論・反論・突っ込みなどなど、何でも受け付けるんで遠慮なくどうぞ
451 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:53:07 ID:5lLVzd7y
1/6

「…稟さま、ダメ…ですか?」
「う、う〜〜ん」

縋るような視線を送るネリネに渋る稟。
ある休日の昼時、魔王邸のネリネの部屋にていつものように過ごしていた二人だったが、いつもと違う点が一つだけあった。
それは、二人の手元にある同じタイプの携帯電話。
先ほど購入したばかりでケースから出したばかりの新品だった。
実は、今時の若者であるにも関わらず、稟もネリネも今まで携帯電話を持っていなかった。

「自分で言ってて悲しくなるけど、俺って交友関係狭いし、何かとトラブルの元らしいしな。ちょっと不便ではあるけど…」
「稟さまが持っていらっしゃらないのですから、私も必要ありません」

というのが二人のスタンスだったのだが、付き合い始めて以降、会えない時間、主に夜間に電話をかける回数が激増してしまったため、お互いの家族に迷惑をかけているかもしれない、という疑念が発生した。
だからといって電話の回数を減らせるかというと、それにも首を傾げてしまう。
そうして悩み続けた二人であったが、

「私はいつでも稟さまの側にいたいですし、それが出来ないならせめてお声だけでも聞きたいんです…」

というネリネの言葉が決め手となり、携帯電話の購入を決定した。
そうして朝から二人でショップに出かけ、お揃いの携帯電話を購入して帰宅すると、さっそく携帯電話を弄り始めることになった。
セキュリティや知人のアドレスの登録などを終え、使う機会があるのか疑問視しそうな様々な機能などに二人ではしゃいでいるうちに、ふとネリネが何かを思い立ったように表情を輝かせて口を開いた。

「稟さま、私、稟さまの写真を待ち受け画像にしたいです!」

そうして話は冒頭に繋がるのだった。
452 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:53:47 ID:5lLVzd7y
2/6

「いや、なんつーか、そういうのって俺達のキャラじゃないっていうか、バカップルみたいで恥ずかしいっていうか…」

普段の自分たちの行いを全く自覚していないらしく、ぬけぬけとそんなことをほざく稟。
赤くなった頬をポリポリと掻きながら、恥ずかしそうに視線を逸らす。
おそらく親衛隊連中が聞けば、

「普段俺達の前で見せつけてるのは一体何なんだ!!」

と血の涙を流しながら襲い掛かってくるに違いない。
逸らした視線をチラリと戻すと、両手を胸の前で組み、僅かに潤んだ瞳で一心に自分を見つめてくるネリネの姿。
ネリネの“おねだりモード”発動に稟はううっと怯む。
この“お願いします、稟さま”という視線に稟は大層弱かった。
これだけでもかなり戦況は稟に不利になったのだが、ネリネはさらにとどめを刺しにきた。

「稟さまのお姿をいつでも見られるようにしたいんです、駄目ですか?」
「…ネリネ、それ反則。………分かった、いいよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」

ネリネの投下した爆弾に全面降伏する稟。
喜色満面で喜ぶネリネにまあいいか、と苦笑するしかなかった。

「…それじゃあ撮りますね?」
「あ、ああ。出来るだけカッコよく撮ってくれな?」
「大丈夫ですよ。だって稟さまはいつだって誰よりも格好良くて、素敵ですから」

恥ずかしさを誤魔化そうと冗談めかす稟だったが、ネリネのセリフに更に真っ赤になって口を噤んでしまう。
そうして微妙な沈黙が続く中、ネリネの携帯がカシャリとシャッター音を響かせた。

「上手く撮れたか?」
「はい、とっても綺麗に撮れ…」

途中で固まってしまうネリネ。
視線はその手元、携帯電話のディスプレイに釘づけになっている。
そこには微妙に緊張した面持ちの稟の肩から上の画像があった。
画質は綺麗でブレたりボケたりもしてはいない。
だが、稟の肩の上、何もない筈の空間に何かが映っていた。
ぼんやりとした、だがはっきりと視認できるほどの 人 影 の よ う な も の が 二 つ 。 
ネリネはギギギ、と首を錆びた機械のように動かし、稟を見つめ、思いきり叫んだ。

「稟さま、憑かれてます!!」
「へ? 別に疲れるようなことなんて何もしてないだろ?」
453 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:54:25 ID:5lLVzd7y
3/6

その後、

「憑かれてます!」
「いや、だから疲れてないって!」

と絶妙に噛み合わない会話を繰り返すこと数分、業を煮やしたネリネは一旦稟を部屋の外に出るよう懇願した。
自分の写真に何か問題があるのだろうが、結局ネリネがそれを見せてくれなかったため展開が全く理解不能な稟。
首を傾げながらもとりあえずネリネに従い外に出ると、部屋の中でネリネが走り回っているらしく、ドスンバタンと派手な音がたち始めた。
そしてさらに十数分後、ネリネの入って下さいとの声に再び入室した稟は、その変わりように呆然として立ち尽くしてしまった。

「…扉を開くと、そこは邪教の館でした」

思わずそう呟く稟。
洋風の豪奢なネリネの部屋は真っ黒なカーテンやクロスによって一切の光が差し込まないようにされており、魔力の灯りなのか、宙空に浮かぶ不思議な光体によって視界が確保されていた。
床一面には大きな六芒星が描かれて、その上には何かの肉?のような物が載せられており、銀色に鈍く光る短剣が突き刺さっていた。
黒一色に包まれたそんな怪しさ大爆発な部屋の中、稟の眼前に立つネリネは、何故か巫女装束に身を包んでいた。

「ネ、ネリネ、これは一体…」
「稟さま、これから悪魔払いを始めます!!」

ドン引きしている稟に鼻息荒く詰め寄るネリネ。
気合い十分といった感じで両腕にぐっと力を込めている。
そんなネリネに頭痛を感じながら、稟はこめかみを押さえながら呻くように呟いた。

「とりあえず、一つづつ突っ込んでいこう。まずネリネ、お前本当に自分が魔族だっていう自覚あるか?」
「え? はい、勿論」
「本当かよ…。じゃあ次、その格好はともかくこの部屋の様子はどう見ても悪魔払いじゃなくて悪魔召喚の儀式だろ?」

どう見ても生贄にしか見えない謎の肉?を眺める稟。
だが、ネリネは首を傾げながらも稟に反論の言葉を口にした。

「そんな筈は…。お父様に教わった通りにしたんですが…」
「お、おじさんが? …魔王が言うのなら本当なのか? 人間界には間違った知識が広まっていたということなのか…?」

ネリネの言葉に今までの自分、そして人界の中の常識が間違っていたのかという気になる稟。
他の者ならともかく、魔界の王がいうのならそれが真実なのか…? と悩みだす稟をきょとんと見ていたネリネだったが、愛する稟のため、と自らを奮起させると、莫大な魔力を身体中から放出し始めた。

「ではいきます! エロイムエッサイムエロイムエッサイム、我は求め訴えたり! ……えいっ!!」

両の掌を使って六芒星を作り、魔力を床の六芒星に集中させる。
その瞬間、部屋は凄まじい光に包まれ、耐えきれず稟は目を閉じ視界を塞いだ。
数秒の後に光は収まり、部屋には静寂が訪れた。
ゆっくりと瞼を開いた稟はそこにあった光景に思わず目を見開いた。

「おや、稟ちゃんにネリネちゃん、どうしたんだい? 何かあったのかい?」
「魔王キターーー(・∀・)ーーー!!!」
454 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:55:02 ID:5lLVzd7y
4/6

「いや〜ゴメンゴメン! 可愛いネリネちゃんが悪魔払いなんて危険なことをしちゃ心配だからね。私の召喚魔法を悪魔払いと偽って教えていたんだよ」
「お父様、騙すなんて酷いです!」

ぷんすか怒るネリネ。
フォーベシイはそんなネリネをまあまあと宥めながらも、さりげなく付け足した。

「ごめんよ〜。でもあながち間違っちゃいないよ? 私を呼べばどんな悪魔だろうが悪霊だろうが何とかしてあげられるしね!」
「そう言われてみればそうですね。ありがとうございます、お父様」
「なんのなんの! ネリネちゃんのためならパパは! パパは何だって…!」

あっさりと誤魔化されるネリネ。
純真無垢にもほどがあるだろ、と普段なら突っ込む稟だが、今日はいつもと違い、

「…どうせこんなこったろうと思ったよ、ドチクショウ!」

と何やら妙に和んでいる魔王親子を脇に、頭を抱え続けていた。

「それで? 一体どうしたんだい? 悪魔払いなんて物騒な」
「それが…」
「ん? …ふむふむ………ほう……なるほど…」

そう言って魔王の耳元で何やら囁き出すネリネ。
時折自分の方を見てくるため、稟としては気になって仕方ない。
話を終えると、フォーベシイが何やら呪文らしきものを唱えて自分の方を見て頷いたりするものだから、不安が急速に膨れ上がってきてしまっていた。

(何だ? 俺、本気で悪魔にでもとりつかれてるのか? 確かに今こうして魔王とその娘に取り付かれてるが、魔王はともかく娘の方は俺の中で悪魔とは対極の位置にいるんだが…)

悪魔払いとネリネに言われた時から漠然とした不安に襲われていたのだが、それにしては自分の身体や周囲に何か被害があったとは思えないため、半信半疑だったのだ。
455 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:55:39 ID:5lLVzd7y
5/6

「ネリネちゃん、それならば良い方法がある。悪魔合体を試してみなさい」
「悪魔合体、ですか…?」
「そう。例えば龍王と堕天使では魔獣がコンゴトモヨロシクと…「おじさん!」…冗談だよ」

稟の本気睨みに肩を竦めるフォーベシイ。

「ネリネちゃん、耳を……ごにょごにょごにょ…」
「ええっ!? そ、そんなことを…!? で、でも、稟さまのためなら、私…!」

フォーベシイに何やら耳打ちされ、驚愕の表情を浮かべるものの、すぐに何やら決意したらしく、ぐっと拳を握って頷くネリネ。
フォーベシイはそんなネリネを見て満足げに頷くと、てきぱきとした動作であっという間に部屋を片付け、元通りにすると部屋を出て行こうとする。

「あれ、おじさん?」
「悪魔合体はネリネちゃんと稟ちゃんで行うんだよ。大丈夫、しっかりやり方は教えておいたから」

黙って成り行きを見守っていた稟が慌てて声を掛けるものの、フォーベシイは黒いクロスなどを小脇に軽く手を振って出て行ってしまった。

「だ、大丈夫なのか…?」
「そ、それではこれより、悪魔合体をお、行います、ね?」
「あ、ああ…ってネリネ? 何で服をはだけるんだ?」

神妙な顔で唾を飲み込み、ネリネに向き合った稟が見たものは、巫女服をはだけさせ、白く柔らかな曲線を描く肩をさらけ出している姿だった。
ネリネは恥ずかしそうに、だがどこか嬉しそうに微笑みながら服をさらにはだけさせ続け、遂にその豊満な胸元、先端がぎりぎり見えない位置にまでずらしていった。
そんなネリネの艶めかしい姿態に、先ほどとは違う意味で唾を飲み込んでしまう稟。

「ね、ネリ、ネ…?」
「稟さま…」

はふう、と悩ましげな吐息を吐きながら、ネリネがそっと稟へと寄り添い、その身体を抱きしめてくる。
そして潤んだ瞳で稟を見上げ、そっと唇を開いた。

「稟さま、あ、貴方と、合体したい…です(はあと)」
「………!!??」

あまりの衝撃に頭の中が真っ白になってしまう稟。
だが自らの胸に押し付けられた柔らかなネリネの身体、ぐにゃりとひしゃげたその双丘に、稟の両手は自然にネリネの背に回されていた。

「………稟さま」
「……ネリネ……ネリネ!!」

そっと目を閉じて口づけを求めるネリネにもはや我慢など出来る筈もなく、稟は乱暴にネリネの唇を奪うと、そのままネリネをベッドに押し倒したのだった。
456 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:56:13 ID:5lLVzd7y
6/6

エピローグ1

「…ふふっ! …うふふふっ! …きゃあん、稟さま〜♪」

その日の夜、風呂上りのネリネは携帯電話のディスプレイを見つめながら一人身悶えしていた。
にこにこにこにこ微笑みながら何度も何度もベッドの上で寝返りをうつ。
ディスプレイに映るのは、頬を寄せ合って映る自分と稟の顔。
情事の後、稟が腕を伸ばして二人一緒に映るようにして撮ったものである。
画面の中、自分と同じように優しく微笑んでいる稟の姿に、ネリネは再び身悶えし、足をバタつかせた。
 
「さっそく今日の夜、携帯に電話するよ」

そう言った稟の言葉を受け、超特急で入浴を済ませ、呆れる母や朗らかに笑う父を尻目に自室に籠り、携帯を手に取り稟からの電話を今か今かと待ち望んでいた。
そうしてしばらくして…

ピリリリ〜ン♪

待ち望んだ着信音を響かせる携帯電話。
勿論かかってきた相手は決まっている。
番号はまだ一人にしか教えていないからだ。
望んでいた相手からの着信に、ネリネは表情を輝かせながら着信ボタンを押した。

「…もしもし、はい、ネリネです、稟さま……」

 
エピローグ2

「いちまんねんとにせんねんまえからあ〜い〜し〜て〜る〜♪っと」

ネリネの部屋から持ってきたクロスを洗濯機にかけながら、フォーベシイは上機嫌で歌を口ずさんでいた。

「きっと今ごろネリネちゃんと稟ちゃんは頑張って合体しているだろうね〜。う〜ん、私ってばなんて子供思いのパパなんだろう」

うんうん頷くフォーベシイ。
だが不意に真剣な表情を浮かべ、歌を止める。
その脳裏に浮かぶのは、先ほど呪文をかけて見た稟の後ろにいたモノ。

(…貴方がたはずっと彼を見守っていたのですね…)

その人影、一組の男女は優しい目で稟をずっと見つめていた。

(彼は素晴らしい男です。私の娘を、私がどうやっても救ってやれなかった娘を救ってくれました。どれほど感謝してもしたりないほどに感謝しています)

感謝の言葉は中々口に出せず、このようにひねくれた愛情の形を示してしまうけれど。

(安心していただきたい。彼はもう私の家族、私の息子同然です。例えどんなことがあろうと、彼がどのような道を選ぼうと、必ず私が支え続けます。私の、魔王の名に懸けて…)
457 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/01/24(木) 18:56:45 ID:5lLVzd7y
以上です
正直エピローグ2はいらなかったかな?と思ったりしてます
これのせいでギャグ(ラブコメ?)とシリアスのどっちつかずになっちゃった気がするんで
ただこれがないと作中の伏線が回収出来ないしなあ
今回今までで一番評価が怖いわ

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